審決等取消訴訟の提起と訴訟要件

知的財産権・エンタメ

 審決等取消訴訟の提起と訴訟要件について教えてください。

 審決等取消訴訟は、知的財産高等裁判所が専属管轄を有する手続で、特許異議申立てや特許審判の当事者等が原告となることができます。出訴期間は、審決等の送達があった日から30日間で、行政事件訴訟法の原則である6か月よりも格段に短くなっているため、留意が必要です。

解説

審決等取消訴訟の管轄

 特許制度における審決等取消訴訟とは、審決取消訴訟と決定取消訴訟の総称です。その法的性質については、当事者系審判の審決取消訴訟について争いがあるものの、その実質において抗告訴訟であるとの理解が一般的になっています。詳細については、「特許法上の審決等取消訴訟の概要と法的性質」を参照ください。

 通常の抗告訴訟の管轄は地方裁判所にありますが、特許法上の審決等取消訴訟は、知的財産高等裁判所が専属管轄を有し(知的財産高等裁判所設置法2条2号)、他の裁判所はこれを取り扱うことができません。特許審判は、技術専門行政庁である特許庁が準司法的手続によって審理するため、第一審が省略されます。また、審決等取消訴訟には専門的知見が必要になるため、これを有する知的財産高等裁判所に管轄を集中させているのです。

 このような制度趣旨から、知的財産高等裁判所には、知的財産に関する事件について経験を積んだ裁判官が数多く配置されるほか、特許庁の職員が裁判所調査官として常駐し、裁判官を技術面でサポートするなど、審理体制が整備されています。また、不服申立てについても、最高裁判所への上告ないし上告受理申立てによることとされ、第二審で終審となります。

 なお、特許法の条文上は、東京高等裁判所が専属管轄権を有するものと定められていますが(特許法178条1項)、知的財産高等裁判所は東京高等裁判所の特別の支部として設置されているため(知的財産高等裁判所設置法2条柱書)、特許法の規定と矛盾を生じることなく審決等取消訴訟を取り扱うことができます。

特許法上の審決等取消訴訟の流れ

当事者

当事者適格

 審決等取消訴訟の原告となることができるのは、特許異議申立てまたは審判の当事者、参加人および特許異議の申立てについての審理、審判もしくは再審に参加を申請してその申請を拒否された者に限られます(特許法178条2項)。

 他方、被告とされるのは、特許異議申立てや査定系の審判では特許庁長官、当事者系審判では審判の請求人または被請求人です(同法179条)

原告
  • 特許異議申立てまたは審判の当事者、参加人
  • 特許異議の申立てについての審理、審判もしくは再審に参加を申請してその申請を拒否された者
被告 特許異議申立て、査定系の審判
  • 特許庁長官
当事者系審判
  • 審判の請求人または被請求人

共同出願にかかる拒絶査定不服審判の審決取消訴訟の原告適格

 共同出願(特許法38条)にかかる拒絶査定不服審判の審決取消訴訟の原告適格については、出願人全員が共同して訴えを提起する必要があるか、という点で議論がありました(共同出願については「複数の者が共同で発明をした場合の特許を受ける権利」を参照)。

 この点について、最高裁判所は、拒絶査定不服審判の審決取消訴訟は固有必要的共同訴訟であるとの理解のもと、全出願人が共同して訴えを提起しない限り違法であるとの考え方を示しました(最高裁平成7年3月7日判決・民集49巻3号944頁)。その結果、出願人が複数いる場合、そのうちの1名でも訴え提起をしなければ、他の出願人の訴えも不適法となって却下されることとなります。

共有にかかる特許の無効審決の取消訴訟の被告適格

 前記2-2の拒絶査定不服審判の審決取消訴訟の場合に対し、共有にかかる特許について無効審決がなされた場合の審決取消訴訟について、最高裁判所は、無効審決取消訴訟が特許権の保存行為としての性質を有することを理由に、各特許権者は、単独で訴えを提起できるとの考え方に立っています(最高裁平成14年3月25日判決・民集56巻3号574頁)。

出訴期間

 審決等取消訴訟は、審決等の送達があった日から30日の不変期間内に提起しなければなりません(特許法178条3項、4項)。行政事件訴訟法の原則である処分等を知った日から6か月(行政事件訴訟法14条1項)と比較して、格段に短い期間が定められているため、留意が必要です。

「特許法上の審決等取消訴訟」に関する参考記事:
  1. 特許法上の審決等取消訴訟の概要と法的性質
  2. 審決等取消訴訟の提起と訴訟要件(当記事)
  3. 審決等取消訴訟の審理
  4. 審決等を取り消す判決の効力

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