会社が私的整理をした場合、連帯保証人となっている経営者にはどのような選択肢があるか

事業再生・倒産

 当社は旅館業を営んでいますが、事業の採算性が悪化しているため、事業再生ADRを用いた私的整理を検討しています。負債総額は約13億円で、うち約9億円が金融機関からの借入債務です。当社の社長は、この金融機関からの借入債務について連帯保証しています。当社が事業再生ADRの申請をした場合、この連帯保証はどうなるのでしょうか。

 主たる債務者である法人が事業再生ADR等の私的整理手続を申請した場合で、債権者に対して債務免除を伴う再生計画案への同意を求める場合、債権者は連帯保証人に対して保証債務の履行請求を行うのが一般的です。また、金融機関が債務免除を伴う再生計画案に同意する前提として、債務免除部分について保証人に対して債務引受を求めてくることもあります。
 そのため、保証人となっている社長やその家族は、主たる債務者である法人が事業再生ADR等を申請する前に、保証債務の処理方針についても検討する必要があります。
 保証人が保証債務を処理するために採り得る選択肢としては、①法的整理手続、②法的整理手続以外の中立な第三者が関与する手続、③任意整理の方法があります。なお、主たる債務者が中小企業である場合には、「経営者保証に関するガイドライン」(以下「経営者保証ガイドライン」といいます)の適用を受けることで、法的整理手続の場合に比べて保証人に多くの資産を残すことができる可能性があり、また、信用情報登録機関への登録を回避できる等のメリットも受けることができます。

解説

債権者の一般的な対応

 主債務者が事業再生ADR等の私的整理手続を申請した場合で、債務免除を伴う再生計画案への同意を求める場合、金融機関等は、保証人に対して保証債務の履行請求を行うのが一般的です。
 また、金融機関が債務免除を伴う再生計画案に同意する前提として、債務免除部分について保証人に対して債務引受を求めてくることもあります。これは、私的整理においては、保証債務の付従性が維持されているため、主債務の一部を免除することによって保証債務が消滅してしまうことを回避するためです。

連帯保証人が採り得る選択肢

 そのため、保証人となっている社長やその家族は、主たる債務者である法人が事業再生ADRを申請する前に、保証債務の処理方針についても検討を行う必要があります。保証人が採り得る選択肢としては以下のようなものがあります。

手続 メリット デメリット
法的整理手続 自己破産 債権者全員の同意がなくても債務免除を受けることができる。 法的整理手続を行ったことが官報に掲載される。
信用情報登録機関(いわゆるブラックリスト)に登録されるため、5~10年間借入等ができなくなる。
民事再生
法的整理手続以外の中立的な第三者が関与する手続(中小企業再生支援協議会や地域経済活性化支援機構(REVIC)による再生支援スキーム、事業再生ADR、特定調停等の手続) 経営者保証ガイドラインの適用がある場合、破産手続における自由財産よりも多くの財産を残すことができる。
保証人の情報は公開されない。
経営者保証ガイドラインは中小企業の経営者の保証債務にしか適用がないため、主たる債務者が中小企業でない場合や、経営者に保証債務以外の債務(消費者金融からの借入等)がある場合は利用が難しい。
債務免除を受けるには全金融機関から同意を得る必要がある。
任意整理 免責不許可事由がある場合や中小企業の経営者でない場合でも利用できる。 信用情報登録機関(いわゆるブラックリスト)に登録されるため、5~10年間借入等ができなくなる。
債務免除を受けるには全金融機関からの同意を得る必要がある。

経営者保証ガイドラインの適用を受けることができる場合

 経営者保証ガイドラインの適用を受けて保証債務の整理を行うための要件は「経営者保証に関するガイドラインの適用を受けるための要件とは」で詳しく説明しますが、要件の1つに、原則として、準則型私的整理手続を利用することという要件があります。準則型私的整理手続とは、中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理ガイドライン、特定調停等をいいます。
 保証債務について、主たる債務者である法人と一体整理を図る場合には、これらの手続のうちいずれの手続も利用することができます。しかし、主たる債務者が法的整理手続を用いた場合や、主たる債務者の整理手続が完了してしまっている場合は、保証債務のみを整理することになり、その場合に利用できるのは、中小企業再生支援協議会による支援を利用した保証債務の整理か、特定調停を利用した保証債務の整理のみとなります。

 中小企業再生支援協議会の支援を利用した保証債務の整理の詳細については、「中小企業再生支援協議会等の支援による経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理手順」が参考になります。
 また、特定調停を利用した保証債務の整理手続の詳細については、「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引き」が参考になります。

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