取引先から再生計画案への賛成要請があった場合の対応

事業再生・倒産
大島 義孝弁護士

 当社は届出再生債権者ですが、再生債務者より再生計画案に対して賛成の議決票を投じるように要請を受けました。再生計画案に対する議決権行使において留意すべき点について教えて下さい。

 再生債権者は、原則として再生債権額に応じて再生計画案に対して議決権を行使できます。再生計画案の可決のためには総議決権額の2分の1以上かつ議決権を行使した再生債権者数の頭数の過半数の賛成が必要となります。
 大半のケースでは再生債務者の提出する再生計画案が法定多数で可決されますが、再生債務者の再生計画案に対抗する形で別の再生計画案が再生債権者から提出され、複数の再生計画案が付議される場合には議決権の行使に関して慎重な検討と対応が必要な場合もあります。

解説

再生計画案に対する決議について

 再生計画案が裁判所に提出された後、監督委員の検証を経て裁判所により決議に付する旨の決定(「付議決定」)がなされれば、再生計画案について再生債権者による決議に諮られることとなります(民事再生法169条)。

 再生計画案に対する再生債権者の議決権行使は、確定再生債権額に基づき定められる議決権額に応じて行われますが、再生債権額が未確定の場合には裁判所が議決権額を定めることになります民事再生法170条171条)。

 再生計画案の可決のためには、議決権を行使した再生債権者の頭数の過半数かつ議決権総額の2分の1以上の賛成が必要であり(民事再生法172条の3第1項)、いずれの要件も満たさない場合には再生計画案が否決され、いずれか一方の要件のみ満たした場合には否決(書面決議の場合)または債権者集会の続行による再決議(債権者集会が開催される場合)されることとなります(民事再生法172条の5)。  

議決権を行使した再生債権者の頭数の過半数かつ議決権総額の2分の1以上の賛成 結果
両方とも満たした場合 可決
片方だけ満たした場合 否決
(書面決議の場合)
債権者集会の続行による再決議
(債権者集会が開催される場合、
書面決議との併用型も含む)
両方とも満たさない場合 否決

 再生計画案が可決された場合、裁判所によって認可の可否を判断されることとなります(民事再生法174条)。認可された再生計画が確定すれば、再生計画の記載内容について記載通りの効力が生じることとなります民事再生法176条)。

 一方、再生計画案が否決された場合には、再生手続が廃止されることとなり、原則として破産手続に移行することとなります民事再生法191条3号、250条)。

再生計画案に対する決議

再生計画案検討の際の考慮要素

 届出再生債権者として再生計画案の賛否を検討する場合、債権者に配布される再生計画案の記載内容を検討することになりますが、その際には再生計画案の一緒に配布された監督委員の意見書が参考になります
 また、再生債務者は、説明会の開催や詳細な説明文書の配布により、あるいは主要債権者に対する個別訪問を行い、届出再生債権者に対する再生計画案に関する詳細な説明を行うのが通常です。
 届出再生債権者としては、再生計画案の記載内容および再生債務者による説明内容をふまえて賛否の判断を下すことになりますが、仮に再生計画案が否決された場合には、前述のとおり再生手続が廃止され破産手続に移行する可能性があることも考慮する必要があります。

複数の再生計画案が付議されている場合

 届出再生債権者も再生計画案を提出する権利を有しており(民事再生法163条2項)、再生債務者が提出した再生計画案と一部の債権者が提出した再生計画案が合わせて付議され、複数の再生計画案の賛否が債権者の決議に諮られる場合があります。
 典型例としては、再生債務者が選定したスポンサー企業の支援を前提とする再生計画案について、一部の主要債権者(団)から強い異論があり、当該主要債権者(団)が別のスポンサー企業の支援を前提とした再生計画案を提案する場合です。

 この場合においては、再生計画案の付議決定後に熾烈な議決票の争奪戦となる場合が多く、再生債務者および再生計画案を提出した主要債権者からそれぞれ自分の提出した再生計画案に賛成の議決票を投じるよう強い要請がなされますが、議決権を行使する立場としては、いずれの再生計画案が自己にとって有利か、また再生計画案の実現可能性が高く、二次破綻のリスクがないか、等の観点から慎重に検討して議決権を行使する必要があります。

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