取引先が倒産した場合、どのような情報を収集するべきか

事業再生・倒産

 当社が商品を納めている取引先が倒産したとの情報を同業者から聞きつけました。未回収の売掛金が残っているほか、つい先日納品したばかりの商品も、この取引先の倉庫に保管されています。どう対応したらよいでしょうか。

 まずは、取引先の状況について情報を収集しましょう。取引先が営業を停止しているようであれば、予定されている出荷の停止、納品した商品の引揚げの検討や転売先の確認を行うとともに、相殺や担保を実行して売掛金を回収することができないかも確認しましょう。

解説

取引先の倒産は突然やってくる

 日常的に取引をしていても、取引先の倒産は何の拍子もなく突然に訪れるのが通常です。そして、取引先の倒産を知った時点では、取引先から回収していない売掛金が残っていたり、これから商品を納品する予定があったりすることも、よくあります。このような場合、適切かつ迅速に対応しないと、回収し得るものも回収することができず、回避し得る損失も回避することができなくなるおそれがあります。
 このため、取引先が倒産したときの初動対応としては、速やかに情報を収集し、把握した情報をもとに、如何なる債権回収措置を講じることができるかを検討することが重要です。

どのような情報を収集するべきか

    取引先が倒産した場合に収集すべき情報としては、以下の事項が考えられます。

  1. 営業継続の有無
  2. 代表者の所在
  3. 出荷予定の商品の有無
  4. 納品した商品の所在・転売先
  5. 取引先に対する債務の有無
  6. 担保・保証人の有無
  7. 手形の有無
  8. 他の債権者の動向

(1)取引先の営業が継続しているか

 一口に倒産と言っても、債権者への支払を猶予してもらいながら営業を継続して再建を図るケース(再建型)と、営業を停止して清算を図るケース(清算型)があります。

再建型倒産手続 債権者への支払を猶予してもらいながら営業を継続して再建を図る ・会社更生
・民事再生
清算型倒産手続 営業を停止して清算を図る ・破産
・特別清算

 裁判所が関与する再建型の手続として、会社更生民事再生がありますが、取引先がこれらの手続の申立をした場合には、営業を継続していることが一般的です。このような場合、取引先の営業継続を前提に、債権回収を行いつつ、取引の継続を検討することになります。

 他方、裁判所が関与する清算型の手続として、破産特別清算があります。これらの場合、営業は停止していますので、粛々と債権回収を行うことになります。
 もっとも、清算型の場合、法的整理手続の申立前に、債権者に対して支払停止を表明したり、何の案内もなく突然営業を停止して全く連絡が取れなくなることもあります。このような場合には、取引先から財産が不当に流出したり、一部の債権者に対して不当な弁済が行われたりする等のおそれがあります。

 このように、取引先が営業を継続しているか否かで必要な対応も変わってきますので、取引先の倒産を聞きつけた際には、速やかに取引先の本社・事務所・倉庫等に向かい、営業の状況を確認することが重要です

(2)取引先の代表者の所在を確認することができるか

 取引先の状況をより詳細に把握するためには、代表者から直接話を聞くことが得策です。そのためにも、取引先の本社・事務所・倉庫を訪問したり、従業員に尋ねる等して、代表者の所在を確認しておくことも重要です。

 取引先が倒産した場合、代表者が本社にいないことや、代表者と連絡が取れないことがよくあります。取引先が営業を継続している場合には、関係先を回ったり、弁護士等との打合せで不在にしているのかもしれませんが、取引先が営業を停止している場合、代表者が逃亡してしまっている可能性があります。

 このような場合、全く清算もなされずに放置されるおそれがありますので、取引先について債権者の立場で破産申立を行うことも含め、対応を検討することになります。

(3)取引先へ商品を出荷する予定はあるか

 取引先が倒産したことを知った時点で、取引先へ商品を出荷する予定があったり、既に取引先に向けて配送中であったりすることがあります。
 取引先が営業を停止した場合はもちろん、営業を継続していても、その後に破産や民事再生を申し立てた場合には、納品した商品の代金回収が禁止される可能性がありますので、損失を拡大させないよう、信用不安が解消されない限り、予定されている商品出荷は中止し、配送中の商品も運送業者に連絡する等して取り戻すことが得策です。

(4)納品した商品の所在、転売先を確認することができるか

 取引先に商品を納品したものの、売掛金が未回収である場合、まず思い浮かぶ対応としては、納品した商品を引き揚げることかと思います。
 ただ、取引先の了解なく商品を引き揚げると、後で窃盗罪に問われるおそれがありますので、取引先との契約を解除した上で、取引先から了解を得て、商品を引き揚げるべきと考えます。
 適切に商品を引き揚げるためにも、情報収集の段階では、自社が納品した商品の所在を確認し、張り紙やプレートを貼って他の商品と混在しないように区別したり、写真を撮って証拠を残したりしておきましょう

 また、すでに納品した商品が転売されてしまっていても、転売先を特定することができる場合には、取引先の転売先に対する売掛金を差し押さえることができる可能性がありますので(動産売買先取特権の行使)、あきらめずに、自社が納品した商品が、どこへ、いくらで転売されたのか、売掛金は未回収であるかを確認し、かつ転売されたことが分かる資料(発注書、請書、納品書、請求書等)をできるだけ入手しておきましょう。
 こちらの「動産売買先取特権とは?制度活用のポイントと回収の手法」も参考ください。

(5)売掛金と相殺可能な取引先に対する債務はあるか

 取引先に対する売掛金を有しているだけでなく、反対に何らかの債務(例えば、預り保証金、買掛金、立替金等)を負っている場合、売掛金を現金で回収する代わりに、取引先に対する債務と相殺することにより、実質的に売掛金を回収することができます。なお、相殺する場合には、相殺させる債権と債務を明示した上で、これらを対当額で相殺する旨の意思表示を、内容証明郵便により取引先に対して行うことが一般的です。
 このため、まずは何でもよいので、取引先に対する債務がないかどうか確認しましょう。   

(6)担保にとっている取引先の資産、保証人はいるか

 取引先が所有する不動産に抵当権を設定していたり、取引先の在庫や売掛金に質権や譲渡担保権を設定している場合には、取引先の倒産を原因として担保権を実行して、売掛金を回収することができます。
 また、取引先に対する売掛金に対して保証人がいる場合には、保証人からも回収することができます。
 このため、自社が取引先から担保の提供を受けていたり、保証人をとっているかどうかを確認しましょう。とくに取引先の在庫や売掛金を担保に取っている場合には、それらの所在や内容を正確に確認しましょう。

(7)取引先から手形を受け取っているか

 取引先から商品代金の支払として手形を受け取っている場合もあるかと思います。取引先が倒産した場合、取引先が振り出した手形は不渡りになる可能性が高いといえます。取引先が破産した場合には、債権届出書を提出する際に手形のコピーを証拠として提出する必要があり、配当を受ける際には手形の原本を呈示する必要がありますので、手形の所在を確認し、きちんと保管しておきましょう

 また、取引先が振り出した手形を銀行等に割引に出していたり、他の取引先に回している場合、後に銀行等や他の取引先から手形の買戻しを請求される可能性が高いといえます。このため、取引先が振り出した手形を受け取っていたことが確認された場合、その手形を割引等に出していることが確認されたら、買戻のための資金をしっかり手当てしておきましょう。

(8)他の債権者の動向

 取引先が倒産すると、自社以外の債権者も、情報収集のほか、在庫の引揚等を図ろうとします。債権者によっては、取引先の倉庫にトラックを横付けして、在庫を根こそぎ持って行こうとする者もいます。このような行為は違法となる可能性が高いですが、承知の上で行われることもあります。取引先の代表者が債権者からの圧力に負けて、黙認することもあります。

 このような行為を放置しておくと、自社が引き揚げようとしていた商品や担保として押さえていた在庫まで他の債権者に誤って持って行かれてしまいかねませんので、他の債権者の動向も確認し、状況によっては、自社分を確保するために人員を動員することも必要でしょう。

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