民事再生手続の流れ

事業再生・倒産
大島 義孝弁護士

 民事再生手続はどのような流れで進みますか。

 裁判所が示している標準的なスケジュールや実際のケースによれば、民事再生手続の申立てから再生計画認可までの期間はおおむね6か月以内とされています。
 民事再生手続の流れを時間軸で見ると、①再生手続の準備段階から再生手続申立てを経て再生手続開始まで、②再生手続開始から再生計画案提出まで、③再生計画案提出から再生計画認可を経て再生手続終結まで、という3つの段階に分けられます。

解説

民事再生手続の流れ

民事再生手続に要する期間

 民事再生手続は、数ある倒産処理手続きの中において、DIP型(債務者主導型)による再建型の法的倒産手続と位置づけられます。東京地方裁判所が示している標準的スケジュールによれば、申立てから再生計画認可までの期間は約5か月間とされており、実際も大半の民事再生手続が申立てから6か月以内に再生計画認可に至っています。このように、迅速な手続進行により事業の毀損を防ぐ観点から、同じく再建型の法的倒産手続である会社更生手続(約1年間)と比較してスピーディーな手続の進行が予定されています。

 民事再生手続においては、引き続き事業を継続していくことに加えて民事再生手続に必要とされる債権者への対応や再生計画案の策定等といった特別の対応が求められますので、民事再生手続に豊富な経験のある弁護士・法律事務所の起用も含め、再生債務者において人的物的な側面からの特別な準備や対応が必要となります。

再生手続の準備段階から再生手続申立てを経て再生手続開始に至るまでの流れ

再生手続の準備段階から再生手続申立てまで

(1)申立代理人弁護士の選定

 本稿は法人が民事再生手続を申し立てる場合を前提としますが、法人が民事再生手続による再建を決断した場合、まず民事再生手続を主導し、裁判所や債権者との対応窓口となる申立代理人弁護士を選定する必要があります。前記のとおり、民事再生手続は事業継続を行いながら比較的短期間のうちに手続に伴う膨大な作業をこなす必要がある場合が多く、事業再生や倒産手続に専門性を有する弁護士を申立代理人として選定する必要があります。

 そして、特に上場企業、大企業や消費者被害事件など負債額や債権者数が多い場合、全国に多数の事業所がある場合、海外拠点や外国債権者が存在し国際的な対応が必要な場合などにおいては、倒産処理手続に経験豊富かつ高い専門性を有する中規模以上の定評ある法律事務所に依頼することが望ましいといえます。

(2)申立てに向けた準備

 申立代理人選定後は、申立代理人の助言に従い、申立てに向けた準備を行う必要があります。この際、債権者一覧表や資金繰表等といった疎明資料の作成提出が必要であるほか、再生債務者代理人に対する弁護士費用、裁判所に納付する予納金といった申立費用の工面が必要になる点留意が必要です。また、申立準備の事実が対外的に明らかになれば、債権者による抜け駆け的な回収行為や債権保全行為を引き起こすおそれがありますので、情報管理には細心の注意を払う必要があります。

 そのため、申立ての準備は、法人の代表者および財務経理担当の取締役や管理職といった限られたメンバーで秘密裏に進めることとなります。また、法人が民事再生手続を申し立てる場合には取締役会等の機関決定が必要となりますので、スムーズに機関決定を経るように準備することも必要となります。

再生手続申立てから再生手続開始まで

(1)弁済禁止の保全処分決定

 裁判所に対して申立てがなされ、裁判所によりこれが受理された場合、通常は即時に裁判所により弁済禁止の保全処分決定が下され、申立以前の原因により再生債務者が負うこととなった再生債権に対する弁済が原則として禁止されることになります。また、同時に裁判所により監督委員が選任され、再生債務者は監督委員による監督に服することとなります(民事再生法54条)。

(2)債権者向け説明会

 申立直後においては、再生債務者の資産を保全し、債権者による偏頗的な債権回収行為を防ぐ必要があります。一方で、再生手続を進めるためには債権者の理解と協力が必要であるところ、再生手続に対する債権者の理解と協力を得るためには、債権者に対する適切な情報提供が必要となります。このため、申立直後に主要な債権者を集めて申立てに至った原因、再生手続における再生債権の取り扱いや今後の手続の進行等を説明する目的で債権者向け説明会を開催することが通例となっています。

(3)再生手続開始

 債権者向け説明会等において、再生手続を開始することに対して主要債権者の多数から強硬な反対がない限り、申立日から1週間以内に再生手続が開始されるのが通常です。主要な債権者等から強硬な反対意見が出たりする等、この段階において再生計画策定の見込みがないようであれば、再生手続は開始に至らずに申立てが棄却されて破産手続開始に至り、その場合には債務者は破産手続に基づき清算されることとなります。

再生手続開始から再生計画案提出まで

 再生手続が開始された場合には、以後事業の再建と再生計画案策定に向けた活動が本格化することになります。

事業再建に向けた活動

(1)再生債務者の収益性改善

 事業の再建のための活動として、再生債務者の収益性を改善する必要があります。そのため、再生債務者としては事業の見直しを行ったうえで、不採算の事業から撤退し、工場等の一部事業所の閉鎖を行うことがあります。また、事業の撤退や事業所閉鎖に伴い、人員削減が必要になる場合がありますが、この場合は労働法制に即した適切な対応が必要となります。未履行双務契約の解除(民事再生法49条1項)の規定を活用することにより不採算事業に関する契約等の解消を行う場合もあります。

(2)スポンサーの選定作業

 また、事業を再生するためには、資金力や信用力のあるスポンサーに再生支援を仰ぐ必要がある場合が多く、再生手続申立時においてかかるスポンサーが内定しているような場合を除き、早期にスポンサーの選定活動を開始する必要があります。

 スポンサーを選定する場合、再生計画案の提出期限までにはスポンサーが決定し支援内容が固まっている必要があるため、スポンサー選定手続は迅速に進める必要があります。また、資金繰り等の関係で再生計画案策定前の早期の段階で事業譲渡によりスポンサーに対して再生債務者の事業の全部または一部を承継させる必要がある場合は、事業譲渡に関する意見聴取集会を開催して再生債権者の意見を聴取する必要があるため(民事再生法42条2項)、さらに迅速にスポンサー選定手続を進める必要があります。

再生計画案の策定

(1)再生債権者による債権届出と再生債務者による認否書の作成提出作業

 再生計画案を策定するためには、再生債務者の財務内容、すなわち資産および負債の額をそれぞれ確定させる必要があります。

 再生債務者による負債額の確定作業として、再生債権者による債権届出(民事再生法94条)とこれに基づく再生債務者による認否書の作成提出作業があります(民事再生法101条)。かかる手続により再生債権の金額や内容を確定させ、その後策定する再生計画案において再生債権の権利変更を定めることとなります。

 なお、再生債権者が届け出た再生債権と再生債務者が認否書において認めた再生債権との間に金額や内容における乖離があり、再生債務者と届出債権者との間で調整できない場合には再生債権査定手続と呼ばれる簡易な裁判上の手続によって再生債権の金額や内容を確定させることとなります(民事再生法105条)。

 再生債権が担保物権により担保されている場合、担保権者である再生債権者は別除権者として再生手続外で担保権行使を行うことが可能です(民事再生法53条2項)。事業の遂行にとって重要な資産の上に担保権が設定されており、担保権者によって担保権行使がされた場合、そのままでは事業の継続が困難となるため、再生債務者としては、別除権者との間において別除権協定を締結し、当該事業用資産が継続使用できるように協議・交渉を行う必要があります。

(2)財産評定の手続

 一方、再生債務者の保有する資産の確定作業として、財産評定の手続があります(民事再生法124条)。財産評定については、通常、申立代理人の補助者である公認会計士に依頼して行うこととなりますが、再生手続における資産の評価損額が再生計画における債務免除について免除益課税にも影響することになるため、慎重に行う必要があり、経験豊富な公認会計士に依頼することが望まれます。

 財産評定は、再生手続開始時を基準日として「財産を処分するもの」として行われるのが原則です(民事再生規則56条1項)。そして、財産評定は、再生計画による債権者への弁済額が清算価値を下回らないという債権者に対する弁済額の下限を画する意味も有しています。再生債務者が行った財産評定の結果の適法性、妥当性については、監督委員および監督委員を補助する公認会計士により検証されることとなります。

 このように、スポンサーの選定作業や債権調査および財産評定の各手続による資産負債の確定手続を経て、再生債務者は裁判所に再生計画案を提出することになります。

再生計画案提出から再生計画認可を経て再生手続終結まで

再生計画案の提出から再生計画の認可まで

(1)再生計画案の提出

 再生債務者が再生計画案を裁判所に提出すると、監督委員は公認会計士の助力を得たうえで再生計画案の内容を精査し、再生計画案の履行可能性について意見を表明することになります。そして、再生計画案の内容について法律上の障害がない限り、裁判所の決定により届出再生債権者による賛否の決議に付することになります(民事再生法169条1項)。

 なお、届出再生債権者も再生計画案を提出することが可能であり、再生債務者に加えて再生債権者からも再生計画案が提出された場合には、監督委員は両計画案について法の要件を満たしているか検証する必要が生じます。

(2)議決権の行使

 決議に付された再生計画案に対して、議決権を有する届出債権者が賛成または反対の議決権を行使することとなります。東京地方裁判所の実務上は、再生計画案の決議方法は、投票用紙を郵送する方法による書面決議と、債権者集会に投票用紙を持参する方法による集会方式の併用型で行われるのが通常です(民事再生法169条2項3号)。

 そして、債権者集会期日において議決権の集計がなされ、届出債権者の頭数の過半数のかつ届出債権者の議決権額の2分の1以上の賛成が得られた場合、再生計画案が可決することとなります(民事再生法172条の3第1項)。なお、いずれかの決議要件のみを満たした場合は、債権者集会を再度開催して再集計を行うこととなります(民事再生法172条の5)。
 いずれの可決要件も満たさない場合または債権者集会を再度開催しても可決される見込みがないことが明らかな場合には、再生手続は廃止とされて終了し、破産手続に移行することになります(民事再生法191条3号、250条1項)。

(3)再生計画の認可

 可決された再生計画について法律上の障害事由がなければ、裁判所によって再生計画が認可されます(民事再生法174条)。そして、認可された再生計画に対して、一定期間内に不服申立てとしての即時抗告がなされなければ再生計画が確定し、効力を生じます(民事再生法176条)。再生計画の効力発生により、届出再生債権等の権利変更およびそれ以外の再生債権の免責が生じることとなります(民事再生法178条1項)。

再生計画の遂行と再生手続の終結

 再生計画の確定後、再生債務者は、確定した再生計画の各条項に従い、再生債権者に対して権利変更後の再生債権の弁済を行うなど、再生計画を履行することになります。そして、再生計画の履行が完了したときまたは再生計画認可決定確定後3年間経過時に再生手続は終結することとなりますが(民事再生法188条2項)、それまでの間は監督委員による再生計画の履行監督に服することになります。

流れ ポイント
再生手続の準備段階 申立代理人弁護士の選定
  • 事業再生や倒産手続に専門性を有する弁護士を申立代理人として選定する
申立てに向けた準備
  • 疎明資料の作成提出
  • 申立費用の工面
  • 情報管理に細心の注意を払う
  • スムーズに機関決定を経る
再生手続申立て 弁済禁止の保全処分決定
  • 申立以前の原因により再生債務者が負うこととなった再生債権に対する弁済が原則として禁止される
債権者向け説明会
  • 申立てに至った原因、再生手続における再生債権の取り扱いや今後の手続の進行を説明する
再生手続開始 再生債務者の収益性改善
  • 人員削減が必要になる場合、労働法制に即した適切な対応が必要
  • 未履行双務契約の解除の規定を活用し、不採算事業の契約等を解除
スポンサーの選定作業
  • 再生計画案の提出期限までにはスポンサーが決定し支援内容が固まっている必要がある
再生債権者による債権届出と再生債務者による認否書の作成提出作業
  • 再生債権者が届け出た再生債権と再生債務者が認否書において認めた再生債権との間に金額や内容における乖離があり、両者で調整できない場合には再生債権査定手続によって再生債権の金額や内容を確定させる
財産評定の手続
  • 再生手続における資産の評価損額が再生計画における債務免除について免除益課税にも影響することになるため、慎重に行う必要がある
再生計画案提出 再生計画案の提出
  • 再生計画案の内容について法律上の障害がないか
議決権の行使
  • 届出債権者の頭数の過半数かつ届出債権者の議決権額の2分の1以上の賛成が得られた場合、再生計画案が可決する
再生計画の認可確定
  • 再生計画について法律上の障害事由がないか
  • 不服申立てとしての即時抗告がなされていないか
再生計画の遂行と再生手続の終結
  • 再生計画の履行が完了したときまたは再生計画認可決定確定後3年間経過時に再生手続は終結する(それまでの間は監督委員による再生計画の履行監督に服する)
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