リースしている物件を破産した会社から引き揚げる方法

事業再生・倒産
阪口 亮弁護士

 当社は車両のリース業を営む会社であり、A会社に対して当社所有の車両をリースしていたのですが、A会社が破産手続開始決定を受けました。ただちに車両を引き揚げても問題ないでしょうか。

 いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約を締結しているリース会社は、破産法上、別除権を行使して破産手続によらずにリース物件を引き揚げることができます。

 もっとも、自力執行は禁止されているため、破産管財人の了解を得ずにリース車両を一方的に引き揚げることはできません(窃盗罪に該当する可能性があります)。したがって、まずは任意の引渡しを求めて破産管財人と協議し、どうしても協議がまとまらない場合には、裁判手続に則って引き揚げることとなります。

解説

破産手続上の規律

リース契約の法的性質と破産法上の取扱い

(1) ファイナンス・リース契約の法的性質と破産法上の取扱い

 いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約(ファイナンス・リース契約)は、一般に、まずリース会社が、ユーザーが選択した特定の機械や自動車等(リース物件)を、ユーザーに代わって、自己の名で販売業者から購入し、これをユーザーに利用させます。そして、ユーザーがリース契約期間中に支払うリース料によって、リース物件の取得費、金利およびその他の経費等を全額回収できるようにリース料の総額が算定されている形態の契約をいいます。

 

ファイナンス・リース契約のイメージ

 これは、実務上、ユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであり、リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立たず、破産手続開始決定時点において、未払のリース料債権は、期限未到来のものも含めてその全額が破産債権になると解されています(会社更生の事案ですが、最高裁平成7年4月14日判決・民集49巻4号1063頁は、更生手続においてリース料債権全額が更生債権になる旨判示しています)。

(2)メンテナンス・リース契約の法的性質と破産法上の取扱い

 これに対し、リース物件の定期点検整備や保守等を契約内容とするもの(メンテナンス・リース契約)については、リース物件引渡後のリース会社の業務が契約の重要な要素となっているため、当該業務とリース料債務とが対価関係にあると解される可能性があります。

メンテナンス・リース契約のイメージ

 そのように解した場合、リース契約は破産法53条の双方未履行双務契約に該当し、破産管財人に履行または契約解除の選択権が与えられ、履行が選択された場合の未払リース料債権は財団債権になり、契約解除された場合の未払リース料債権は破産債権となります。契約を解除された場合、リース会社は取戻権(破産法62条)の行使としてリース物件の返還を求めることができます。

 もっとも、メンテナンス・リース契約という名称であっても、自動車のリース契約にメンテナンス特約が付加されているような内容となっていれば、利用者に金融上の便宜を与えるファイナンス・リースとしての性質はなお失っておらず、保守点検等のメンテナンスサービス部分のみが双方未履行双務契約としての性質を有すると解されますが、なお議論のありうるところです。

リース物件の取扱い

(1)ファイナンス・リース契約におけるリース物件の取扱い

 ファイナンス・リース契約の場合、未払リース料は全額が破産債権として取り扱われますが、それは別除権付破産債権であると解するのが一般的です。

 別除権とは、破産財団に設定された抵当権や質権などの担保権のことであり、破産手続によらないで行使することができる権利をいいます(破産法65条1項。別除権を有する者を「別除権者」といいます)。

 ファイナンス・リース契約の場合、未払リース料債権を被担保債権とし、リース物件の利用権を目的物とする担保権が成立しているとする見解と(利用権説。民事再生の事案につき、東京地裁平成15年12月22日判決・判タ1141号279頁参照)、担保権の目的物をリース物件の所有権自体とする見解(所有権説)があり、いまだ最高裁判決はなく、議論があるところですが、本設問ではリース物件の利用権が目的物であることを前提に説明します)。

(2)メンテナンス・リース契約におけるリース物件の取扱い

 これに対し、メンテナンス・リースの場合、メンテナンスサービス部分は双方未履行双務契約であると解すれば、破産法53条の規律に従うことになり、別除権は認められないこととなります。もっとも、メンテナンス・リースといっても、上述のとおり、ファイナンス・リースとしての性質も有するものなど、その内容は様々ですので、個々の契約の内容も踏まえて検討する必要がある点に留意が必要です。

リース物件の引き揚げ方法

引き揚げの手続

 リース会社は、破産手続開始決定後においては、別除権を行使してリース契約を解除し、法的手続きに則って返還を請求することができますが、実務上は、まず破産管財人に対してリース物件の任意の返還を求めて協議が行われるのが一般的でしょう。

 この場合、通常は、破産管財人の了解を得てリース物件を引き揚げることになります(万が一、破産管財人が返還を拒絶した場合は、裁判手続に従って強制的に引き揚げるしかありませんが、そのようなケースは、実務上はむしろ稀であると思われます)。

引き揚げ後の清算

 別除権付破産債権者は、別除権の行使により弁済を受けることができない債権額(別除権不足額)についてのみ配当を受けることができ、別除権の行使によって弁済を受けられない金額を証明する必要があります(破産法198条3項)。
 

 したがって、リース会社は、リース物件を引き揚げた後、これを換価して残リース料債権の弁済に充当し、別除権不足額を算定し、これを破産管財人に証明する必要があります。

 仮に最後配当の除斥期間内に不足額の証明がないと、別除権者は最終的に配当から除外されることになります(破産法198条3項)ので、リース物件の引上げ後、約定に従って速やかにリース物件の評価または換価して清算を行い、不足額の算定を行う必要があることにご留意ください。

設例について

 当該リース契約がファイナンス・リース契約であれば、リース会社は別除権を行使することができるため、リース契約を解除し、A社の破産管財人に対してリース車両の返還を求めることができます。ただし、破産管財人の同意なくリース車両を引き揚げた場合、刑法上の窃盗罪に該当する可能性もあります。まずは、リース契約を解除し、破産管財人に連絡を取り、リース車両の速やかな返還を求めるべきでしょう。

 なお、リース車両を引き揚げた後は、速やかにこれを換価し、残リース料債権の弁済に充当させたうえで、別除権不足額を算定し、これを破産管財人に証明する手続を失念しないように留意する必要があります。  

集金保証方式の場合(応用)

 自動車リースの中には、顧客と販売会社の間でリース契約が締結され、信販会社が顧客からのリース料の集金とリース料債権の保証を引き受ける取引形態(「集金保証方式」と呼ばれることがあります)があります。このような集金保証方式の場合、自動車の所有権については、三者間での契約の成立と同時に販売会社から信販会社に移転し、顧客がすべての債務を履行した時点で信販会社から販売会社に移転するものとされている場合も多いようです。

 集金保証方式において、顧客が破産手続開始決定を受けた場合、信販会社は別除権を行使できるか、行使しうるとして自動車の登録名義が販売会社とされたままの場合にも破産管財人に対して別除権を対抗できるか、対抗できない場合には、その結果として顧客に別除権の負担のない完全な所有権を認めてよいのかなどの問題が生じ得ます。

 これらの点については、リースにおける別除権の対抗要件とは何か(上記利用権説を採用する場合でも登録名義が対抗要件となるのかなど)という論点とも関連して議論が錯綜している状況にありますので、このような事案を担当される場合には、弁護士にも相談するなどして慎重に対応されることが必要でしょう。

おわりに

 リース契約の破産法上の取扱いには上記のとおり議論もあるところですが、リース会社として残リース料債権の回収を最大化するためには、少なくとも実務上の破産手続の規律を正確に理解し、必要に応じて専門家に相談することが肝要といえます。

関連する実務Q&A

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

90秒で登録完了

無料で会員登録する