不祥事発生、そのとき危機管理広報は何をするべきか

危機管理・コンプライアンス
浅見 隆行弁護士 石原 則幸

相次ぐ企業不祥事と記者会見

企業不祥事が相次ぐ中、記者会見などの広報対応を誤ったために事態を悪化させるケースが後を絶ちません。一方で、適切な広報対応によって事態を収束、好転させるケースも見られます。

緊急事態に直面した広報担当者は、まず何を行い、社内の関係部門とどのように連携を図るべきなのでしょうか。

2018年8月27日に開催を予定しているセミナー「いざという時ではもう遅い!平時に考えるべき「危機管理広報」のポイント」では、実務に精通したアサミ経営法律事務所の浅見 隆行弁護士、株式会社エス・ピー・ネットワークの専門研究員、石原 則幸氏が、最新事例を基に成否を分ける危機管理広報のポイントを解説します。

セミナーに先立ち、企業活動における危機管理広報の位置付け、果たすべき役割についてお二人に伺いました。

危機管理広報の本質

不祥事発生後の記者会見などで事態が悪化するケースをよく目にします。

浅見弁護士
今は企業の社会的責任が求められる時代になりました。不祥事が起きた後には世の中を意識しながら危機管理することが当たり前になっています。世の中を意識するとは、企業が社外に向けて情報を積極的に発信するということです。

たとえば、個人情報を漏えいしたときには、謝罪することはもちろん、被害者は誰か、事件と関係する個人・関係しない個人は誰なのか、どんな情報が漏えいしたのか等を公表する。それによって、世の中の人たちが抱えている「自分も関係しているのでは?」という不安を取り除いて、むしろ「わかりやすく情報を提供してくれた、隠蔽しないオープンな会社だ」との印象を与えて企業の信頼を回復することができます。と同時に、漏えい事件と関係する被害者だけと向きあうことができるようになるので、事態の早期の収束を図ることにも繋がります。このような目的に基づいて情報発信する一連の対応が「危機管理広報」の本質です。

しかし、巷の不祥事対応を見ていると、ただ闇雲に「情報発信すればよい」とだけ考え、本音では情報発信したくないことが端から見てわかるような対応しか行わない企業や、目的意識もないままに記者会見を行いピントがズレたコメントをしている企業も少なくありません。

中には、社会の信頼を回復するという目的を忘れて、法的責任の回避だけを目的とした対応をして、火に油を注いでいるケースもあります。

危機管理広報の対応に問題があると、どのような影響があるのでしょうか。

浅見弁護士
世の中の信頼を回復できなければ、事態は収束せず、会社の業績の低迷に繋がります。
事後の対応が拙く、会社の業績が低迷し、損害が拡大することになれば、取締役は会社が負った損害について善管注意義務違反を理由に損害賠償責任を負わなければなりません。善管注意義務違反の責任を問われたくなければ、事件や事故を起こしたときに、目的意識を持った適切なノウハウに基づいた危機管理広報を行わなければなりません。どのような広報を行えば良いかという危機管理広報のノウハウを学ぶことは、現代の取締役や広報部門には必須の時代といえます。

今回のセミナーではどのようなことをお話いただけるのでしょうか。

浅見弁護士
最近の企業不祥事例をテーマに、危機管理広報と平常時の広報の違い、以下にあげた危機管理広報における5つのポイントを説明します。

  1. 危機管理広報は誰に向けたメッセージであるべきか
  2. 初動で発信する「リリース文」の心構え
  3. 社長が記者会見に出席する目的
  4. 想定問答を作り込むべきか
  5. 他社のプレスリリースから学べる点

どこから対応を始めればよいかわからない、というご担当の方も多いかと思いますが、危機管理広報における心構えに加え、ポイントを絞って実践可能な内容をお伝えします。

<セミナーのテーマ>
最近の企業不祥事例と危機管理広報(成功例と失敗例)
なぜ危機管理広報をしなければならないか
危機管理広報と平常時の広報との違い
危機管理広報のポイント5つとその精神

危機管理広報は経営理念に基づいて実行されるべき

危機管理広報は企業内でどのような位置付けを持つのでしょうか。

石原氏
危機管理広報とは、究極的にはその目的と役割において、企業の事業継続性に資するものでなければならず、その遂行は、経営理念に基づいたものでなければなりません。特に緊急記者会見の場合は、それらがより強く求められます。

したがって、事業継続性を阻害するようでは危機管理広報の役割を放棄したようなものであり、それは広報にも危機管理にもなっていないことを意味します。

また、経営理念との関係でいえば、ある不正事案や不祥事を起こしたこと自体が理念に反しているわけですが、危機管理広報のプロセス全体が理念に反するようであれば、高く掲げた経営理念の旗は降ろさざるを得ないでしょう。危機管理の方針とて経営理念から出発するし、経営理念を護ることに帰結します。

危機管理広報の企業内での位置付け

記者会見において心がける事は何でしょうか。

石原氏
“社会の公器”としての企業が不正や不祥事の発生やその要因によって社会性を喪失していれば、危機管理、コンプライアンス、内部統制、ガバナンスのいずれも拠り所を失い、方向性を見失います。危機管理広報もその影響を免れません。しかしながら、緊急事態対応時における危機管理広報は、信頼回復と事業継続のために不可欠な説明責任プロセスであり、緊急記者会見は最大の説明責任機会です。

昨年も多くの大手製造企業において製品不正事案が頻発し、また今年に入ってからは、スポーツ競技関連での社会的事件がマスコミを賑わせていますが、いずれのケースも“最大の説明責任機会”をみすみす台無しにしています。

説明責任の基盤は、各ステークホルダーとの開かれたコミュニケーションにあり、企業においてそれを第一に体現するのが広報(機能と部署)に他なりません。緊急事態対応時の局面打開の鍵を握るのが、危機管理広報、緊急記者会見であり、事態収束への道筋を付けることが真に求められているのです。

今回のセミナーのポイントを教えてください。

石原氏
経営理念に基づいた、コーポレート・コミュニケーションにおける危機管理広報の役割をお話します。危機管理広報が迷走してしまう理由は広報部門だけにあるわけではありません。その点は経営層・役員、法務・コンプライアンス部門の方々にも平時においても是非理解いただきたい知識の1つです。
危機管理広報における責任の範囲や、責任・リーダーシップの取り方が明確にならないまま対応をスタートしてしまうと説明責任を全うした事にはならないのです。
この機会にぜひ緊急事態を想定した準備を始めていただきたいと思います。

<セミナーのテーマ>
危機管理における広報の役割
コーポレート・コミュニケーションのなかの危機管理広報
広報リスクの変遷~不変と変化
緊急事態と危機管理広報
危機管理広報の迷走パターン
事例よもやま話

平時にこそ考えるべき危機管理広報

危機管理広報は緊急事態が発生した場合に事態を収束させる重要な手段ではありますが、経験を豊富に有しているという企業やご担当者は少ないのではないでしょうか。また、自社には関係がない、目の前の業務が忙しいとお考えの方も少なくはないかもしれません。

1つの不祥事が発覚し、記者会見の対応を誤ったために組織の存亡が危ぶまれる、信頼回復に大きな時間を有する可能性がある今、全社的なリスクマネジメントの一環として、平時だからこそ危機管理広報について考える機会を設けてみてはいかがでしょうか。

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