金融取引から反社会的勢力を排除するために求められること

危機管理・コンプライアンス

 金融機関も、他の一般企業と同様に、反社会的勢力との関係を遮断することが求められていると思いますが、金融機関の所管官庁である金融庁では、具体的にどのような対応を採ることを金融機関に対して求めていますか。

 金融庁は、金融機関に対する監督上の着眼点を規定する監督指針の「反社会的勢力による被害の防止」という項目において、反社会的勢力と一切関係を持たず、また反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、可能な限り速やかに関係を解消するための態勢を整備することを求めています。

解説

監督指針の改正

 平成19年6月、政府の犯罪対策閣僚会議幹事会申合せにより、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が策定されました。

 これを受けて金融庁は、平成20年3月、金融機関に対する監督上の着眼点を規定する監督指針の改正を行い、 「反社会的勢力による被害の防止」という項目を設け、金融機関における反社会的勢力との関係遮断のための態勢整備の必要性について明記 しました。
 その後、平成25年に発覚した提携ローン(4者型)1 における反社会的勢力との取引に関する問題を踏まえて、平成26年6月には監督指針が大幅に改正されました。

参考

主要行等向けの総合的な監督指針
Ⅲ-3-1-4 反社会的勢力による被害の防止

監督指針の構成

 監督指針の構成は次のとおりであり、組織全体としての内部管理態勢が構築されていることを前提に、入口段階、中間管理段階、出口段階において、それぞれどのような対応が採られるべきかが着眼点として示されています。次項以下では、各項目でどのようなことが述べられているかについて簡潔に紹介します。  

【総論】
(1) 組織としての対応
(2) 反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築

【入口】
(3) 適切な事前審査の実施

【中間管理】
(4) 適切な事後検証の実施

【出口】
(5) 反社会的勢力との取引解消に向けた取組み
(6) 反社会的勢力による不当要求への対処

総論

(1) 組織としての対応

 この項目では、「組織的に対応する必要性・重要性を踏まえ、担当者や担当部署に任せることなく取締役等の経営陣が適切に関与し、組織として対応することとしているか」という着眼点が示されています。

 上記で触れた提携ローン(4者型)の問題を通じて、反社会的勢力との関係遮断に向けた対応が、金融機関に重大な影響を与えるものであり、組織的に対応する必要性・重要性が改めて認識されることとなりましたが、監督指針上もこの点に最初に触れています。

 また、「銀行単体のみならず、グループ一体となって、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか」という着眼点が規定されていますが、これは金融機関単体で反社会的勢力排除のための取組みを進めたとしても、グループ内の会社間で、方針の統一化や情報交換等が適切に図られていなければ、金融取引における反社会的勢力との関係遮断の要請に的確に対応できないと考えられるためです。

(2) 反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築

 この項目では、特に、「反社会的勢力に関する情報を積極的に収集・分析するとともに、当該情報を一元的に管理したデータベースを構築し、適切に更新する体制」が求められています。
 これは、反社会的勢力との関係遮断のためには、誰が反社会的勢力に該当する者であるのかを判別する必要があり、反社会的勢力に関するデータベースがあらゆる局面において重要な役割を果たすものであるという認識に基づいています。
 金融機関においては、公知情報等を蓄積したデータベースを構築し、以後述べるように、取引を実施しようとする際や関係を解消しようとする場合に、このデータベースで反社会的勢力該当性についてのチェックを実施するということになります。

入口

(3) 適切な事前審査の実施

 反社会的勢力との関係遮断を図るためには、適切な事前審査(反社チェック)を実施し、取引に入る前の段階で未然に防止する措置が最も実効性が高いことは明らかです。
 そのため、監督指針にも①反社会的勢力に関する情報等を活用した適切な事前審査の実施、②契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入の徹底、という点が反社会的勢力との取引未然防止のための取組みとして示されています。

中間管理

(4) 適切な事後検証の実施

 反社会的勢力との関係遮断のための『中間管理』段階での措置として、「反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から、既存の債権や契約の適切な事後検証を行うための態勢が整備されているか」という着眼点が示されています。
 取引開始後に属性が変化して反社会的勢力となる者が存する可能性もあり、また、日々の情報の蓄積により増強されたデータベースによって、事前審査時に検出できなかった反社会的勢力を把握できる場合もあると考えられることから、関係遮断の徹底のためには、適切な事後検証を行うための態勢が整備されている必要があるという認識に基づいています。

出口

(5) 反社会的勢力との取引解消に向けた取組み/(6) 不当要求への対処

 反社会的勢力との取引が判明した場合には、その取引の解消に向けた対応が採られる必要がありますが、まずは反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に経営陣に報告され、経営陣が適切に指示・関与することが必要です。
 実際の取引解消のための方策としては、「預金保険機構」による特定回収困難債権買取制度の活用や、当該制度の対象とならないグループ内の会社等に関しては、「株式会社整理回収機構(RCC)」のサービサー機能を活用するといった措置が示されています。
 また、「可能な限り回収を図るなど、反社会的勢力への利益供与にならないよう配意」が必要であるとともに、「いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には、資金提供や不適切・異例な取引を行わない態勢を整備しているか」という留意点が示されています。


  1. 提携ローン(4者型)とは、加盟店を通じて顧客からの申込みを受けた信販会社が審査・承諾し、信販会社による保証を条件に金融機関が当該顧客に対して資金を貸付けるローンをいう。 ↩︎

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