三菱自動車に課徴金納付命令が行われた理由 施行後初の事例に学ぶ企業対応のポイント

競争法・独占禁止法

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 1月27日、消費者庁は三菱自動車に対し、景品表示法に基づく措置命令、約4億8000万円の課徴金納付命令を行った。課徴金納付命令は昨年4月に制度が施行されてから初の適用となったが、どのような点が適用の決め手となり、今後、企業が気をつけなければいけない点はどこにあるのだろうか。景品表示法の実務に詳しい弁護士法人北浜法律事務所の籔内 俊輔弁護士に聞いた。

景品表示法の措置命令、課徴金納付命令とは

三菱自動車に対して行われた措置命令、課徴金納付命令とはどのような制度でしょうか。

 三菱自動車等は、自社で販売している自動車のカタログやウェブサイトにおいて、自動車の燃料消費率について国が定める試験方法に基づく燃費性能を表示していましたが、実際には、その表示内容は試験方法に基づいて測定した値よりも良い値になっていました。
 これらの表示について、消費者庁は、事業者が、一般消費者に対して、自社の供給する商品の内容に関して実際のものより優良であると表示する「優良誤認表示」に該当し、景品表示法上の不当表示であると判断しました(景品表示法5条1号)

 消費者庁は、このような不当表示を行った事業者に措置命令課徴金納付命令という行政処分を行うことができます(景品表示法7条、8条)。

 措置命令は、不当表示を行っていたことを社告等で一般消費者に周知することや、社内でも周知して再発防止のための措置を講じたりすること等を命じるもので、不当表示により生じた一般消費者の誤認の解消や将来に向けた再発防止を図るための処分です。今回は、命令より前に社告等をしていたこともあってか、措置命令の中では一般消費者への周知は命じられていません。

 課徴金納付命令は、不当表示の対象となった商品等の売上額に3%を乗じた額を国庫に納付するように命じるもので、近年の景品表示法の改正により導入され、平成28年4月から施行されていました。

参考:消費者庁HP 三菱自動車工業株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令及び課徴金納付命令並びに日産自動車株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(PDF)

なぜ課徴金納付命令が行われたか

制度導入以後、課徴金納付命令が行われたのは初めてという事ですが、どのような点がポイントとなって今回の判断に至ったのでしょうか。

 三菱自動車は、平成28年4月20日に、過去に国土交通省へ提出していた軽自動車の燃費試験データについて燃費性能を実際よりも良く見せるための操作が行われていたことが判明した旨を公表し、国土交通省に対しても事実関係を報告していました。その一方で、国土交通省は、燃費性能として表示される内容を含めて型式指定審査をする立場にはあったものの、法令上、燃費性能の表示に関する不正行為が行われた場合に罰則や不利益処分等を適用できる根拠が明確に定められてはいなかったようです。

 そういった事情も影響してか、同年5月には、消費者庁が、景品表示法違反の疑いで三菱自動車に対して調査を開始したという報道がされていました。消費者庁としては、景品表示法における課徴金制度の施行直後のタイミングであり、社会的に耳目を集める事案であったこともあり、課徴金制度適用の第1号案件として調査をしてきたのではないかと推測されます。  

課徴金額の算出と減免制度

課徴金額は非常に大きな金額ですが、どのように算出されたのでしょうか。

 今回公表された課徴金納付命令では、三菱自動車が販売していた普通自動車5車種が対象となっています。平成28年4月20日の時点では、三菱自動車の社内で普通自動車が燃費性能の表示に関する不正行為の対象になっていたことは判明していなかったようであり、上記5車種のほとんどで同年8月30日まで不当表示が行われていたと認定されています。
 課徴金は、課徴金制度施行後の平成28年4月1日以降の売上額に対して課されるとされており、上記の普通自動車に関しては同年8月末までの6か月程度の売上額をベースにその3%の額として、約4億8500万円が課徴金とされています。

景品表示法には課徴金を減額する制度もありますが、適用される可能性はなかったのでしょうか。

 確かに、景品表示法の課徴金制度には、課徴金額を減免する制度があり、簡単にいうと、以下の場合に減免を受けることができます(景品表示法8条1項ただし書、9条〜11条)。

事業者が不当表示の防止について相当の注意をしていた(怠っていない)と認められるとき
 →課徴金を賦課されない
調査を開始する旨の通知を受ける前に違反事実を事業者が自主的に報告したとき
 →課徴金額の2分の1に減額
景品表示法等に定められた手続に沿って返金措置を実施したとき
 →返金額を課徴金から減じる

 今回の三菱自動車に関しては、不当表示の防止体制が不十分であった等として①は認められないとされています。
 また、②については、違反事実の報告を実施したものの、消費者庁からの調査を開始する旨の通知を受けた時点より後であったので認められていません。
 ③については、報道によれば、すでに自動車を手放している購入者を返金対象から除外し、リース契約での購入者への返金額を別に定めていたこと等から、課徴金からの減額事由となる返金措置にあたるための条件の1つである「特定の者について不当に差別的でないものである」という条件(景品表示法10条5項2号)を満たさないため、返金措置とは認められないと判断されたようです。

 なお、三菱自動車等が販売していた軽自動車に関しても、1月27日に措置命令は行われていますが、現在、返金措置が実施されている途中とのことであり、その手続が終了した後に課徴金納付命令が行われるか否かが判断されると思われます。  

これから企業が注意するべきポイントは

今後、企業はどのような点に注意すればよいでしょうか。

 まず、不当表示が長きにわたって行われており、その実態把握にも時間を要してしまった点が、三菱自動車の課徴金が高額となったことにつながっていると思われます。実務的にはなかなか容易ではないものの、 違反発見時の迅速な対応を含めて表示に関するコンプライアンスへの取組みは重要になります。
 また、今回の事件では、三菱自動車から軽自動車のOEM供給を受けていた日産自動車も、同社の軽自動車の燃費性能について不当表示を行っていたとして措置命令の対象となっています。三菱自動車のプレスリリースによれば、日産自動車が、三菱自動車からOEM供給を受けていた軽自動車の燃費性能を次期車の開発にあたり参考にするため測定したところ、表示との実際の性能に乖離があったことから、三菱自動車に確認をしたことを契機として、不正行為が発覚したという経緯があるようです。

他社からOEMの供給を受けている場合や、商品の仕入れをしている場合にはどう注意すればよいでしょうか。

 日産自動車は、OEM供給元の説明により表示をしていたのではないかと思われますが、景品表示法においては、事業者に不当表示を行ったことについて故意過失がなくても、客観的に実際と相違する内容の表示を行えば不当表示にあたり景品表示法違反となると解釈されており、同社も違反とされています。

 一般論としては、事業者が不当表示を自ら把握して行政処分を受ける前に自主的に是正や再発防止の措置を講じている場合には、消費者庁は措置命令を行う必要性がないと判断する可能性もあると思われますが、報道によれば、消費者庁は日産自動車として不当表示を把握してからの対応が遅かったという指摘もしているようです。
 OEM供給を含め他社から仕入れている商品等に関して、表示と実際の商品内容等が乖離しないようにするためのコンプライアンス体制を具体的にどのような内容で整備するかについては実際には難しい問題がありますが、 平時からチェック体制や違反の疑いが生じた際の対応準備も検討しておくべきと思われます。

 不当表示ではないかという疑いが生じた場合にも迅速な対応を行うことで、課徴金の減免事由①の相当の注意をしていた(怠っていない)と認められ、課徴金も課されないこともありうるでしょう。

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