欧州委員会がサンリオを調査、EU競争法の概要と企業への影響

競争法・独占禁止法

 6月中旬、欧州委員会は「ハローキティ」など、人気キャラクターの商品企画・販売を手がけるサンリオに対して、EU競争法に違反した疑いがあるとして、調査に乗り出したことを発表した。
 欧州委員会の発表によると、サンリオのほか、米スポーツ大手のナイキ、米ユニバーサル・スタジオの2社についても調査をおこなう。
 EU競争法はどのような法律であり、過去にはどのような問題があったのだろうか。また、その違反が認められた場合、企業にはどういう影響があるのか。弁護士法人北浜法律事務所の籔内 俊輔弁護士に聞いた。

欧州委員会とEU競争法

欧州委員会とはどのような組織なのでしょうか。また、EU競争法の概要について教えてください。

 欧州委員会は、欧州連合(EU)における執行機関であり、EU域内での様々な政策実現や法執行を担当している機関です。EU競争法違反に関する調査や処分等も行っています。
 EU競争法は、一言でいえば、EUでの日本の独占禁止法に相当する法規制といえます。ヨーロッパ諸国が加盟しているEUでは、加盟国間の条約などによって、EU域内のさまざまなルールを定めています。
 そのなかで、市場における競争に悪影響を与える企業等の行動について規制をしている部分を総称して、EU競争法と呼ぶことが一般的です。

過去にはどのような問題があったか

過去に日本企業がEU競争法に抵触したケースについて教えてください。

 EU競争法に関する日本企業の違反事例としては、まず競争関係にある企業間のカルテルの事例があげられます。欧州委員会は多数のカルテル事件に関して調査をしており、日本企業のなかにも違反を認定され、極めて高額の制裁金の支払いを命じられている事例があります。
 また、競争関係にある企業間でのカルテルのほかにも、取引先に対して販売に関する制限をかけたことが問題になった事例もあります。たとえば、2002年に日本のメーカーや商社を含めた複数の企業が、ビデオゲームのEU域内での流通を制限したとして、総額1億6800万ユーロの制裁金を課した事件があります。そのなかで、日本のメーカーには1億4900万ユーロ(約180億円)が課されています。なお、2009年に同メーカーへの制裁金については、欧州第1審裁判所で2割の減額が認められています。

オンライン販売についてはどのような調査がされているのでしょうか。

 欧州委員会は、2015年から電子商取引の分野において取引上の制限がないか調査を行っていたようであり、その調査を踏まえて、2016年3月、電子商取引分野に係る実態調査の結果、地域制限(geo-blocking)がEU域内で幅広く行われているとする見解を示していました。
 さらに、欧州委員会は、2017年2月には、オンライン取引における慣行に関して、EU競争法に違反して、国境を越えた商品選択を妨げたり、自由な価格設定を制限したりするといった行為の有無や、そういった行為による競争への悪影響がないかという点について、家庭用電気機器、ビデオゲーム、ホテル予約サービスの分野で調査を開始した旨を公表しており、このうち、家庭用電気機器、ビデオゲームでは日本企業も調査対象としてあげられていました。

サンリオに調査が入った理由と違反があった場合の影響は

今回、サンリオに調査が入った理由はどのようなものと考えられますか。

 欧州委員会の発表では、キャラクターのライセンス先に対して、ライセンス商品等をEU域内の国境を超えて販売することを制限したり、オンライン上での販売を制限したりするといった手段で、EU競争法違反がないか調査するとしています。
 もし、このようにEU域内での商品等の自由な流通を制限する行為があるとすれば、それは消費者の選択の幅を狭めたり、より安い商品の入手を妨げたりすることになるので、消費者に悪影響があると考えているようです。

もし仮に、EU競争法に違反していたことが確認された場合、サンリオにはどのような影響があるのでしょうか。また、EU域内で、サンリオのグッズ販売ができなくなる可能性はあるのでしょうか。

 調査の結果として、EU競争法違反となるライセンス先への制限等があった場合、欧州委員会は、EU競争法に違反をした企業に対して、そうした制限を取りやめることや違反の対象となった商品等の売上額をベースにした制裁金の支払いを命令することが考えられます。販売に関する制限が市場での企業の事業活動の自由を奪っていること(それにより競争に悪影響を与えていること)が問題なのであり、商品そのものに問題があるわけではありませんから、商品の販売自体が禁止されることは想定しにくいです。

EU競争法に抵触しないために企業が気をつけるべきポイントはありますか。

 EU競争法においても、カルテルの規制は非常に厳しいので、カルテルの未然予防や危機対応のためのコンプライアンスを行うべきです。
 今回の欧州委員会からの発表に関連する取引先への制限(垂直的制限)について、欧州委員会は欧州の単一市場での自由な競争を妨げる地域制限に関して非常に厳しい姿勢を示しています。そのため、たとえば、EU域内で同一商品等について事実上価格差があるような場合に、仮に川下流通業者からの要望を受ける形であったとしても、EU域内の地域間での商品等の自由なやり取りを妨げる行為はEU競争法違反となることを、EU域内でビジネスをする際には十分社内で周知徹底することが最低限必要であろうかと思われます。

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