表示の裏付けとなる資料の提出を求められた場合にどう対応するか(不実証広告規制)

競争法・独占禁止法

 当社は日用品の製造販売を行っています。このたび、「置くだけで空気中の菌を除去し、お部屋をいつも清潔に保ちます」という表示をして、空間除菌グッズを販売することを考えています。この空間除菌グッズには、除菌効果があることが広く認知されている物質が用いられているのですが、その場合、上記のような表示を行うことは特に問題がないと考えてよいですか。

 一般消費者は、上記表示から、この空間除菌グッズには、部屋に置いておくだけで空気中の菌を除菌し部屋を清潔に保つ効果があると認識すると考えられます。よって、この空間除菌グッズに実際にそうした効果がなければ、優良誤認表示にあたるおそれがあります。また、消費者庁などから、上記表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められた場合に、根拠を示す資料を提出することができなかったときは、この表示は優良誤認表示とみなされてしまいます。よって、貴社は、合理的な根拠のある範囲で表示を行うとともに、合理的な根拠を示す資料をいつでも提出できるように整えておくことが必要と考えられます。

解説

不実証広告規制

 消費者庁長官は、事業者がした表示が優良誤認表示に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、その表示をした事業者に対し、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされています。そして、事業者が資料を提出しないときは、優良誤認表示とみなして措置命令ができるとされています(景品表示法7条2項)。これを不実証広告規制といいます。
 本来、ある表示が優良誤認表示にあたるとして措置命令をするためには、消費者庁長官において、当該商品等の内容が表示と異なることを自ら調査して立証するのが原則といえます。しかし、こうした調査には時間がかかり、その間、不当な表示が世に出回り続けることにもなりかねません。そこで、いわば立証責任を転換して、事業者の側に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、提出できない場合には優良誤認表示とみなして措置命令をなし得ることにしたものです。

表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料

 表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料といえるためには、次の2つの要件を満たす必要があるとされています(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」 第3の1および2。以下「運用指針」といいます)。

① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
具体的には次のいずれかに該当するものをいう。
a) 試験・調査によって得られた結果
b) 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

 (i) 専門家等が専門的知見に基づいて当該商品・サービスの表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの

 (ii) 専門家等が、当該商品・サービスとは関わりなく、表示された効果、性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの


② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

試験・調査によって得られた結果

 上記①a)の「試験・調査によって得られた結果」を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合、当該試験・調査の方法は、表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界または産業界において一般的に認められた方法または関連分野の専門家多数が認める方法(こうした方法が存在しない場合は社会通念上および経験則上妥当と認められる方法)によって実施する必要があるとされています(運用指針 第3の2 (1) アおよびイ)。

専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

 また、上記①b)の「専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献」を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合、次のいずれかであれば、客観的に実証されたものと認められるとされています。すなわち、(i) 専門家等が専門的知見に基づいて当該商品・サービスの表示された効果、性能について客観的に評価した見解または学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの、または、(ii) 専門家等が、当該商品・サービスとは関わりなく、表示された効果、性能について客観的に評価した見解または学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの、です(運用指針 第3の2 (2) ア)。

表示された効果、性能と提出資料の内容

 しかし、仮に提出資料自体は客観的に実証された内容のものであっても、表示された効果、性能が提出資料によって実証された内容と適切に対応していなければ、当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められません(運用指針 第3の3)。

提出期限

 事業者は、消費者庁長官から表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められた場合、15日以内に提出することが必要とされます(景品表示法施行規則7条2項)。正当な事由がある場合にはこの限りではないとされますが(景品表示法施行規則7条2項ただし書)、正当な事由が認められる場合は非常に限定的であり、合理的な根拠を示す資料を得るため新たな試験・調査を実施する必要があるということは、正当な事由とは認められません(運用指針 第4の2 (2))。
 よって、基本的には15日以内に上記資料を提出できない場合には措置命令の対象となりますが、提出できない場合には、資料を提出しない場合のほか、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとはいえない場合も含まれます。

設例の場合について

 設問の事案における表示は、「置くだけで空気中の菌を除去し、お部屋をいつも清潔に保ちます」というものであり、一般消費者は、上記表示から、この空間除菌グッズには、部屋に置いておくだけで空気中の菌を除菌し部屋を清潔に保つ効果があると認識すると考えられます。よって、上記表示の裏付けとなる合理的な根拠としては、この空間除菌グッズに、置いておくだけで部屋の空気中の菌を除去する効果があることを示す試験・調査結果等が求められるといえます。
 これに対し、表示された実際の使用状況を離れて、単に、空間除菌グッズに含まれる物資に除菌効果があることを示す試験結果や学術文献しかないとすれば、表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していないと考えられます。
 よって、この場合には、たとえこうした資料を提出しても、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料が提出されなかったものとして、優良誤認表示とみなされ、措置命令の対象になると考えられます。この場合、合理的な根拠を示す資料を保管するなど、表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を講じることが必要と考えられます(「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」 第4の6)。

コンテンツの更新情報、法改正、重要判例をもう見逃さない!メールマガジン配信中!無料会員登録はこちらから
  • facebook
  • Twitter

関連する特集