二重価格表示で景品表示法違反とならないために(不当表示)

競争法・独占禁止法

 当社は、ケーキ店を営んでいます。今般、開店15周年を記念してセールを実施します。当店自慢のイチゴケーキは、3か月前に販売を開始し、通常480円で販売しています。ただし今回のセール開始の4週間前から3週間前の1週間のみ、お客様感謝セールとして450円で販売した実績があります。今回のセールでは、50円の値引きを予定していますので、店頭で「430円(当店通常価格480円)」と表示することに景品表示法上問題があるでしょうか。

 値引き前のイチゴケーキの価格(480円)は、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」に該当しますので、景品表示法上の不当表示に該当するおそれはないと考えてよいと思われます。

解説

はじめに

 百貨店や小売店などでは、需要喚起、在庫処分等の目的で期間限定セールを実施する場合、「当店の通常価格は●●●円ですがセール期間に限りXXX円に値引きします」のように、商品の過去の販売価格を比較対照価格とする表示が行われることがあります。
 このような過去の販売価格を比較対照価格とする「二重価格表示」において、たとえば、セール実施直前のごく短期間のみ形式的に販売されていたに過ぎない高い販売価格とセール価格を比較対照するような場合など、一般消費者に対し、セール価格が「安い」との誤認を与える場合があり得ます。このように、消費者に誤認を生じさせる二重価格表示は、景品表示法5条2号の有利誤認表示(不当表示)に該当すると判断される可能性があります

 では、景品表示法上の不当表示に該当しないためには、二重価格表示を行うにあたって、どのような点に留意すべきでしょうか。

「最近相当期間価格」に該当する場合には不当表示に該当しない

 この問題については、「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)では、過去の販売価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」(最近相当期間価格)に該当するか否かによって、以下のとおり考え方が整理されています。

  1. 同一の商品について最近相当期間価格とはいえない価格を比較対照価格に用いるとき:
    → 当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等その内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがある。
  2. 同一の商品について最近相当期間価格を比較対照価格に用いるとき:
    → 不当表示に該当するおそれはない。
※なお、セール実施の決定後に販売を開始した表示については、別途不当表示に該当する可能性があります。

「最近相当期間価格」か否かの判断基準

 以上のとおり、比較の対照とする過去の販売価格が「最近相当期間価格」に該当するか否かで、不当表示該当性の考え方が違ってくることになります。
 では、「最近相当期間価格」に該当するか否かはどのような基準で判断されるのでしょうか。この点についても価格表示ガイドラインで一般的な考え方が説明されています。

検討の対象となる期間を定める

ⅰ) 商品がセール開始時点からさかのぼる8週間以上前から販売されている場合
→ 当該8週間を検討の対象となる期間とする

ⅱ) 商品の販売期間が8週間未満の場合
→ その販売期間を検討の対象となる期間とする

各期間について以下のチャートで検討する

「最近相当期間価格」か否かの判断基準

設問の事例について

 設例の場合を検討してみましょう。
 この店舗では、開店15周年セールにおいて、イチゴケーキ(以下「本商品」といいます)について「430円(当店通常価格480円)」との価格表示を行うことを検討しています。この場合、以上の考え方に従うと、比較の対照となる480円という価格は「最近相当期間価格」に該当するでしょうか。

検討の対象となる期間

 まず、本商品は3か月前から販売しているとのことで、販売期間がセール開始時点からさかのぼる8週間以上前から販売されていますので、検討の対象となる期間は、セール開始前の8週間が検討の基礎となります。

チャートに従った検討

 設例の事案では、通常本商品を480円で販売していますが、セール開始から4週間前から3週間前の1週間のみ450円で販売しています(以下の図参照)。

設問の事例のチャートに従った検討

 そうすると、3−2 に掲載したチャートに当てはめると、以下のとおりとなります。

  • 比較の対照としようとする価格(480円)で販売されていた期間は8週間中の7週間ですので、販売期間の過半を占めます。
  • 比較の対照としようとする価格(480円)で販売されていた期間は通算7週間ですので、2週間以上です。
  • セール直前まで比較の対照としようとする価格(480円)で販売していますので、比較対照価格で販売された最後の日から2週間以上経過していません。
  • したがって、480円は最近相当期間価格に該当し、比較対象価格とできることになります。

 以上から、設例の事案において、本件商品について「430円(当店通常価格480円)」と表示することは、景品表示法上の不当表示に該当しないと考えられます。

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