同業他社との間で行う情報交換が違法になる場合とは

競争法・独占禁止法

 当社が事業を行っている業界は、競合関係にある同業他社間の交流が活発で、様々な情報交換を行っています。
 同業他社同士の情報交換は独占禁止法上問題があると聞きましたが、このような業界内での情報交換はすべて違法になるのでしょうか。

 すべての情報交換が問題視されるわけではありません。
 問題となる情報交換は、価格や供給数量など、その業界やマーケットにおける競争にとって重要な情報の交換に限られます。 逆に、環境・安全・技術に関する情報交換や、一般的な市場動向・政治動向・法令改正などの概括的な情報交換、公知情報の交換、事業者団体での正当な活動などは、情報交換の目的・内容・方法によっては、問題がない場合もあります。
 また、競合他社であっても、商品の購買先として取引する場合には、その商品の価格についてやり取りをしても問題はありません。

解説

独占禁止法コンプライアンスと同業他社との情報交換

独占禁止法で違法とされるカルテルとは

 独占禁止法3条により禁止される「不当な取引制限」の一つに、「カルテル」があります。
 「カルテル」は、事業者または業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為です。わかりやすくいうと、①競合他社同士がお互いに通じ合って、②価格、供給数量などの足並みを揃えることをいいます。

カルテルの状況証拠

 違法なカルテルを摘発したい規制当局は、状況証拠として、競合他社同士の情報交換(どのような情報が、いつ、誰と交換されたか)という客観的事実に注目します。
 競合他社同士の違法な情報交換があれば、お互いに通じ合ったという認定が行われやすく、その場合に、また価格や供給数量などの足並みが揃っていれば、当局は、カルテルが成立した、と容易に判断するでしょう。たまたま同じ価格になったにすぎず、暗黙の了解はないという反論は、難しくなります。

違反にならないために事業者側でコントロール可能なこと

 では、あらぬ疑いをかけられたくない事業者側としては、コンプライアンスの観点から、どのように防御すればよいのでしょうか。

 ここで鍵を握るのは、競合他社との情報交換の意識的なコントロールです。具体的には、情報交換の場面を個別具体的に分類するとともに、問題視されやすい情報とされにくい情報を明確に区分することで、独占禁止法違反リスクを極力小さくするという観点が求められます。

問題視されやすい情報交換とは

 問題視されるのは、カルテルの状況証拠となりやすい情報交換、すなわち、価格、供給数量、取扱地域、取扱顧客、その他の重要な競争手段である取引条件に関する情報交換です。
 以下に、問題視されやすい情報交換と、状況証拠となる可能性がある違法行為の例を記載します。

情報の種類 状況証拠となり得る違法行為の類型
価格・コスト 価格について足並みを揃える(価格カルテル)
顧客リスト
取引コスト
取引する顧客のすみ分け(顧客分割)
取引する国・地域のすみ分け(市場分割)
受注意欲 誰がどの案件を受注するかの調整(受注調整)
取引数量 供給量の調整(数量カルテル)

 同業者同士が互いの手の内を見せ合うような行為は問題である、と考えればよいでしょう。

問題視されにくい情報交換とは

一般的な情報の交換

 これに対して、環境・安全・技術に関する情報交換や、一般的な市場動向・政治動向・法令改正などの概括的な情報交換、すでに公知となった情報の交換、事業者団体での正当な活動などは、情報交換の目的・内容・方法によっては、通常、問題視されにくいといえます。
 これらの情報は、通常、重要な競争手段である取引条件(価格や供給数量など)との関連性が薄いからです。

売主と買主としての情報交換

 また、ある事業分野では競合していても、別の事業分野では商品やサービスの購買先となっている場合には、その商品やサービスの価格について、売主と買主という関係で行うやり取りは、適正な取引の一環として行われるものですから、問題とはならないことが一般的です。

おわりに マーケットリサーチを委縮させないために

 近時は、独占禁止法違反リスクを警戒するあまり、競合他社情報に触れることを過剰に恐れた結果として、マーケットリサーチ活動が委縮してしまう例が多く見られます。

 しかし、競合他社の情報を収集し、相手を出し抜くことで顧客を獲得するのは競争の基本であり、独占禁止法コンプライアンスとマーケットリサーチは、本来両立可能なものです。
 付け焼刃的で中途半端な独占禁止法コンプライアンスは、営業活動を過度に委縮させる毒にしかなりません。法務部と営業部が協力・連携しながら、会社の営業活動の実態を充分に精査し、独占禁止法違反リスクを個別具体的に見極めた上で、いわゆるテイラーメイドの独占禁止法コンプライアンスを確立することが、企業の経営戦略上、求められる時代が来たといっても過言ではないでしょう。

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