リベートの提供が独占禁止法上問題となる場合

競争法・独占禁止法

 当社は、原材料メーカーで、原材料Xについては、60%の国内シェアを有しています。国内の競合メーカーは、A社(シェア30%)、B社(シェア10%)です。当社では、最近、機械メーカーに対して、原材料Xを当社から全量または90%以上購入することを条件に、リベートを提供する施策の導入を検討しています。機械メーカーは、2社購買が基本ですが、当社がこのようなリベートを導入すれば、多くの機械メーカーが当社1社からの購入に切り替えることが見込まれます。このようなリベートの供与が独占禁止法上問題になることはありますか。

 貴社の原材料Xが有するブランド力や、A社およびB社の供給余力によっては、貴社が導入を検討しているリベートは、排除型私的独占に該当する可能性があります。仮に排除型私的独占に該当する場合、貴社としては、公正取引委員会からの排除措置命令や課徴金納付命令、さらには競争者からの不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。加えて、競争者は、当該リベートの供与を排他条件付取引(一般指定11項)であると構成して差止請求(独占禁止法24条)を行ってくることも考えられます。

解説

リベートの提供が排除行為に該当するか

 リベートは、販売促進目的や仕切価格の修正等として用いられますが、リベートの結果、需要が刺激されたり、市場の実態に即した価格形成を促進させたりするなど、競争促進的な効果も有するため、リベートの供与がただちに排除行為に該当することはありません

 また、取引の相手方に対して、自己の商品をどの程度取り扱っているか等を条件としてリベートを供与すること(これを「排他的リベートの供与」と呼びます)により、排他的取引と同様の機能を有する場合、つまり、リベートが取引の相手方に対して競争品の取り扱いを制限させる効果を有する場合がありますが、この場合でも、競争者が当該相手方に代わり得る取引先を容易に見いだすことができる場合には、競争者は、価格、品質等による競争に基づき市場での事業活動を継続することができますので、排除行為には該当しません

 しかし、排他的リベートの供与により、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができない事業者の事業活動を困難にさせる場合には、それによって当該事業者は競争から排除されることになるため、このような行為は排除行為となります。

どのようなリベートの提供が排除行為に該当するか

 どのようなリベートが排除行為に該当するかは、(i)当該リベートが排他的取引と同様の機能を有するか、(ii)排他的取引と同様の機能を有するとして、排除行為に該当するか(排他的効果を有するか)という2段階のステップで判断します。

 そして、リベートが排他的取引と同様の機能を有するか否かを判断する際の考慮要素として、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」(以下、「排除型私的独占ガイドライン」)第2-3(3)では、以下の4点があげられています。

  1. リベートの水準(金額や供与率の水準が高いと排除行為と判断されやすくなる)
  2. リベートを供与する基準(取引先の達成可能な範囲内で高い水準に設定されている場合や取引先ごとに基準が設定されている場合は排除行為と判断されやすくなる)
  3. リベートの累進度(一定期間における取引数量等に応じて累進的に水準が設定されている場合は排除行為と判断されやすくなる)
  4. リベートの遡及性(基準を超えた場合にそれまでの取引数量等の全体に対してリベートが供与される場合は排除行為と判断されやすくなる)

 そして、排他的取引と同様の機能を有すると判断された場合に、その排他的リベートの供与が排除行為に該当するか(排除効果が認められるか)は、排他的取引と同様の判断要素である以下の点を考慮して、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができない競争者の事業活動を困難にさせるか否かによって判断されます(排除型私的独占ガイドライン第2-3(2))。

  1. 商品に係る市場全体の状況(市場集中度、商品の特性、規模の経済、商品差別化の程度、流通経路、市場の動向、参入の困難性等)
  2. 行為者の市場における地位(行為者の商品のシェア、その順位、ブランド力、供給余力、事業規模等)
  3. 競争者の市場における地位(競争者の商品のシェア、その順位、ブランド力、供給余力、事業規模等)
  4. 行為の期間および相手方の数・シェア
  5. 行為の態様(取引の条件・内容、行為者の意図・目的等)

 なお、「独占禁止法で禁止されている私的独占とは」で触れたJASRAC事件(最高裁平成27年4月28日判決・民集69巻3号518号)の最高裁調査官解説(法曹時報69巻8号2255頁)によれば、排他的取引の場合、排除効果が認められるのに人為性が認められないという結果になることは通常考え難いとされています。

一定の取引分野における競争を実質的に制限するか

 排除型私的独占において、一定の取引分野における競争を実質的に制限するかは、以下の点等を総合的に考慮して判断することとされています(排除型私的独占ガイドライン第3-2(2))(この点の詳細は、「独占禁止法で禁止されている私的独占とは」を参照ください)。

  1. 行為者の地位および競争者の状況(行為者の市場シェアおよびその順位、市場における競争の状況、競争者の状況)
  2. 潜在的競争圧力(制度上の参入障壁の程度、実態面での参入障壁の程度、参入者の商品と行為者の商品との代替性の程度)
  3. 需要者の対抗的な交渉力
  4. 効率性
  5. 消費者利益の確保に関する特段の事情

設例のリベートが排除型私的独占に該当するか

 この点、設例では、リベートの水準がわかりませんが、リベートを供与する基準は「当社から原材料Xを全量または90%以上購入すること」という機械メーカーにとって達成可能な範囲で高い水準に設定されており、これによって、質問をしている会社の原材料Xを競争品よりも優先的に購入させる機能が強く働き、機械メーカーが質問をしている会社のみからまたは質問をしている会社からより多くの原材料Xを購入する可能性が高くなるため、競争品の購入を制限する効果が高く、このような排他的リベートの供与は排他的取引と同様の機能を有すると判断される可能性が高いといえます。

 そして、たとえば質問をしている会社の原材料Xが強いブランド力を有しており、機械メーカーはユーザーからの需要に応えるために質問をしている会社の原材料Xを使用することが必要不可欠である場合や、A社およびB社の商品供給能力が小さく、機械メーカーがA社およびB社からの供給によって質問をしている会社から受けている供給量のすべてを代替できないような場合、機械メーカーにとっては質問をしている会社から原材料Xの供給を受けることがより重要となるため、このような状況で、質問をしている会社が上記のような排他的リベートの提供を行えば、A社やB社は、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなる可能性が高いため、質問をしている会社の行為は排除行為に該当する可能性が高くなります。

 これに対して、質問をしている会社の原材料Xが強いブランド力を有しているわけではなく、A社とB社で質問をしている会社の供給量を代替できるような場合は、A社やB社は、価格競争や商品の差別化によって取引の相手方を見いだすことが可能であるため、質問をしている会社の排他的リベートの供与によって他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるとは言い難く、質問をしている会社の行為が排除行為に該当する可能性は低くなります。

 なお、仮に質問をしている会社による排他的リベートの供与が排除行為に該当する場合、日本における原材料Xの市場が一定の取引分野であるとすれば、質問をしている会社の市場シェアは60%で1位であり、リベート導入後は多くの機械メーカーが質問をしている会社1社からの購入に切り替えることが見込まれることからすれば、競合他社の牽制力は弱く、需要者である機械メーカーも原材料Xの取引先を変更することが困難であるとは認められません。そうすると、行為者の地位および競争者の状況、需要者の対抗的な交渉力等に鑑みて、質問をしている会社がその意思で、ある程度自由に各般の条件を支配することができる状態が形成されているといえ、一定の取引分野における競争を実質的に制限しているといえそうです。したがって、その場合、質問をしている会社の行為は、排除型私的独占に該当する可能性が相当高いといえるでしょう。

排除型私的独占に該当する場合に公正取引委員会や競合他社が採り得る方法

 排除型私的独占は、排除措置命令と課徴金納付命令の対象となっていますから(独占禁止法7条、7条の2)、仮に設例のリベートが排除行為に該当する場合、質問をしている会社は、公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を受ける可能性があります。

 また、仮に本件のリベートが排除行為に該当する場合、この他に、質問をしている会社は、競合メーカーから不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を受ける可能性も考えられます。

 なお、私的独占は、独占禁止法上の差止請求(独占禁止法24条)の対象ではありませんが、私的独占が不公正な取引方法にも該当する場合は、当該私的独占を不公正な取引方法と構成することで差止請求の対象とすることが可能です。たとえば、今回の事例のような排他的リベートの供与は、排他条件付取引(一般指定11項)として不公正な取引方法にも該当すると考えられますので(流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針第1部第3-2(2))、競合メーカーは質問をしている会社による排他的リベートの供与を排他条件付取引であると構成して差止請求を行ってくることも考えられます。

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