独占禁止法違反になり得る行為を特定する、競争回避と競争者排除という視点

競争法・独占禁止法
小田 勇一弁護士

 独占禁止法が規制の対象とする行為とはどのような行為でしょうか。具体的なビジネスの局面において、独占禁止法上問題となり得る行為を特定する簡便な方法はないでしょうか。

 独占禁止法が規制対象とする主な行為は、不当な取引制限、私的独占、不公正な取引方法および企業結合規制の4つです。しかし、実際のビジネスの局面において、この規制類型の分類自体は、目の前にある行為が独占禁止法上問題となり得るか否かを特定するうえでそれほど有用な手掛かりになりません。むしろ、独占禁止法違反行為を「競争回避型」と「競争者排除型」という2つの視点で捉え、整理する方が有益です。

解説

独占禁止法の概要

 独占禁止法は、競争の基本的なルールを定めた法律です。1条から118条で構成される法律ですが、多くは手続や公正取引委員会の組織に関する条文であり、競争のルールを記述する条文は数えるほどしかありません。数少ない条文により記述された主たる規制対象が、不当な取引制限独占禁止法2条6項、3条後段)、私的独占独占禁止法2条5項、3条前段)、不公正な取引方法独占禁止法2条9項1号から5号、一般指定等、独占禁止法19条)、企業結合規制独占禁止法10条13条から17条)の4つです。前3つは特定の反競争的な行為を禁止する規制(行動レベルの規制)であるのに対し、企業結合規制は市場構造を競争的なものに維持し、もって反競争的な行為が将来起こりやすくなることを未然に防ぐための規制(市場構造レベルの規制)です。

 競争の主体となる事業者は、当たり前のことではありますが、独占禁止法が規律する競争のルールを理解しておく必要があります。いかに優れた競争手段を思い付いたとしても、それが独占禁止法に違反する場合、つまり競争のルールに違反するということになれば、公正取引委員会による行政的なペナルティーの対象となりますし、また、場合によっては刑罰の対象になり得ます。事業者としては、独占禁止法の勘所を押えつつ、事業活動を行う必要があるわけです。

 ところが、その規制内容は、他の法律と比較し、特に抽象度が高く、わかりにくいという声もよく耳にします。不当な取引制限私的独占不公正な取引方法として禁止されている個々の各行為の内容を見ますと、具体的にどのような行為がそれらに該当し得るのかを理解するのは容易なことではありません。また、一つ一つの行為類型を仔細に理解しようとするあまり、今度はかえって、ルールの本質を見失い、ルールに振り回されてしまうことにもなりかねません。

 むしろ、法律上の類型にとらわれず、反競争的な効果が生じるメカニズムに着目し、競争回避競争者排除という視点から、独占禁止法が規制対象とする行為の特徴をまずは大雑把に理解しておくことが有益です。  

競争回避型

 競争回避型の行為とは、事業者らがその合意により競争を回避する行為です。
 ポジショニング戦略や差別化戦略により、各事業者が独自の判断で競争者との競争を回避し、生き残ろうとすることは、もちろん禁止されません。独占禁止法上問題となり得る競争回避型の行為とは、事業者らがその合意により競争を回避する行為であり、その典型的な例がカルテル入札談合受注調整と呼ばれる行為(独占禁止法3条後段)です。また、ブランド内での卸売業者や小売業者間の競争を回避することになる再販売価格拘束独占禁止法2条9項4号)も競争回避型に該当します。

競争回避型

競争者排除型

 競争者排除型の行為とは、人為的な手段を使って競争者を市場から駆逐しようとする行為です。
 その種類は様々です。たとえば、競合品の取扱いを禁止する条項やリベートを駆使して、競争者との取引を契約上または事実上拒絶させることにより、商品の売り先や原材料の確保を困難にさせ、市場から排除しようとする場合があります(一般指定11項、12項等)。また、異常に安く商品を提供することにより、ライバルを駆逐しようとする場合が考えられます(独占禁止法2条9項2号および3号、一般指定3項、6項)。

 よい商品を提供し、その結果、競争者を排除することは、競争そのものですので、ここでいう競争者排除型の行為には該当しません。しかし、競争者を排除するという点は競争過程それ自体でもあるため、実は、正当な競争行為と競争者排除型の行為の区別は容易ではありません。その区別は、競争への影響の内容・程度や当該競争手段を採る理由等も踏まえ、慎重に検討する必要がありますが、そもそもその必要があるか否かを選別するうえで、競争者排除という視点は有益です。  

競争者排除型

まとめ

 このように、競争回避競争者排除という視点は、大雑把に独占禁止法違反になり得る行為を理解することを可能にしてくれますし、また、そのわかりやすさゆえに、分析ツールとしても有益です。企業結合規制もまた、市場構造が変化し、競争回避や競争者排除が起こりやすくならないかを事前にチェックするというものだと理解しておけば、わかりやすいでしょう。
 実際は、この視点だけでは独占禁止法違反になり得る行為をあまねく補足することはできないのですが(代表的なものとして、優越的地位の濫用行為があります)、例外は例外として頭に入れておけば十分であると思います。

コンテンツの更新情報、法改正、重要判例をもう見逃さない!メールマガジン配信中!無料会員登録はこちらから
  • facebook
  • Twitter

関連する特集