課徴金減免制度(リニエンシー/leniency)とは

競争法・独占禁止法
小田 勇一弁護士 大多和 樹弁護士

 独占禁止法上の課徴金減免制度の概要を教えてください。

 課徴金減免制度は、事業者自らが関与しているまたは過去に関与したカルテルや談合などについて公正取引委員会に対して自主的に申告した場合に、当該事業者の違反行為に対する課徴金がその申告した時期・順位に応じて免除(100%減額)または減額(30%もしくは50%の範囲)される制度です。現行の課徴金減免制度においては、減免率は申請の時期・順序に応じて異なり、また、対象事業者は最大5社に限定されていますので、事業者間では、課徴金の減免を受ける地位の確保に向けたレースが繰り広げられます。特に公正取引委員会が立入検査を行った段階では、立入検査を受けた事業者らは一斉に社内調査を開始し、課徴金減免制度の利用を検討しますので、速やかに社内調査を実施し、申請の可否を判断する必要があります。

解説

課徴金減免制度の概要

 課徴金減免制度とは、事業者が自ら関与したカルテルや談合などの「不当な取引制限」について、公正取引委員会に対して自主的に申告した場合に、違反行為に対する課徴金が免除または減額される制度です。リニエンシー(leniency)制度と呼ばれることもあります。
 課徴金減免制度は、違反行為者に自主申告のインセンティブを与え、違反行為の調査を行いやすくすることを目的として導入されました。
 課徴金減免制度は「不当な取引制限」のみに適用され、「私的独占」および「不公正な取引方法」には適用されません。

課徴金減免制度

課徴金の減免を受けることができる事業者

 課徴金減免を受けられる事業者は最大5社です(共同申請の場合の例外は後述)。減免率や減免の適用条件は公正取引委員会の「調査開始日」前の申請であるか否かや申請の順位に応じて異なっており、その概要は下記の表のとおりです(独占禁止法7条の2第10項~第12項)。

 たとえば、公正取引委員会による調査開始日以後に最初に申請した事業者が2社存在した場合、その申請の時間的先後により、1位(1番目の申請者)は課徴金免除、2位(2番目の申請者)は50%の減額を受けられます。
 それに対し、公正取引委員会による調査開始日後は、残り3つの席を巡り、事業者間での争いとなり、その申請の時間的先後に従い、3番目から5番目の申請者ら(計3社)が30%の減免を受けられることになります。ただし、調査開始日以後の申請者については、公正取引委員会が把握していない新たな事実を報告しなければなりません(なお、この点は、調査開始前に計5社が減免申請を行った場合の4番目、5番目の申請者も同様です)。

 課徴金減免申請は、同一企業グループである場合に限って共同申請をすることができ、この場合、共同申請をした事業者には同じ順位が割り当てられます(独占禁止法7条の2第13項)。

課徴金の減免を受けることができる事業者

課徴金減免申請の手続の流れ

基本的な流れ

 課徴金減免申請の流れは、当該申請が公正取引委員会の「調査開始日」(立入検査日等)前の申請であるのか、「調査開始日」以後の申請であるかのよって異なりますが、大まかな流れは下図のとおりです。なお、それぞれの段階で要求される報告書の様式は、公正取引委員会のホームページ上に公開されています(参照:公正取引委員会「課徴金減免制度について」)。

課徴金減免申請の手続の基本的な流れ

 調査開始日前の申請の場合には、まず、様式第1号で違反行為の概要を報告し、その後、さらなる社内調査の結果を踏まえ、様式第2号で詳細な報告を行うという2段階の仕組みになっています。
 これに対して、調査開始日以後の申請の場合には、公正取引委員会はすでに一定の情報を有していますので、様式第3号にて様式第2号に準じた詳細な報告を行う必要があります。もっとも、調査開始後は、減免のポジションをめぐって他の事業者との間でレースとなりますので、実務上、まずは、社内調査にて様式第3号を提出するのに必要最小限度の事実を確認し、意思決定を経て様式第3号を提出したうえで、さらなる社内調査を行い、調査開始日から20営業日以内に追加報告・資料の提出を行います。

 実務的には、調査開始日前か調査開始日以後かを問わず、自分が今申請したら何番になるかを課徴金減免管理官に電話し、減免枠が空いているかを確認したうえで、様式第1号の報告書または様式第3号の報告書をFAXすることにより、申請します。
 申請者は、これらの報告書および資料の提出によって、公正取引委員会から正式に申請受理の通知を受けることができます。

 なお、口裏合わせや証拠隠滅を防止する観点から、課徴金減免申請を行った事業者がその旨を第三者に対して正当な理由なく明かすこと(弁護士に相談する場合は正当な事由に該当します)は禁止されていますので、情報の管理には注意が必要です。

違反行為のとりやめ

 課徴金減免の申請者は、調査開始日前の申請の場合には調査開始日までに、調査開始日以後の申請の場合には申請までに、違反行為をとりやめていなければなりません。
 公正取引委員会は「取締役会等で当該違反行為を行わない旨の意思決定を行い、違反行為に関与した営業部門に周知徹底したうえで、公正取引委員会に課徴金の減免に係る報告及び資料の提出を行う」ことによって、この要件を満たすことができるとしています(公正取引委員会「課徴金減免制度Q&A問23」)。

公正取引委員会からの追加の報告要請

 公正取引委員会は、課徴金減免の申請者に対し、追加の報告または資料の提出を求めることができます(独占禁止法7条の2第16項)。これに応じないことは、課徴金減免を受ける資格の失格事由とされています(独占禁止法7条の2第17項)。

申請の失格事由

 3-3に記載した事由のほか、申請者の報告または提出した資料の内容に虚偽が含まれている場合、申請者が他の事業者に対して違反行為を強要していた場合、申請者が他の事業者が違反行為をとりやめることを妨害した場合には、当該申請者は失格となります(独占禁止法7条の2第17項)。

関連する実務Q&A

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

90秒で登録完了

無料で会員登録する