改正割賦販売法について企業が押さえておきたいポイント

ファイナンス

クレジットカードの現状、改正に至る経緯

クレジットカードの社会インフラ化

 今日、我が国におけるクレジットカードの発行枚数は、平成28年3月末日現在で、約2億6600万枚に上り、成人人口比でいえば、1人あたり2.5枚のカードを保有していることになる。
 また、クレジットカードの信用供与額についても、平成28年は約54兆円に上り、この10年近くで倍増している(数値については、いずれも日本クレジット協会の公表による)。
 このようにクレジットカードは、現在の国民生活において重要な社会的インフラ(決済インフラ)としての地位を確立し、インターネット取引の増大と共に、その重要性は増すばかりである。

カードの不正利用

 もっとも、インターネットネット取引におけるクレジットカードの不正使用の被害額は年々上昇しており、平成28年には、合計で約141億円にも達している(前年度比約17.5%増)。

ビジネスモデルの変化と現行の割賦販売法

(1) 「オンアス取引」から、「オフアス取引」への移行

 このような中で、クレジットカード取引に係るビジネスモデルにも大きな変化が生じ、現行の割賦販売法が想定しているイシュアー(クレジットカードを発行する会社)自らが加盟店(クレジットカードによる商品、役務の対価の支払いを受ける販売事業者)と契約を締結し、これを管理する「オンアス取引」から、「オフアス取引」への移行が一般化している(図表1参照)。

 特に、オフアス取引においては、アクワイアラー(加盟店と契約を締結し、これを管理する会社)と加盟店との間に立って、資金精算を代行する決済代行会社(PSP;Payment Service Provider)が存在する取引形態も多く、このような取引形態に対しても、割賦販売法が適切な規律を及ぼす必要がある。

【図表1】

オンアス取引とオフアス取引

(2) 加盟店におけるカード情報の管理

 また、現行の割賦販売法は、加盟店におけるカード情報の管理等に対して、加盟店に対する直接的な義務付けなどができておらず、前述したクレジットカードの不正利用の増加に鑑みれば、クレジットカード取引のセキュリティ対策が十分に図ることができない状況である。

(3) 割賦販売法の改正

 このような状況を踏まえ、割賦販売法について以下のような改正が行われた(主な改正項目は、以下の囲み参照)。
 なお、改正法は、平成28年12月2日に成立し、同12月9日に公布された。今後は、施行省令等の公表、パブリックコメントの実施が予定されており(平成29年夏ごろとなる見込み)、その後、平成30年6月までに施行される予定である。

  • 加盟店管理の強化
  • 加盟店におけるクレジットカード番号等のセキュリティ対策の義務付け
  • FinTech企業のさらなる参入を見据えた環境整備
  • 特定商取引法の改正に対応するための措置

 以下、上記の改正項目ごとに詳述する。

割賦販売法の改正項目の内容

加盟店管理の強化~「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」の新設~

 第一に、加盟店との間でクレジットカード番号等の取扱いを認める契約を締結する事業者(クレジットカード番号等取扱契約締結事業者)に登録を義務付ける制度を設け、当該契約を締結した販売業者に対する調査、当該調査結果に基づく必要な措置を行うこと等を義務付けることとした(改正割賦販売法35条の17の2から35条の17の14まで)。

 改正後に登録が必要となるのは以下の者である。

  1. 自ら利用者に付与するクレジットカード番号等を取り扱うことを認める契約を販売業者等との間で締結することを業とする「クレジットカード等購入あっせん業者」(上記のオンアス取引のイシュアー
  2. 特定の「クレジットカード等購入あっせん業者」のために、販売業者等との間でクレジットカード番号等を取り扱うことを認める契約を締結することを業とする者(上記のオフアス取引のアクワイアラーPSP等)

 クレジットカードの仕組みにおいては、加盟店となろうとする販売業者等との契約締結に際して、契約の取次業者なども含め様々な者が関与することがあるが、上記の登録が必要となるのは、クレジットカード番号等を取り扱うことを認める者(=加盟店契約の締結について最終的な判断権限を持つ者)であるとされている。
 そのため、個別具体的な仕組みごとに、最終的な権限を有しているのが誰になるかという個別的、実質的な判断によって、登録対象となる事業者が決定されることになる。

 なお、上記の「クレジットカード等購入あっせん業者」には「包括信用購入あっせん業者」として割賦販売法上の登録を行っている事業者(改正割賦販売法31条以下。分割払い、2回払い、ボーナス払い等の利用が可能なクレジットカードを発行する事業者をいう)のみならず、1回払いのマンスリーカードのみを発行する事業者(改正割賦販売法では「二月払購入あっせんを業とする者」と規定される)も含まれることになるから(改正割賦販売法35条の16第1項柱書)、マンスリーカードの発行者や、マンスリーカードのみを対象に決済代行事業を営む者についても、上記の登録が必要となる場合があり、留意が必要である。

 上記の登録を行った「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」は、加盟店に対する調査を行う義務を負う(改正割賦販売法35条の17の8第1項、第3項)だけでなく、当該調査の結果問題が認められた場合には、改善指導や、加盟店契約の締結拒否、解除などの必要な措置を講じることが義務付けられる(改正割賦販売法35条の17の8第2項、4項)。

加盟店におけるクレジットカード番号等のセキュリティ対策の義務付け

 第二に、改正法は、加盟店である販売業者等に対して、セキュリティ対策の義務付けを行っている
 具体的には、加盟店に対してクレジットカード番号等の適切な管理義務を課すこととし(改正割賦販売法35条の16)、併せて、クレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置を講じることを義務付けている(改正割賦販売法35条の17の15)。

 実際に、加盟店がどのような措置を講じる必要があるかについては、政省令において明確化される予定であるが、政省令においては「リスクベース」「性能規定」の考え方を前提にルール作りがなされることが予定されている。

 具体的には、クレジットカード番号等の管理義務との関係では、加盟店は、クレジットカード番号等の非保持化(加盟店におけるサーバーにおいて顧客のカード情報を保存、処理、通過させないことをいう)や、国際的な基準であるPCIDSS(Payment Card Industry Data Security Standard:国際ブランドが共通で策定した国際的な規格)への準拠が求められることになろう。

 また、不正利用防止の関係では、以下の対応などが求められることになるだろう。

  1. 対面取引におけるIC端末(カード情報を暗号化して格納したICチップを読み取ることができる機能を持ったカード決済端末。これにより磁気ストライプからカード情報を盗み取るスキミングを防止することができる)の導入
  2. 非対面取引における3Dセキュア(ネット取引におけるカード決済の際に、加盟店のサイトからイシュアーのサイトに遷移した上で、顧客本人が事前にイシュアーに登録したパスワード等を確認することにより、本人認証を行う仕組)の導入

FinTech企業のさらなる参入を見据えた環境整備

 第三にFinTechに関連する改正が行われた。FinTechとは、ITなどの新規技術を利用した金融サービス関連事業を広く含むものである。
 まず、上記の「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」として登録するためには、包括信用購入あっせん業者である必要はないため、FinTech企業がPSPとして登録を行うことも可能である。このような登録を通じて、法的位置づけを獲得し、事業拡大を図ることも念頭においた改正といえる。

 次に、カード利用時の加盟店の書面交付義務について、一定の緩和がなされた。 具体的には、現行法では加盟店は、顧客のカード利用時に、遅滞なく書面を交付する義務を課している。店舗でのカード利用時に、通常のレシートに加えて、紙片(ジャーナル)を交付されることがあるが、当該紙片がこれに該当するものである。
 改正法では、書面の交付を原則とした義務付けを再構成し、原則として情報提供義務の形を取ることとし、情報提供の手段を限定がないものとした(改正割賦販売法30条の2の3第4項。ただし、顧客が求めた場合には、書面を交付することが義務付けられる(改正割賦販売法30条の2の3第5項))。

 これにより、高価な決済端末を店舗に準備する必要がなくなる等、クレジットカード取引のコストが引き下がるため、FinTech企業による新たなサービスの領域が広がることが期待されている。

特定商取引法の改正に対応するための措置

 平成28年6月の特定商取引法の改正により、事業者側に不当な勧誘があった場合の消費者の取消権等が拡充されたことを受けて、個別信用購入あっせん(個別クレジット)に係る取引に関する規定の改正も行われている。
 具体的には、電話勧誘販売についても過量解除権が導入されたことを受けて(改正特定消費取引法24条の2)、当該販売に係る個別信用購入あっせん契約についても、過量を理由とする契約解除が認められることとされた(改正割賦販売法35条の3の12)
 また、特定商取引法の取消権の行使期間が6か月から1年に伸びたことを受けて、同様の手当てがなされている(改正割賦販売法35条の3の13第7項)。

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