ロボアドバイザーとAIファンド 現状と今後の展望

ファイナンス

ロボアドバイザーとは

近時、「ロボアドバイザー」と呼ばれるサービスが注目を集めています。「ロボアドバイザー」という用語については論者によって様々な定義がなされていますが、各業者が提供するサービスの最大公約数的な要素に着目すると、オンライン上で利用者から質問事項に対する回答を受け付け、その回答内容に即して各業者がアルゴリズムを利用して各利用者に適した形で分散された金融商品の組み合わせ(ポートフォリオ)を自動的に組成し、これを利用者に提供する仕組みであるといえます。

本稿では2回に分けて、ロボアドバイザーの法的性質と海外の規制動向について解説します。

ロボアドバイザーと称されるサービスには、大きく分けて2つの類型が見られます。ひとつは「投資助言型」サービスで、この類型では、業者は各利用者に適した金融商品のポートフォリオを提案するに止まり、提案された金融商品への投資は利用者自身が行うこととなります。もうひとつは「一任運用型」サービスで、この類型では、業者が各利用者に適した金融商品のポートフォリオを提案するに止まらず、提案した金融商品への投資も業者が利用者に代わって行うこととなります。それでは、これら2つのサービスの類型は、法令上どのように位置づけられるのでしょうか。

ロボアドバイザーの投資助言型サービスと一任運用型サービス

投資助言型サービスの金融商品取引上の位置づけ

金融商品取引法上、当事者の一方が相手方に対して、有価証券の価値等または金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し、口頭、文書その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(「投資顧問契約」という)を締結し、当該契約に基づき助言を行うことは、「投資助言・代理業」に該当し、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができないとされています(金融商品取引法29条、28条3項1号、2条8項11号)。

投資助言型サービスを提供するロボアドバイザー業者は、質問事項に対する利用者の回答内容を踏まえ、アルゴリズムを利用して各利用者に適した形で分散された金融商品のポートフォリオを組成し、これを利用者に提案することとなりますから、「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断」に関する助言を提供しているものと考えられます。

しかし、投資助言型サービスを提供するロボアドバイザー業者のうち、投資助言・代理業の登録を受けて事業を営んでいる例はほとんど見られません。その理由は、これらの業者が投資助言型サービスの対価となる報酬を受領していない点にあります。前述した「投資助言・代理業」の定義にあるとおり、投資顧問契約においては、当事者の一方が相手方に対して投資助言を提供することと、相手方がその対価として報酬を支払うことが本質的要素となりますから、対価を受領せずに投資助言を提供する行為は、「投資助言・代理業」に該当しないこととなります。

現状、投資助言型サービスは、証券会社や銀行がその取り扱う投資信託やETF(上場投資信託)を顧客に適した組合せで販売するためのツールとして活用されている例が多く見られます。つまり、証券会社や銀行としては、投資助言型サービス自体からの収益を期待するのではなく、無償で提供する投資助言型サービスに基づき販売する投資信託やETFに係る販売手数料等からの収益を期待しているものと見られます。

一任運用型サービスの金融商品取引上の位置づけ

金融商品取引法上、当事者の一方が相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部または一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約(「投資一任契約」という)を締結し、当該契約に基づき、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券またはデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金銭その他の財産の運用を行うことは、「投資運用業」に該当し、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができないとされています(金融商品取引法29条、28条4項1号、2条8項12号ロ)。

投資一任型サービスを提供するロボアドバイザー業者は、質問事項に対する利用者の回答内容を踏まえ、アルゴリズムを利用して各利用者に適した形で分散された金融商品のポートフォリオを組成、提案するに止まらず、利用者に代わって提案した有価証券等への投資も行うこととなりますから、投資運用業を行う者として内閣総理大臣の登録を受けることが必要となります。

ところで、投資運用業を行う金融商品取引業者は、原則として、その行う投資運用業(投資一任業務)に関して、顧客から金銭または有価証券の預託を受けてはならないこととされています(金融商品取引法42条の5)。

他方、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者が、有価証券等管理業務(金融商品取引法28条5項・1項5号)として顧客の金銭または有価証券の預託を受ける場合には、同法42条の5の禁止規定は適用されません。そのため、投資一任型サービスを提供するロボアドバイザー業者が利用者から金銭または有価証券の預託を受ける(言い換えれば、利用者口座を開設する)場合には、投資運用業のみならず第一種金融商品取引業の登録も受けなければならないことに留意する必要があります。

投資助言・代理業 投資運用業 第一種金融商品取引業
投資助言型サービス ×
(サービスを無償で提供
する場合)
× ×
一任運用型サービス ×
(利用者口座を開設
する場合)

AIファンドの出現

ロボアドバイザーとは別に、「AIファンド」という商品類型も最近注目を集めています。「AIファンド」には、運用財産を主としてAI関連企業の株式等に投資することを目的とするタイプの投資信託(テーマ型投信の一種であるといえます)と、資産運用アルゴリズムにAI(人工知能)を応用するタイプの投資信託が見られます。
法的性質としては、いずれも投資信託及び投資法人に関する法律に基づき設定された投資信託(金融商品取引法2条1項10号)であって、基本的に証券会社(第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者)が販売(募集の取扱い)を行うことができるものです。

以下、本稿では、資産運用アルゴリズムにAI(人工知能)を応用するタイプの投資信託をもっぱら「AIファンド」といいますが、この種のファンドは、企業の公表情報や経済ニュース等の文字情報を分析して投資対象とする個別銘柄を選択する(テキストマイニング)、過去の株価動向等をみずから学習することにより将来の市場動向を予測する(ディープラーニング)といったAI(人工知能)技術を資産運用に応用している点が特徴的です。

従来、投資信託の運用は、ポートフォリオ・マネージャーと呼ばれる「人」が担っていましたが、この類型のAIファンドでは、人力では到底処理できない膨大な分量のデータを人工知能が分析し(ビッグデータ分析)、その結果が投資判断を左右することとなりますから、今後の運用成果にどのような差異がでてくるのかが注目されます。

他方、ロボアドバイザーが提供するサービスは、AI(人工知能)を応用したものであると評価することは可能でしょうか。この点、現時点では「人工知能」という概念について統一的な定義が見当たらず、その研究対象分野も多種多様であるため評価が難しいところです。

しかしながら、現状のロボアドバイザーがアルゴリズムを利用して提供するサービスは、個々の利用者に適したものであるとはいえ、ある程度類型化されたポートフォリオを提案することに止まっており、機械による推論、学習といった最新の人工知能の技法を応用した資産運用サービスを提供するまでには至っていないのが実情ではないかと思われます。とはいえ、将来、最新の人工知能の技法を駆使して資産運用サービスを提供するロボアドバイザーが出現する可能性も否定できませんので、引き続きこの分野の進展が注目されます。

次回は、海外における規制の動向について解説します。

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