劣後特約の倒産手続における有効性と約定劣後倒産債権との関係

ファイナンス

 劣後特約の倒産手続における有効性には議論があると聞きました。どうしてでしょうか。劣後特約の内容や種類により差はありますか。

 債権者間合意方式による劣後特約は、そもそも倒産手続に影響を与えません。約定劣後倒産債権の倒産手続における有効性は、倒産法上明文で認められています。停止条件方式による劣後特約の倒産手続における効力は、議論が必ずしも整理されておらず結論も明確ではありませんが、私見としては約定劣後倒産債権と同様の結論になる場合が多いと思われます。

解説

劣後特約の種類・方式

 ファイナンス取引における複数の債権者や債務者の間では、優先劣後構造構築(参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第2回 コーポレート・ファイナンスとは?」)という観点から、複数の債権相互間の優先劣後に関する劣後特約が行われることも多いです。劣後特約はいくつかの観点から分類できます。

平時の劣後特約と倒産時の劣後特約(時間軸との関係)

  1. 平時における優先劣後関係(のみ)を規定するもの
  2. 倒産手続における優先劣後関係(のみ)を規定するもの
  3. 平時と倒産手続の区別なしに優先劣後関係を規定するもの

 ここでは上記のうち②と③を取り上げます。

特約を締結する当事者やその法律構成との関係

(1)債権者間合意方式

 優先劣後関係となる債権者間のみで合意されるものをいいます。

(2)停止条件方式

 劣後債権者と債務者の間で、優先債権者に弁済等が行われることを条件として劣後債権者に弁済を行う旨合意されるものをいいます。停止条件方式は、どのような債権に対して劣後するかにより、さらに以下の2つに分かれます。

  1. 同一の条件を付した劣後債権を除く全ての上位債権に劣後すると定めるもの全上位債権劣後型
  2. 特定の上位債権との関係のみで劣後すると定めるもの特定上位債権劣後型

(3)約定劣後倒産債権方式

 劣後債権者と債務者の間で約定劣後倒産債権(下記参照)として取り扱われる旨が合意されるものをいいます。

 なお、実務的には、債権者間合意方式と停止条件方式との組み合わせや、債権者間合意方式と約定劣後倒産債権方式の組み合わせなども頻繁に利用されます。

劣後特約の倒産手続における効力

 劣後特約の倒産手続における効力については,上記1-2(1)(2)(3)の法律構成ごとに分けて検討する必要があります。議論の便宜上、1-2(1)、(3)、(2)の順番で検討します。

債権者間合意方式

 まず、債権者間合意は倒産手続に影響を与えず、債務者の管財人等は当該合意にかかわらず劣後債権者を他の債権者と同列に扱い配当・弁済を行います。劣後債権者が倒産手続で弁済を受けた場合、当該弁済金の上位債権者への引渡は債権者間の問題になります。

約定劣後倒産債権方式

 次に、約定劣後倒産債権は、①破産手続では配当順位が劣後的破産債権に劣後し(破産法99条2項,破産法194条1項4号)、②民事再生手続では配当順位に関する合意を考慮して再生計画の内容に公正かつ衡平な差を設けることが要求され(民事再生法155条2項)、③会社更生手続では異なる種類の権利との間で権利の順位を考慮して更生計画の内容に公正かつ衡平な差を設けることが要求されます(会社更生法168条3項)。

停止条件方式

 最後に、停止条件方式の倒産手続における効力については、議論が必ずしも整理されておらず、結論も明確ではありません。以下では私見を述べます。

(1)全上位債権劣後型

 停止条件付債権のうち全上位債権劣後型については、上位債権の倒産手続開始後の利息および遅延損害金にも劣後する前提と解され、結果としてそれと同順位の全ての劣後的倒産債権に劣後することになるため、約定劣後倒産債権に該当すると解されています。

(2)特定上位債権劣後型

 これに対し、停止条件付債権のうち特定上位債権劣後型については、当該上位債権の内訳として劣後的破産債権が含まれていない場合には全上位債権劣後型には該当せず、約定劣後倒産債権とは解されません。しかしながら、停止条件付の倒産債権としては取り扱われるため、①破産手続においては、条件未成就の間になされる中間配当の際は当該債権に対する配当額の相当額が寄託され(破産法214条1項4号)、最後配当の際は除斥期間経過までに停止条件が成就しない場合は当該債権に対する配当は行われません(破産法198条2項)。そうすると、通常は条件が成就することはない(上位債権が完済されることはない)ので、停止条件付債権であっても結果として配当は受けられず、実質的には約定劣後倒産債権方式や(停止条件債権方式の)全上位債権劣後型と同じ状況になります

 ②民事再生と③会社更生手続においては、これらは条件付債権として手続開始時における評価額で議決権額が定まり(民事再生法87条1項3号ホ,会社更生法136条1項3号ホ)、再生計画・更生計画に基づく弁済がなされます(民事再生法85条1項,会社更生法47条1項)。しかしながら、やはり通常は条件が成就することはありません(手続開始時における評価として上位債権全額が完済されるだけの資産を有していない)ので手続開始時における評価額はゼロとなり、結果としては議決権を行使できません

 したがって、現行倒産法を前提とする限り、特定の債権者に対してだけ劣後するという意味での停止条件付劣後特約は、結論として約定劣後債権と同様の扱いになることが大半と思われます

まとめ:停止条件付劣後特約と約定劣後破産債権の異同

 停止条件付劣後特約と約定劣後倒産債権の異同をまとめたものが下記の図です。

【停止条件付劣後特約と約定劣後倒産債権の異同】

1.発生原因 2.劣後性(効力)
の根拠
3.劣後性の生じる
場面(時点)
4.劣後性を主張
できる相手方
5.劣後の相手方
劣後債権 劣後特約
(契約)
当事者の合意
(停止条件)
合意による:
①平常時のみ
②平常時+倒産時
劣後特約の
当事者のみ(※)
(債権の相対性)
特定の優先債権者
のみ(※)
約定劣後
倒産債権
約定劣後倒産
債権とする合意
(契約)
倒産法 倒産時のみ 全ての関係当事者 優先する全て
の倒産者

(※)ただし、停止条件付債権のうち 全上位債権劣後型については、上記2-3(1)記載の理由により、結果的に約定劣後倒産債権に該当するとの解釈が存在します。特定上位債権劣後型の倒産手続における効力については、議論が必ずしも整理されておらず、結論も明確ではありません。

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