金融アンバンドリングとは

ファイナンス

 最近フィンテックやEUの金融規制(第2次金融商品市場指令・MiFID II)などでアンバンドリングという言葉をよく聞きますが、これはどのような意味でしょうか。また、以前から証券化やデリバティブでもアンバンドリングという言葉が使用されていますが、これらは同じ意味でしょうか。

 アンバンドリング(unbundling)とは、直訳すれば「分解する(ばらばらにする)」という意味です。金融アンバンドリングには、①投資リスクのアンバンドリングと②金融機能のアンバンドリングがあり、デリバティブは前者(①)、証券化、フィンテック、MiFID IIにおけるリサーチ・アンバンドリングなどは後者(②)と関係します。金融アンバンドリングにより、従来存在しなかった金融商品やサービスが実現できるようになり、また伝統的に金融機関が果たしてきた金融機能や金融制度の構造にも大きな影響を与えています。

解説

金融アンバンドリングとは

 金融アンバンドリングとは、(投資)リスクまたは金融仲介機能を分解(アンバンドリング)することをいいます。分解後の諸要素を再結合すること再結合(リバンドリング)といいます。

 金融アンバンドリングの具体的内容や種類は論者により若干異なりますが、ここでは①投資リスクのアンバンドリングと②金融機能のアンバンドリングの2種類が存在するものと整理します。

投資リスクの分解(アンバンドリング)

 投資リスクの分解(アンバンドリング)とは、伝統的な金融商品では不可分一体だった各種投資リスクが分解され、分解後のリスクまたはそれらを再結合(リバンドリング)したもの(金融商品)が独立して取引されることをいいます。
 投資リスクのアンバンドリングの代表例は、金利リスクや為替リスクなどを分解して取引を行うデリバティブです。

金融機能の分解(アンバンドリング)

 以下では、まず金融機能の意味を概観し、その後金融機能のアンバンドリングの説明を行います。

金融機能とは

 伝統的金融論においては、銀行を代表とする金融仲介機関は、伝統的には、以下のような金融機能を一括して提供してきたと説明されます。

(1)金融仲介機能

 金融仲介機能とは、最終資金調達者と最終資金提供者の間の資金の融通を仲介する機能をいいます。

 金融仲介機能は、さらに(i)資金提供機能最終資金調達者に資金を提供する機能)、(ii)信用リスク負担機能最終資金調達者の信用リスクを自ら負担する機能)、(iii)資産変換機能ある資産の経済的価値を維持したまま、法形式としては別の資産に変換する機能)、(iv)情報生産機能信用リスクや経営状況にかかわる分析・判断・監視を行う情報生産を提供する機能)に分類されます。

 このうち(iii)の資産変換機能は、さらに①流動性変換機能流動性の低い資産の経済価値を、流動性の高い資産の法形式に変換する機能)、②満期変換機能またはキャッシュフロー変換機能最終的な投資対象/資産と直接的な投資対象/資産である金融商品の間に満期またはキャッシュフローのタイムラグが存在する場合、最終投資対象のキャッシュフローを金融商品のキャッシュフローに変換する機能)、③取引単位変換機能投資対象の単位(大きさ)と投資手段となる金融商品の単位(大きさ)を変換する機能)に分かれます。

(2)資金決済機能

 資金決済機能とは、資金の決済に関する金融サービスを提供する機能をいいます。

(3)まとめ

 以上をまとめたものが下記の図です。

【金融機能の分類】

(1)金融仲介機能 (i)資金提供機能
(ii)信用リスク負担機能
(iii)資産変換機能 ①流動性変換機能

②満期変換機能(キャッシュフロー変換機能)

③取引単位変換機能
(iv)情報生産機能
(2)資金決済機能

金融機能の分解(アンバンドリング)

(1)金融機能の分解(アンバンドリング)とその具体例

 金融機能の分解(アンバンドリング)とは、伝統的に金融機関が不可分一体のものとして提供してきた金融機能が分解され、特定の機能に特化した金融機関などが分解後の各金融機能を独立して提供することをいいます。
 金融機能のアンバンドリングの代表例としては、以下のようなものがあげられます。

  1. 証券化を中心とするストラクチャード・ファイナンス:下記3-2(2)参照
     (参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは?」)

  2. 投資ファンド
     (参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第4回 アセット・マネジメントとは?」)

  3. フィンテック
     フィンテック(fintech)金融(finance)とIT(technology)が融合したものですが、金融技術の観点からは、フィンテックで提供される新たな金融サービスは、金融機能のアンバンドリングにより実現可能となったものです。たとえば、①人工知能(AI)による与信審査や投資アドバイスは情報生産機能のアンバンドリングの具体例であり、②モバイル決済資金決済機能のアンバンドリングの具体例です。

  4. MiFID IIにおけるリサーチ・アンバンドリング
     EUの金融規制である第2次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive: MiFID II)においては、手数料透明化のため、リサーチ対価・費用取引執行対価・費用を区別する規制リサーチ・アンバンドリング)が導入されています。これも金融機能のアンバンドリングの具体例です。

(2)金融機能の分解(アンバンドリング)の具体的事例:証券化を題材として

 下記の図は、ある経済学者が証券化(資産担保証券)の基本構造という観点から金融機能の分解を説明したものです。

【金融機能分解の例:証券化(資産担保証券)の基本構造】

図1:経済主体別に見た場合

経済主体別に見た場合

出典:岡部光明『環境変化と日本の金融 バブル崩壊・情報技術革新・公共政策』(日本評論社、1999)の図をもとに筆者が作成

図2:機能別に見た場合

機能別に見た場合

出典:岡部光明『環境変化と日本の金融 バブル崩壊・情報技術革新・公共政策』(日本評論社、1999)の図をもとに筆者が作成

 図1は、経済主体別に、それぞれが行う業務(金融機能)を示したものです。図2は、銀行による伝統的な信用供与との比較において、図1の各経済主体がどのような金融機能を果たしているかを示したものです。図2の上下を比較した場合、従来銀行が一括して提供していた各種金融機能が分解され、各種金融機関SPC投資家などに分解後の各機能が移転されていることがよく理解できます

 なお、分解後の機能を提供する格付機関販売業者などは、第三債務者のリスクを負担することなく、手数料により収益を上げるフィービジネスを行うことになります

まとめ

 上記のように、金融技術の進歩により(金融)アンバンドリングが可能となりました。これとリーガル・エンジニアリングを組み合わせることにより、従来存在しなかった金融商品やサービスを組成することが可能となり、また伝統的に金融機関が果たしてきた金融機能や金融制度の構造にも大きな影響を与えています(参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第1回 ファイナンス法とは?」)。

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