クロスボーダー・ファイナンス(国際金融)法務で必要となる基礎知識

ファイナンス

 クロスボーダー・ファイナンスとは何ですか。クロスボーダー・ファイナンスの法務ではどのような基礎知識が必要となりますか。

 クロスボーダー・ファイナンスとは、当事者、行為地、資金/資産や法律などが国際性を有するファイナンスをいいます。クロスボーダー・ファイナンスの法務では、国際私法と国際民事訴訟法に関する基礎的な理解が不可欠となります。また、最近の実務では、域外適用を含む国際金融規制(法)が重要となる場面が増えています。

解説

クロスボーダー・ファイナンスとその法務

クロスボーダー・ファイナンスとは

 国際金融(取引)またはクロスボーダー・ファイナンス(取引)に関する明確な定義は存在しませんが、ここでは①その関係当事者(保護法益)、②行為地(場所)、③関連する資金や資産、④適用ある法律、会計または税務の全部または一部が、本質的な部分において国際性を有するファイナンス(取引)をいうと定義します。

クロスボーダー・ファイナンスの2つの類型

 ここでは理解の便宜の観点から、①外国から日本に対するキャッシュフローの向きで資金調達や投資が行われる取引インバウンド取引、②日本から外国に対するキャッシュフローの向きで資金調達や投資が行われる取引アウトバウンド取引と呼ぶことにします。下記はこれらのイメージを示したものです。

【インバウンド取引とアウトバウンド取引(イメージ)】

インバウンド取引とアウトバウンド取引(イメージ)

 インバウンド取引の具体例としては、外国企業による国内不動産、国内ファンド、日本企業が日本国内外で発行する株式や社債に対する投資などがあげられます。アウトバウンド取引の具体例としては、日本企業による外国不動産、外国ファンド、外国企業が日本国内外で発行する株式や社債に対する投資などがあげられます。

国際金融法の基礎

 国際金融法とは、クロスボーダー・ファイナンスに関連する金融法をいいます。国際金融法は、理論的には、①国際金融取引に関する国際金融取引法と、②国際的な金融規制に関する国際金融規制法またはグローバル金融規制(法)に分類できます。

国際金融取引法

 国際金融取引法では、個々のクロスボーダー・ファイナンス取引の種類に応じて様々な法律(私法)が関係します。ここでは、全てのクロスボーダー・ファイナンスで必要となる基本的な法律知識として、国際私法と国際民事訴訟法の概要をまとめます。

国際私法

 国際私法とは、狭義では国際的な私的生活関係(渉外的私法関係)に対してどの国の法律を適用するか(準拠法)を決定する法(法選択規則をいい、広義では国際民事訴訟法を含みます。日本における狭義の国際私法は、法の適用に関する通則法です。準拠法を決定するためには、以下のような一連の複雑なプロセスを経る必要があります。

(1)法律関係の性質決定

 法律関係の性質決定とは、問題となる渉外的私法関係が、特定の単位法律関係(準拠法を指定する単位となる法律関係)に含まれるかどうかを判断することをいいます。

(2)連結点の確定

 連結点の確定とは、当該単位法律関係において設定される連結点(単位法律関係を特定の国家に連結するための構成要素)が、具体的にはどの国を指示しているかを判断することをいいます。

(3)準拠法の特定

 準拠法の特定とは、単位法律関係と連結点によって準拠法を特定できない例外的場合に準拠法を特定することをいいます。

(4)準拠法の適用

 準拠法の適用とは、準拠法が外国法である場合、その適用結果が公序に反しないかどうかを判断することをいいます。

国際民事訴訟法

 国際民事訴訟法とは、国際民事事件の手続的な側面を規律する法律をいいます。代表的論点としては、①国際裁判管轄どの国の裁判所が国際民事事件を裁判できるかという問題)、②主権免除国の行為や財産が外国の裁判所の裁判権から免除されること)、③送達手続の有効性、④外国法の証明などが存在します。このうち国際裁判管轄においては、外国の裁判所を専属的な管轄裁判所とする合意専属的国際裁判管轄合意)の有効性などが問題となります。国際裁判管轄合意の有効性は、従来は判例の解釈に基づいて判断されていましたが、平成23年の民事訴訟法改正により立法的に解決されました。
 なお、裁判によらない国際的紛争案件の解決手段としては国際仲裁などがあります。

国際紛争案件における判断フロー

 下記は、国際的紛争案件における国際私法と国際民事訴訟法の判断フローのおおまかなイメージと代表的論点を示したものです。

【国際私法と国際民事訴訟法の判断フロー(イメージ)】

国際私法と国際民事訴訟法の判断フロー(イメージ)

出典:廣江健司『国際民事関係法』(成文堂、2008)の表をもとに筆者が作成

国際金融規制法

国際的な共通ルール

 国際的な共通ルールとして設定された金融規制の具体例としては、国際的な活動を行う銀行の自己資本比率に関するバーゼル規制(BIS規制)などがあげられます。

各種金融規制の域外適用

 域外適用とは、ある国の金融規制(法)がどのような範囲と条件で他国における行為(属地的観点)や他国の当事者(属人的観点)に適用されるかという問題をいいます。各種金融規制の域外適用には、さらに日本の金融規制の域外適用と外国の金融規制の域外適用という以下2つの問題があります。

(1)日本の金融規制の域外適用

 日本の金融規制の域外適用が問題となる代表例としては、以下のような問題があげられます。

  1. 外国企業が外国から日本企業にローンを実行する場合にも貸金業法は適用されるか
  2. 日本企業が外国企業にローンを実行する場合にも利息制限法は適用されるか
  3. 日本の投資家に対する勧誘の一切が外国で行われた場合にも金融商品取引法(金商法)上の開示規制(参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第5回 金融規制法」)は適用されるか

 これらは代表例な論点ですが、未だ結論が明確ではない難しい問題です。

(2)外国の金融規制の域外適用

 外国の金融規制の域外適用が問題となる代表例としては、米国のドット・フランク法に基づく金融規制、EUのMiFID II(第2次金融商品市場指令)に基づく金融規制などがあげられます。

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