前払式の決済サービスへ参入する場合に留意するべき資金決済に関する規制

ファイナンス

 決済サービスの普及が進む中、利用者から事業者が金銭を事前に受け取ったうえでその後の決済に利用することができるサービスが多数登場しているようですが、当社がこのようなサービスへの参入を検討する場合に資金決済に関する規制に関して留意すべき事項はありますか。

 利用者から決済のための金銭を決済の前に受領するサービスについては、自家型と第三者型の違いを判断したうえで、資金決済法に基づき前払式支払手段発行者としての登録または届出の手続を実施する必要があります。前払式支払手段発行者として決済サービスを提供する場合、表示義務または情報提供義務、資産保全義務を中心とした各種規制に対応することが求められます。

解説

前払式支払手段とは

 利用者から事業者が金銭を事前に受け取ったうえでその後の決済に利用することができるサービスについては、利用者が金銭を事業者に決済の前に支払うという決済サービスの特性を考慮して、一義的には、資金決済法に基づく前払式支払手段として規制の適用を受けることになります。

 この前払式支払手段のうち、一般的な電子マネーのように利用した分だけ残高が減少するものについては、「証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法…に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号…であって、その発行する者…から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの」と定義されています(資金決済法3条1項1号)。

前払式支払手段発行者のライセンス

 1で述べた前払式支払手段に関するサービスを提供する主体は、資金決済法上の「発行者」とされ、発行者以外の加盟店で利用することができるサービス(第三者型前払式支払手段)の提供については、第三者型発行者としての登録が必要となります(資金決済法7条)。この場合、発行者は、加盟店の管理を実施することも求められます。

第三者型前払式支払手段

 また、発行者が自ら提供する商品やサービスにのみ利用できる前払式支払手段(自家型前払式支払手段)については、サービスの対象となる商品や役務が発行者の提供する商品やサービスに限られていることを踏まえ、登録制ではなく、届出制が採用されています(資金決済法5条1項)

自家型前払式支払手段

 登録制と届出制とではライセンス取得の難易度が異なりますので、前払式支払手段のサービスへの参入を検討する事業者としては、自社が開始しようとするサービスに関し、いずれの方向で進めるかについて当初から検討しておくべきです。
 なお、前払式支払手段への資金決済法の適用については法令において一定の場面における適用除外が規定されています。そのうちの一つのルールとして、6か月を超えない有効期間を定めた前払式支払手段については、資金決済法の各種のルールの適用が除外される枠組みが設けられています(資金決済法4条2号および資金決済法施行令4条2項)。想定するサービスの内容によっては、かかる適用除外の枠組みも意識したうえで検討することが選択肢となります。  

前払式支払手段発行者の規制のポイント① - 表示義務または情報提供義務

 前払式支払手段発行者については、利用者が決済に必要な金銭を前払いするという特性を踏まえ、利用者保護のための各種の規制が設けられています。そのうち、実務上重要な行為規制としては、①表示義務または情報提供義務、②発行保証金に関する資産保全義務があります。
 このうち、①表示義務または情報提供義務は、前払式支払手段発行者が前払式支払手段を発行する場合に利用者に法定の事項を表示または情報提供するというルールです。想定されるサービスの内容に即して、券面やウェブサイト等において必要な情報を表示または情報提供する必要があり、システム開発等に影響するトピックとなりますので、サービス導入に際しては当初から検討項目として意識しておくべき事項となります。
 なお、表示義務または情報提供義務については、平成28年に成立して平成29年から施行された資金決済法の施行により、ウェアラブル端末等を想定して一種の緩和措置が採用されていますので、サービスの内容によっては、かかるルールも把握して検討することが有益です。

前払式支払手段発行者の規制のポイント② - 資産保全義務

 次に、②資産保全義務に関し、前払式支払手段発行者は、利用者から決済に利用するための金銭を前払いで受領することになりますので、発行者が倒産した場合であっても、一定範囲で利用者保護を実現するため、受領した金銭を保全するために所要の措置を講じることが求められます。
 具体的な保全方法としては、①供託、②発行保証金保全契約、③発行保証金信託契約の3種類の方法があります。

 ①供託は、基準日未使用残高の2分の1の額に相当する額以上の発行保証金を前払式支払手段発行者が主たる営業所または事務所の最寄りの供託所に供託する方法です(資金決済法14条
 次に、②発行保証金保全契約は、前払式支払手段発行者が、一定の健全性基準を満たす銀行等との間で所定の事由が生じた場合において発行保証金を供託する旨の契約を締結する方法です(資金決済法15条。銀行等との契約によって資産保全を実行することができ、平時におけるキャッシュアウトを回避することができます。
 ③発行保証金信託契約は、第三者型発行者が、信託会社等との間で、信託財産を発行保証金の供託に充てることを信託の目的として当該信託財産の管理その他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の信託契約を締結する方法です(資金決済法16条。信託した金銭の取扱いについて個別具体的にその内容を定めることが可能ですので、柔軟な形での資産保全を達成することができます。

まとめ

 利用者から決済のための金銭を決済の前に受領するサービスにおいては、事業者は、利用者から受領した金銭の取扱いを巡って所定のルールに対応することが必要となります。なお、第三者型前払式支払手段を発行する場合、加盟店の管理も求められることになります。

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