不動産証券化、航空機ファイナンス、シップファイナンスとアセット・ファイナンス

ファイナンス

 アセット・ファイナンスとは何ですか。アセット・ファイナンスにはどのような種類の取引がありますか。

 アセット・ファイナンスとは、特定の資産およびそこから生じるキャッシュフローを責任財産とするファイナンス手法です。アセット・ファイナンスには各種取引がありますが、代表的なものとしては、不動産証券化、航空機ファイナンス、船舶(シップ)ファイナンスなどがあります。

解説

アセット・ファイナンスとは

 アセット・ファイナンスとは、特定の資産およびそこから生じるキャッシュフローを責任財産とするファイナンス手法です。アセット・ファイナンスは、一般的には、特定の資産のみを責任財産とし、オリジネーターやスポンサーなどに訴求できないノンリコース・ファイナンスの一種です。(狭義の)アセット・ファイナンスでは、ノンリコース・ファイナンスを実現するための法技術として、特定の財産の移転先としてSPVが利用されます。SPVは、アセットに対する投資家の投資資金の受け皿であるファンドの構成要素ともなります。

 参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは?

 以下、各種アセット・ファイナンスの具体例についてご紹介します。

不動産証券化

 証券化(Securitization)とは、資産を保有する者(オリジネーター)が、特定の資産保有を目的とする別の主体(SPV)を設立して、そこに当該資産を移転してその資産が生み出す将来のキャッシュフローを原資に資金調達を行う過程をいいます。本稿ではその代表例として、私募ファンド形式の不動産証券化を取り上げます。

 不動産証券化とは、対象資産が不動産である証券化をいいます。不動産証券化には複数のストラクチャーが存在しますが、【図1】はGK-TKスキームと呼ばれるストラクチャーの一例を、キャッシュフローに関する部分のみを抜き出して示したものです。

【図1:GK-TKスキーム】

GK-TKスキーム

 【図1】において、(倒産隔離のため)中立性を有する一般社団法人などを親会社としてSPCである合同会社(GK)が設立されます。

 SPCは、レンダーからの借り入れ(ローン)とスポンサーによる匿名組合出資(TK)により資金調達を行います。また、オリジネーターとの間で不動産(信託受益権)売買契約を締結した上で、調達資金を利用して不動産(受益権)を取得し、テナント契約(賃貸借契約)に基づき、不動産をテナント(賃借人)に直接または間接に賃貸し、不動産からの収益(賃料)を確保します。さらに、不動産からの運用収益(賃料)と当該不動産の売却代金等を原資として、レンダーに対するローンの弁済を行い、その後の余剰金をスポンサーに配当・償還します。

 SPCとして合同会社を利用する理由のひとつは、会社更生法が適用されることによりレンダーの権利行使が制限されるリスクを回避するためです。エクイティ投資として匿名組合出資を利用するのは、主として二重課税排除の観点と有限責任性を確保するためです。資金調達額が大きい場合、優先劣後構造を設定しメザニンとして劣後ローンを利用することも多いです(参照:実務Q&A「メザニン・ファイナンスにおけるメザニン(劣後)ローンのポイント」)。エクイティ投資家は、デット(ローン)を併用することによりレバレッジ効果を利用した投資ができます。

 なお、実際のGK-TKスキームにおいては、GKに対して各種フィービジネスを提供する金融機関などが存在します。代表的なものとしては、投資運用に関するサービスを提供するアセット・マネージャー(AM)、不動産の信託を受託する信託銀行、不動産の物理的な管理や運用を行うプロパティ・マネージャー(PM)などがあります。

航空機ファイナンス

 航空機ファイナンスとは、航空機の調達またはこれに対する投資のためのファイナンスをいいます。

 航空機ファイナンスには、①航空会社が自らローンで資金調達して航空機を購入する手法(コーポレート・ファイナンス)もありますが、実務的には②航空会社がSPCからのリースにより航空機を調達する手法も多く、後者は一般的にアセット・ファイナンスとして整理されています。実務的には、ファイナンスリースの場合には航空会社に対するコーポレート・ファイナンスの性質が強い場合も多いです。【図2】はJOLCO(Japanese Operating Lease with Call Option)と呼ばれるストラクチャーの一例を示したものです。

【図2:JOLCO(Japanese Operating Lease with Call Option)】

JOLCO(Japanese Operation Lease with Call Option)

 【図2】において、リース会社はSPC(株式会社または合同会社)を設立し、その有限責任の出資者となります。

 SPCは、レンダーからの借り入れ(ローン)とエクイティ投資家による出資(株式と匿名組合出資)により資金調達を行い、航空機製造会社との間で航空機売買契約を締結した上、調達資金を利用して航空機を取得します。

 SPC(レッサー)は、リース契約に基づき、航空機をその実際の運用を行う航空会社(レッシー)にリースし、航空機からの収益(リース料)を確保します。そして、SPCは、航空機からの運用収益(リース料)と当該航空機の売却代金(コール・オプション(Call Option)または第三者売却)等を原資として、レンダーに対するローンの弁済を行い、その後の余剰金をエクイティ投資家に配当・償還します。

船舶(シップ)ファイナンス

 船舶(シップ)ファイナンスとは、船舶の調達またはこれに対する投資のためのファイナンスをいいます。

 船舶ファイナンスは、理論的には①船会社が自ら資金調達して船舶を購入する手法(コーポレート・ファイナンス)もありますが、実務的には②船会社がSPCを通じて船舶を購入する手法も多く存在し、後者は一般的にアセット・ファイナンスとして整理されています。実務的には、船会社による保証を通じた船会社に対するコーポレート・ファイナンスの性質が強い場合も多いです。【図3】は便宜置籍船を利用したシップファイナンスのストラクチャーの一例を示したものです。

【図3:便宜置籍船スキーム】

便宜置籍船スキーム

 【図3】において、船会社はSPC(パナマ法人)を設立し、その有限責任の出資者となります。

 SPCは、レンダーからの借り入れ(ローン)とエクイティ投資家である船会社による出資(株式または持分出資)により資金調達を行い、造船所との間で船舶建造契約を締結した上、調達資金を利用して船舶を取得します。

 船主SPCは、傭船契約に基づき、船舶をその実際の運用を行う傭船者(オペレーター)傭船し、船舶からの収益(傭船料)を確保します。また、船舶からの運用収益(傭船料)と当該船舶の売却代金等を原資として、レンダーに対するローンの弁済を行い、その後の余剰金をエクイティ投資家である船会社に配当・償還します。

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