仮想通貨取引所サービスへ参入する場合に留意するべき資金決済に関する規制

ファイナンス

 仮想通貨の売買や交換を行うことができる取引所のサービスが最近話題になっているようですが、当社がこのようなサービスへの参入を検討する場合に留意すべき資金決済に関する規制にはどのようなものがありますか。

 仮想通貨の売買や交換を目的とするサービスについては、資金決済法に基づき仮想通貨交換業者としての登録の手続を実施する必要があります。また、一定の場合には、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認(取引時確認)も実施することが求められます。そして、仮想通貨交換業者には、法令上の各種の義務が課されることになりますが、特に、分別管理義務への対応が重要な論点となります。

解説

仮想通貨交換業とは

 事業者が利用者に仮想通貨の売買や交換を目的とするサービスを提供する場合、仮想通貨を取り扱うというサービスの特性を考慮して、資金決済法に基づく仮想通貨交換業としての規制の適用を受けることになります。

 この仮想通貨交換業については、「次に掲げる行為のいずれかを業として行うこと」とされており、具体的には、以下に掲げる行為のいずれかを業として行うこととされています(資金決済法2条7項)。

  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換(以下「仮想通貨の交換等」といいます)
  2. ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
  3. その行う①②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること

 以上のとおり、事業者が上記①から③までの行為を行う場合、仮想通貨交換業者のライセンスを取得することが必要となりますので、たとえば、仮想通貨の売買や交換を実施する場合、仮想通貨交換業の登録を取得することが求められます。ここで、上記③については、上記①②に掲げる行為に関するものに限定されていますので、実務上の線引きを考えるに際しては、まずは①または②の行為の有無を確認することが重要です。

 また、②において、「媒介、取次ぎ又は代理」といった行為も含まれていることから、自ら仮想通貨の売買や交換の当事者とならない場合(たとえば、仮想通貨の売買の媒介のみを行うようなケース)においても、仮想通貨交換業の登録を要する結論となることには留意が必要です。

 なお、金融庁事務ガイドライン(仮想通貨交換業者関係)I-1-2)において、仮想通貨交換業の該当性に関する行政当局の考え方のポイントが示されており、併せて取り扱う仮想通貨の適切性についての説明等が求められることも示されていますので、仮想通貨の売買や交換を目的とするサービスを検討する際には併せて確認しておくことが有益です。

 また、2017年4月の改正資金決済法施行前から仮想通貨の取引所を運営していた企業は、仮想通貨交換業の登録申請書が受理されている場合、法令上の経過措置により、仮想通貨交換業者とみなされ、当面は、仮想通貨交換業を実施できます。このような業者は一般には「みなし仮想通貨交換業者」と言われています。

仮想通貨とは

 1で述べた仮想通貨交換業に関するサービスを提供する主体は、資金決済法上の仮想通貨交換業者としての登録が必要となります(資金決済法63条の2)。

 ここで、仮想通貨交換業者の登録の要否の一つのポイントとなるのは「仮想通貨」の概念となります。資金決済法において、仮想通貨とは、以下のとおり定義されています(資金決済法2条5項)。

  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
  2. 不特定の者を相手方として①に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 そのため、実務上、仮想通貨交換業の登録を要するかどうかは、サービスにおいて取り扱う対象となる電子情報等に関し、不特定の者に対して使用することができるか、不特定の者を相手方として購入および売却できるか、通貨建資産に該当することがないか等について、上記の定義に照らして個別具体的に検討することが求められます。

 法令上の定義からはどのようなものが仮想通貨に該当するかは必ずしも明確ではありませんが、不特定の者との間において使用や購入等の蓋然性があるものは広く仮想通貨に該当し得るものと考えられますので留意が必要です。

 なお、金融庁事務ガイドライン(仮想通貨交換業者関係)I-1-1)において、仮想通貨の範囲および該当性の判断基準に関する行政当局の考え方のポイントが示されていますので併せて確認しておくことが有益です。

仮想通貨交換業の規制のポイント①-取引時確認

 仮想通貨交換業者は、犯罪収益移転防止法に基づき、本人確認(取引時確認)が求められる事業者に該当することから(犯罪収益移転防止法2条2項31号)、本人確認(取引時確認)を行う義務や疑わしい取引の届出を行う義務を負うことになります。

 具体的には、以下の場合(特定取引)に本人確認(取引時確認)が必要となります。

本人確認(取引時確認)が必要な場合 根拠
①仮想通貨の交換等を継続的にもしくは反復して行うことまたは上記1の③に掲げる行為を行うことを内容とする契約の締結 犯罪収益移転防止法施行令7条1項1号ヨ
②仮想通貨の交換等であって、当該仮想通貨の交換等に係る仮想通貨の価額が200万円を超えるもの 犯罪収益移転防止法施行令7条1項1号タ
③仮想通貨交換業に関し管理する顧客等の仮想通貨を当該顧客等の依頼に基づいて移転させる行為(仮想通貨の交換等に伴うものを除く)であって、当該移転に係る仮想通貨の価額が10万円を超えるもの 犯罪収益移転防止法施行令7条1項1号レ

 特に、①については、アカウントや取引口座のようにIDやパスワードを付与することを前提とした会員登録を行うケースなどが基本的には特定取引に該当することになりますので、多くのサービスで本人確認(取引時確認)が必要となり、この点が実務上の参入に向けた一つのハードルになります。

仮想通貨交換業者の規制のポイント②-分別管理義務

 仮想通貨交換業者は、「その行う仮想通貨交換業に関して、内閣府令で定めるところにより、仮想通貨交換業の利用者の金銭又は仮想通貨を自己の金銭又は仮想通貨と分別して管理しなければならない」ものとされています(資金決済法63条の11第1項)。この義務は、一般に分別管理と呼ばれ、仮想通貨交換業を遂行するうえで実務上非常に重要な対応となります。

利用者の金銭について

 まず、利用者の金銭(一般的には日本円が想定されています)については、以下のいずれかによって分別管理を実施する必要があります(仮想通貨交換業者に関する内閣府令20条1項)。

  1. 預金銀行等への預金又は貯金(当該金銭であることがその名義により明らかなものに限る。)
  2. 信託業務を営む金融機関等への金銭信託で元本補塡の契約のあるもの

 ①については、口座名義等について金融機関等とあらかじめ調整し、②については、元本補填を含む信託契約の内容を信託銀行等とあらかじめ調整することが求められます。

利用者の仮想通貨について

 次に、利用者の仮想通貨については、以下の方法による分別管理が求められます(仮想通貨交換業者に関する内閣府令20条2項)。

  1. 仮想通貨交換業者が自己で管理する仮想通貨
    利用者の仮想通貨と自己の固有財産である仮想通貨とを明確に区分し、かつ、当該利用者の仮想通貨についてどの利用者の仮想通貨であるかが直ちに判別できる状態(当該利用者の仮想通貨に係る各利用者の数量が自己の帳簿により直ちに判別できる状態を含む)で管理する方法
  2. 仮想通貨交換業者が第三者をして管理させる仮想通貨
    当該第三者において、利用者の仮想通貨と自己の固有財産である仮想通貨とを明確に区分させ、かつ、当該利用者の仮想通貨についてどの利用者の仮想通貨であるかが直ちに判別できる状態で管理させる方法

 この点に関しては、たとえば、金融庁事務ガイドライン(仮想通貨交換業者関係)Ⅱ-2-2-2-2)において、以下のとおり実務対応の着眼点が示されており、参考になります。

③利用者の仮想通貨の管理について、仮想通貨交換業者が管理する帳簿上の利用者財産の残高と、ブロックチェーン等のネットワーク上の利用者財産の有高を毎営業日照合しているか。また、照合した結果、利用者財産の有高が帳簿上の利用者財産の残高に満たない場合には、原因の分析を行った上、速やかに当該不足額を解消しているか。


⑥仮想通貨の分別管理については、自社の仮想通貨を管理・処分するために必要な暗号鍵等と、利用者の仮想通貨を管理・処分するために必要な暗号鍵等の保管場所を明確に区分して保管しているか。
例えば、暗号鍵等を保管するためのコンピュータやUSBメモリー等を明確に区分することが考えられる。


⑦利用者の仮想通貨について、利用者の利便性等を損なわない範囲で、可能な限り、仮想通貨を管理・処分するために必要な暗号鍵等をインターネット等の外部のネットワークに接続されていない環境で管理しているか。

 昨今の様々な情勢等を勘案すれば、上記の分別管理の具体的な内容に関して登録申請の際により慎重な検討を求められる可能性も高く、ガバナンスやシステムの観点も含め、実効的な対応を事前に十分に検討しておくことも重要になるでしょう。

 さらに、上記の分別管理については、「定期に、公認会計士は又は監査法人の監査を受けなければならない」ものとされていますので(資金決済法63条の11第2項)、実務上は、監査法人等と連携した対応も求められます。

まとめ

 仮想通貨の売買や交換を目的とするサービスについては、昨今、各所において大きな話題となっていますが、コンプライアンスという観点からは、いずれにせよ、利用者保護を正面から見据えたうえで、法令等の要請を踏まえた適切な対応を実施することが重要です。特に、分別管理の在り方については、仮想通貨の仕組みやウォレットの管理のあり方などの仮想通貨固有の問題がありますので、取り扱う仮想通貨の特性等を踏まえた検討も必要となります。

 また、本稿であげた以外にも情報提供等の各種の法令上の義務も定められていますので、登録申請に際しては、法令上の義務を全て把握したうえで社内規程等を整備することも求められます。  

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