再生可能エネルギー・プロジェクトとプロジェクト・ファイナンス

ファイナンス

 プロジェクト・ファイナンスとは何ですか。再生可能エネルギー・プロジェクト・ファイナンスはどのような仕組みで行われますか。

 プロジェクト・ファイナンスとは、特定のプロジェクト(事業)およびそこから生じるキャッシュフローを責任財産とするファイナンス手法です。プロジェクト・ファイナンスには各種取引がありますが、代表的なものとしては、再生可能エネルギー・プロジェクト・ファイナンスがあります。

解説

プロジェクト・ファイナンスとは

 プロジェクト・ファイナンスとは、①特定のプロジェクト(事業)に対するファイナンスであって、②そのファイナンスの利払いおよび返済の原資を当該プロジェクト(事業)から生み出されるキャッシュフロー/収益に限定し、③そのファイナンスの担保をもっぱら当該プロジェクトの資産に依拠して行うファイナンス手法です。
 プロジェクト・ファイナンスは、理念的には、特定のプロジェクト(事業)およびそこから生じるキャッシュフローのみを責任財産とし、スポンサーに訴求できないノンリコース・ファイナンスの一種です。

 プロジェクト・ファイナンスでは、ノンリコース・ファイナンスを実現するための法技術として、特定のプロジェクト(事業)の帰属先にSPVが利用されます。SPVは、プロジェクト(事業)に対する投資家の投資資金の受け皿であるファンドの構成要素ともなります。

 参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第3回 ストラクチャード・ファイナンス / アセット・ファイナンスとは?

 以下では、日本におけるプロジェクト・ファイナンスの代表例である再生可能エネルギー・プロジェクト・ファイナンスについて、太陽光発電プロジェクトを具体例としてご紹介します。  

スキーム概要

 太陽光発電プロジェクト・ファイナンスのスキーム図の一例は下記の通りです。

【図:太陽光発電プロジェクト・ファイナンス】

太陽光発電プロジェクト・ファイナンス

 図において、(倒産隔離のため)中立性を有する一般社団法人を親会社としてSPCであるプロジェクト・カンパニーが合同会社(GK)として設立されます。
 プロジェクト・カンパニーは、① デットについてはレンダーからの借り入れ(ローン)、②エクイティについてはスポンサーからの出資(株式 / 持分出資、匿名組合(TK)出資)により資金調達を行います。

 プロジェクト・カンパニーは、調達資金を利用して、プロジェクト関係当事者との間でプロジェクト関連契約(下記4)を締結します。また、プロジェクト関連契約に基づき、必要な資産や原料を調達してプロジェクト(事業)を行い、プロジェクト(事業)からの収益を確保します。さらに、プロジェクト(事業)からの収益を原資として、レンダーに対するローンの弁済を行い、その後の余剰金をスポンサーに配当・償還します。

 SPCとして合同会社を利用する理由のひとつは、会社更生法が適用されることによりレンダーの権利行使が制限されるリスクを回避するためです。エクイティ投資として匿名組合出資を利用するのは、主として二重課税排除の観点と有限責任性を確保するためです。資金調達額が大きい場合、優先劣後構造を設定しメザニンとして劣後ローンを利用することも多いです(参照:実務Q&A「メザニン・ファイナンスにおけるメザニン(劣後)ローンのポイント」)。エクイティ投資家は、デット(ローン)を併用することによりレバレッジ効果を利用した投資ができます。

プロジェクト・ファイナンスの特徴

独立プロジェクト型

 プロジェクト・ファイナンスは、広義のストラクチャード・ファイナンスの類型との関係では、アセット・ファイナンス(参照:実務Q&A「不動産証券化、航空機ファイナンス、シップファイナンスとアセット・ファイナンス」)のようにSPVに投資対象資産を移転する手法(移転型)ではなく、SPV自身が投資対象事業を開始する手法(独立プロジェクト型)である点に特徴があります。  

SPCの倒産隔離 / 中立性の程度

 不動産証券化などの典型的なアセット・ファイナンスでは、SPCの倒産隔離 / 中立性を徹底させるため、SPCの法人形態としては GK、SPCの親会社は中立性を有する一般社団法人とすることが一般的です。

 他方、プロジェクト・ファイナンスでは、①アセット・ファイナンスと同様の仕組みの場合もあれば(前記2の図など)、②SPCの法人形態としては株式会社(KK)、SPCの親会社はスポンサー自身である場合も存在します。プロジェクト・ファイナンスにおけるSPCの倒産隔離 / 中立性の程度は、個別の案件や仕組みにより異なる点に特徴があります。

全資産担保の原則

 プロジェクト・ファイナンスは、理念的には特定のプロジェクト(事業)およびそこから生じるキャッシュフローのみを責任財産とすることから、レンダーはプロジェクトに関連するすべての資産に担保を設定するのが原則となります(全資産担保の原則)。

スポンサーの責任の範囲

 プロジェクト・ファイナンスは、①理念的には特定のプロジェクト(事業)およびそこから生じるキャッシュフローのみを責任財産とするノンリコース・ファイナンスですが、②実務的には、一定限度でスポンサーに対する遡及(リコース)も可能なリミテッドリコース・ファイナンスである場合も多いです。リミテッドリコースの場合、スポンサーとの間でスポンサーサポート契約が締結されます。

プロジェクト関連契約と関連当事者

 プロジェクト・ファイナンスでは、プロジェクト・カンパニーは実際に事業(プロジェクト)を行うため、事業(プロジェクト)に関連する各種の契約(プロジェクト関連契約)およびこれに関連する各種の当事者が存在します。プロジェクト関連契約と関係当事者の代表例としては以下のようなものがあります。

オフテイク契約

 プロジェクト・カンパニーが生産製品を販売する相手方オフテイカーといい、プロジェクト・カンパニーとオフテイカーとの間で締結される生産製品販売に関する契約オフテイク契約といいます。太陽光発電プロジェクトの場合、オフテイカーは電気事業者、オフテイク契約は電力受給(購入)契約 / PPA (Power Purchase Agreement)となります。

EPC契約

 プロジェクト施設を設計・調達・建設する請負業者EPC業者(EPCコントラクター)といい、プロジェクト・カンパニーとオフテイカーとの間で締結されるプロジェクト施設の設計・調達・建設に関する契約EPC(Engineering, Procurement and Construction)契約といいます。

O&M契約

 プロジェクトの運営・維持を行うオペレーターO&M業者(O&Mオペレーター)といい、プロジェクト・カンパニーとO&M業者(O&Mオペレーター)との間で締結されるプロジェクトの運営・維持に関する契約O&M(Operation and Maintenance)契約といいます。

その他

 上記以外のプロジェクト関連契約としては、保険契約借地契約などがあります。

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