ICOを行うにあたって法律上必要な登録等について

ファイナンス

 ICOで資金調達を行うにあたって、法律上必要な登録等はあるのでしょうか。

 現状の行政解釈では、ICOで発行されるトークンも資金決済法上の「仮想通貨」に該当するものとされていますので、ICOによって、ビットコインやイーサリアムを調達する場合、「仮想通貨交換業」の登録を取得して実施するか、登録を受けた者を介して実施する場合を除いて、ICOは実施できないものと考えられます。
 さらに、日本国内で集団投資スキームの募集または私募を行う場合は、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります。

解説

 人から財産的価値を集めるといった行為については、種々の金融規制が課されているところであり、しっかりと規制を理解しておく必要があります。検討すべき論点としては、資金決済法金融商品取引法があります。

ICOの実施にあたり「仮想通貨交換業」の登録は必要か

 平成29年4月1日に施行された改正資金決済法により、新たに「仮想通貨交換業」(資金決済法2条7項)という概念が追加され、内閣総理大臣の登録を得なければ当該業務を行えなくなりました(資金決済法63条の2)。登録が必要となる「仮想通貨交換業」とは、以下の行為を行うものと定義されていますが(資金決済法2条7項)、ICOを行うにあたって、「仮想通貨交換業」の登録が必要かどうかが問題になります。

① 仮想通貨の売買または他の仮想通貨との交換
② ①に掲げる行為の媒介、取次ぎまたは代理
③ その行う①②に掲げる行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること

 結論から言えば、ICOにより発行するトークンは、現状の行政解釈のもとでは、1号「仮想通貨」に該当するものとされています。

 ICOの際に発行されるトークンは、発行段階では、これを使って「物品を購入」したり、「役務の提供」を受けるために「不特定の者に対して使用することができ」(資金決済法2条5項1号。いわゆる1号仮想通貨)ないはずですし、このトークンを他の仮想通貨に交換することもできないように思えます(資金決済法2条5項2号。いわゆる2号仮想通貨)。

1号仮想通貨
(資金決済法2条5項1号)
トークンが、物品を購入したり、役務の提供を受けるために、不特定の者に対して使用できるもの
2号仮想通貨
(資金決済法2条5項2号)
トークンが、不特定の者を相手方として1号仮想通貨と相互に交換を行うことができるもの

 しかし、現状の行政解釈では、「不特定の者に対して使用することができ」とは、将来的に「使用することができ」れば、要件に該当するものと考えられています。したがって、現状の資金決済法のもとでは、ICOで新規発行するトークンは、1号仮想通貨に該当することになりますので、トークンの発行に基づいて、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨を調達することは、仮想通貨と仮想通貨を交換することになるため、仮想通貨交換業の登録を取得して実施するか、登録を受けた者を介して実施する場合を除いて実施できないものとされています。

ICOの実施にあたり「前払式支払手段発行者」として届出または登録が必要か

 トークンが、「前払式支払手段」(資金決済法3条1項)に該当する場合には、以下のとおり、資金決済法上の規制が及ぶ可能性があるため、この点が問題となります。

トークンの内容 規制の可能性
「自家型前払式支払手段」(資金決済法3条4項)
  • 発行している前払式支払手段の未使用残高(前払式支払手段の総発行額-総回収額)が3月末あるいは9月末において、1,000万円を超えたときは、内閣総理大臣への届出が必要(資金決済法5条)
  • 3月末あるいは9月末において、発行している前払式支払手段の未使用残高が1,000万円を超えたときは、その未使用残高の2分の1以上の額に相当する額を最寄りの供託所に供託する必要(発行保証金の供託、資金決済法14条)
「第三者型前払式支払手段」(資金決済法3条5項)
  • 発行前に内閣総理大臣の登録を受ける必要(資金決済法7条)
  • 発行保証金の供託については上記と同様

 この点については、 パブリックコメントのNo90の「仮想通貨が同時に前払式支払手段に該当する、ということはない、という理解でよいか」との質問に対し、「資金決済法上の前払式支払手段は、仮想通貨には該当しません」との回答が金融庁よりなされているため、ICOの新規発行トークンが同時に「前払式支払手段」に該当することはないと考えられます。  

ICOの実施にあたり「第二種金融商品取引業」の登録は必要か

 ICOを行うにあたっては、いわゆるファンド規制にも注意しなければなりません。日本国内で、集団投資スキームの募集または私募を行う場合、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります(金融商品取引法2条8項7号ヘ、2条2項5号、28条2項1号)。要するに、発行者の営業のために、出資をした結果、その営業から生じた利益を分配するといった場合には、金商法上の集団投資スキームの募集または私募に対する規制と同様の規制が及ぶことになります。

 金融商品取引法の規制は「金銭」を出資することを想定して作られていますが、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨を用いて払込みをしたとしても、当該払込は、ただちに金銭に変換され得るので、実質的には、「金銭」の払込みと同視でき、規制の必要性は変わりません。したがって、仮想通貨を払込んだからといって、いわゆるファンド規制を潜脱はできないと考えるのが相当です。

 したがって、ICOを行うにあたっては、トークンの発行者が行った事業の利益を、トークンを購入した人に分配するといった設計にしないように注意する必要があります

金融商品取引法第2条
2 前項第一号から第十五号までに掲げる有価証券、同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)及び同項第十八号に掲げる有価証券に表示されるべき権利並びに同項第十六号に掲げる有価証券、同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)及び同項第十九号から第二十一号までに掲げる有価証券であつて内閣府令で定めるものに表示されるべき権利(以下この項及び次項において「有価証券表示権利」と総称する。)は、有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されていない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし、電子記録債権(電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。以下この項において同じ。)のうち、流通性その他の事情を勘案し、社債券その他の前項各号に掲げる有価証券とみなすことが必要と認められるものとして政令で定めるもの(第七号及び次項において「特定電子記録債権」という。)は、当該電子記録債権を当該有価証券とみなし、次に掲げる権利は、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして、この法律の規定を適用する。
五 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)
イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利
ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利(イに掲げる権利を除く。)
ハ 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項に規定する保険業を行う者が保険者となる保険契約、農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第十号に規定する事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)第十条第二項に規定する共済事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第十一号、第九十三条第一項第六号の二若しくは第百条の二第一項第一号に規定する事業を行う同法第二条に規定する組合と締結した共済契約、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の二第七項に規定する共済事業を行う同法第三条に規定する組合と締結した共済契約又は不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約(同条第七項に規定する特例事業者と締結したものを除く。)に基づく権利(イ及びロに掲げる権利を除く。)
ニ イからハまでに掲げるもののほか、当該権利を有価証券とみなさなくても公益又は出資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定める権利
六 外国の法令に基づく権利であつて、前号に掲げる権利に類するもの
8 この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為(その内容等を勘案し、投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるもの及び銀行、優先出資法第二条第一項に規定する協同組織金融機関(以下「協同組織金融機関」という。)その他政令で定める金融機関が行う第十二号、第十四号、第十五号又は第二十八条第八項各号に掲げるものを除く。)のいずれかを業として行うことをいう。
七 有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
イ 第一項第十号に規定する投資信託の受益証券のうち、投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する委託者指図型投資信託の受益権に係るもの
ロ 第一項第十号に規定する外国投資信託の受益証券
ハ 第一項第十六号に掲げる有価証券
ニ 第一項第十七号に掲げる有価証券のうち、同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するもの
ホ イ若しくはロに掲げる有価証券に表示されるべき権利又はハ若しくはニに掲げる有価証券のうち内閣府令で定めるものに表示されるべき権利であつて、第二項の規定により有価証券とみなされるもの
ヘ 第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
ト イからヘまでに掲げるもののほか、政令で定める有価証券
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