リスク低減措置としての「取引モニタリング・フィルタリング」

ファイナンス

 マネー・ローンダリング、テロ資金供与対策における、「取引モニタリング・フィルタリング」について教えてください。

 「取引モニタリング」とは、異常取引の検知等を通じてリスクを低減させる手法をいい、「取引フィルタリング」とは、制裁対象取引等の検知等を通じてリスクを低減させる手法をいいます。

解説

取引モニタリング・フィルタリングの意義・対応が求められる事項

 リスク低減措置の実効性を確保する手段としては、個々の顧客に着目する顧客管理のほかにも、取引そのものに着目し、金融機関等における取引状況の分析、異常取引や制裁対象取引の検知等を通じてリスクを低減させる手法があり、金融機関等においては、これらを組み合わせて実施し、リスク低減措置の実効性を高めていくことが有効です(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(以下、「AML/CFTガイドライン」)II-2(3) (iii))。

 そこで、金融機関等は、「取引類型に係る自らのリスク評価も踏まえながら、個々の取引について、異常取引や制裁対象取引を検知するために適切な取引モニタリング・フィルタリングを実施すること」が「対応が求められる事項」とされています。
 AML/CFTガイドラインにおける「取引モニタリング」とは、異常取引の検知等を通じてリスクを低減させる手法をいい、「取引フィルタリング」とは、制裁対象取引等の検知等を通じてリスクを低減させる手法をいいます。

 FATF勧告10(顧客管理)の解釈ノートは、「明白な経済的又は法的目的のない、全ての複雑で、異常に規模の大きくかつ異常なパターンの取引について、金融機関は合理的に可能な限り、その背景や目的を精査すべきである。」として、複雑な大口取引や異常な取引に対するモニタリングが必要であるとしています。

 バーゼル委員会のコア・プリンシプルにおいても「原則29:金融サービスの濫用」の必須基準のうち、銀行グループ全体が備えるべきCDD管理プログラムの基本要素の1つとして、「通常とは異なるまたは潜在的に疑わしい取引を監視および把握するための方針と手続」が必要であるとしています。

「取引モニタリング」「取引フィルタリング」を実施する最終的な目的は、金融機関等に義務づけられている「疑わしい取引の届出」を適切に行うため、マネロン・テロ資金供与に関与する疑いのある取引を洗い出すことです。

取引モニタリングシステム

 取引モニタリングは、①金融機関の職員が抽出する方法と②システム(ソフトウェア)により検知する方法があります。挙動不審などの定性的な情報は金融機関の職員、一定の基準に基づく定量的な判断はシステムが得意とするところです。
 「取引モニタリングシステム」は、口座・取引単位、顧客単位の振る舞いに着目して、ある種のロジックにより、当局に届け出るべき「疑わしい取引」の可能性の高い取引を抽出し、「アラート」を発するためのシステムです。

 疑わしい取引の参考事例や自行・自社の過去の疑わしい取引の届出事例を参照して、金額XX円、YY回以上など「ルールベース」の検知ロジックを組み込みます。たとえば、「ある種の顧客の一群が月10回送金するところ30回送金している場合」(ピアー・プロファイリング)や「同一顧客が平均月10回送金するところ30回送金している場合」(ヒストリカル・プロファイリング)がアラートとして発されることになります。

取引フィルタリングシステム

 「取引フィルタリングシステム」は、反社リスト、制裁者リストなどと照合するシステムのことです。

 我が国の資産凍結リストや米国のOFAC-SDNリストのように、法令上取引を行うことが禁じられた者との取引を意図せずに行わないために照合する。PEPsのシステムなどもあります。

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