リスクベース・アプローチに基づく海外送金を行う場合の留意点

ファイナンス

 マネー・ローンダリング、テロ資金供与対策において、海外送金を行う場合の留意点について教えてください。

 自らまたは他の金融機関等を通じて海外送金等を行う場合、外為法をはじめとする海外送金等に係る国内外の法規制等に則り、関係国等の制裁リストとの照合等の必要な措置を講ずることは当然求められます。
 海外送金等の業務は、国内に影響範囲がとどまる業務とは異なるリスクに直面していることに特に留意が必要です。また、リスクの相違のほか、外国当局の動向や国際的な議論にも配慮したうえで、リスクの特定・評価・低減を的確に行う必要があります。
 金融機関等がコルレス契約を締結していたり、他の金融機関等による海外送金等を契約により受託等していたりするような場合には、契約の相手方におけるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を適切に監視することが求められます。金融機関等には、コルレス先や業務委託先に対して、自らのリスク管理態勢や低減措置等の状況を適切に説明することが必要となる場面も考えられます。

解説

海外送金を行う場合の留意点(AML/CFTガイドラインII-2(4))

 自らまたは他の金融機関等を通じて海外送金等を行う場合に、外為法をはじめとする海外送金等に係る国内外の法規制等に則り、関係国等の制裁リストとの照合等の必要な措置を講ずることは、もとより当然です。
 また、海外送金等の業務は、取引相手に対して自らの監視が及びにくいなど、国内に影響範囲がとどまる業務とは異なるリスクに直面していることに特に留意が必要です。金融機関等においては、こうしたリスクの相違のほか、外国当局の動向や国際的な議論にも配慮したうえで、リスクの特定・評価・低減を的確に行う必要があります。

 金融機関等がコルレス契約を締結していたり、他の金融機関等による海外送金等を契約により受託等していたりするような場合には、マネロン・テロ資金供与リスクの低減措置の実効性は、これらの契約の相手方のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢に拠らざるを得ない面があり、金融機関等においては、これらの契約の相手方におけるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を適切に監視することが求められます。

 また、金融機関等には、コルレス先や業務委託先に対して、自らのリスク管理態勢や低減措置等の状況を適切に説明することが必要となる場面も考えられます。

犯収法に基づくコルレス先の管理

コルレス契約締結時の厳格な確認(犯収法9条)

 銀行などの特定事業者が、海外の銀行などの外国所在為替取引業者との間で、コルレス契約(為替取引を継続的にまたは反復して行うことを内容とする契約)を締結するに際しては、次に掲げる事項を確認しなければなりません。

  1. 法4条(取引時確認)、6条(確認記録の作成義務)、7条(取引記録の作成義務)、8条(疑わしい取引の届出)、10条(外国為替取引に係る通知義務)の規定による措置に相当する措置(「取引時確認等相当措置」)の実施を統括管理する者を当該コルレス先の所在する国または当該所在する国以外の外国に置き、かつ、取引時確認等相当措置の実施に関し、当該所在する国または当該外国の機関の適切な監督を受けている状態にあることで定める基準に適合する体制を整備していること(犯収法9条1号、犯収法施行規則29条)。
  2. 当該外国所在為替取引業者が、業として為替取引を行う者であって監督を受けている状態にないものとの間で為替取引を継続的にまたは反復して行うことを内容とする契約を締結していないこと(犯収法9条2号)。これは、コルレス先がシェルバンクでないか確認をすることを求めるものである。

 上記①、②については、コルレス先から申告を受ける方法またはコルレス先または外国の所管行政庁によりインターネットを利用して公衆の閲覧に供されている当該コルレス先に係る情報を閲覧して確認することとされています(犯収法施行規則28条)。確認方法には、Accuity社のBankers Almanacなどのインターネット上のデータベースに当該コルレス先が掲示しているWolfsbergのQuestionaire等の回答内容を確認する方法も含まれます。

コルレス先と取引を行う際の体制整備(犯収法11条、犯収法施行規則32条4項)

 金融機関等は、コルレス先と取引を行う際の体制として、以下の体制整備を講ずることが求められます。犯収法上はこれらの体制整備は、努力義務ですが、AML/CFTガイドラインと同時に改正された監督指針により、態勢整備として義務化されました。

  1. コルレス先における犯罪による収益の移転防止に係る体制の整備の状況、当該コルレス先の営業の実態および行政庁の職務に相当する職務を行う当該外国の機関が当該外国の法令の規定に基づき、当該コルレス先に必要な措置をとるべきことを命じているかどうかその他の当該外国の機関が当該コルレス先に対して行う監督の実態について情報を収集すること(犯収法施行規則32条4項1号)。
  2. 上記①で収集した情報に基づき、当該コルレス先の犯罪による収益の移転防止に係る体制を評価すること(犯収法施行規則32条4項2号)。
  3. 統括管理者の承認その他の契約の締結に係る審査の手順を定めた規程を作成すること(犯収法施行規則32条4項3号)。
  4. 特定金融機関が行う取引時確認等の措置およびコルレス先が行う取引時確認等相当措置の実施に係る責任に関する事項を文書その他の方法により明確にすること(犯収法施行規則32条4項4号)。

監督指針

 コルレス契約について、犯収法9条、11条及び犯収法施行規則28条、32条並びにAML/CFTガイドラインに基づき、以下の態勢を整備することが求められます(中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅱ-3-1-3-1-2(1))。従前は努力義務でしたが、監督指針の改正により、態勢整備について義務化されました。

  1. コルレス先の顧客基盤、業務内容、テロ資金供与やマネー・ローンダリングを防止するための体制整備の状況及び現地における監督当局の当該コルレス先に対する監督体制等について情報収集し、コルレス先を適正に評価した上で、統括管理者による承認を含め、コルレス契約の締結・継続を適切に審査・判断すること。
  2. コルレス先とのテロ資金供与やマネー・ローンダリングの防止に関する責任分担について文書化する等して明確にすること。
  3. コルレス先が営業実態のない架空銀行(いわゆるシェルバンク)でないこと、及びコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用させないことについて確認すること。また、確認の結果、コルレス先が架空銀行であった場合またはコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用されることを許容していた場合、当該コルレス先との契約の締結・継続を遮断すること。

 上記②の「責任分担の文書化」に関して、コルレス契約の当事者それぞれの責任分担を確認できるのであれば、「文書化する等」の具体的方法には様々なものが考えられ、必ずしもコルレス契約の当事者双方で作成する文書において責任分担を明示する方法のみに限られるものではありません。

対応が求められる事項

 AML/CFTガイドラインは、海外送金を行う場合に、以下を「対応が求められる事項」として掲げています(AML/CFTガイドラインII-2(4))。

  1. 海外送金等をマネロン・テロ資金供与対策におけるリスクベース・アプローチの枠組みの下で位置付け、リスクベース・アプローチに基づく必要な措置を講ずること
  2. 海外送金等のリスクを送金先等の金融機関等が認識できるよう、仕向・中継金融機関等が、送金人及び受取人の情報を国際的な標準も踏まえて中継・被仕向金融機関等に伝達し、当該金融機関等は、こうした情報が欠落している場合等にリスクに応じた措置を講ずることを検討すること
  3. 自ら海外送金等を行うためにコルレス契約を締結する場合には、犯収法第9条、第11 条及び同法施行規則第28 条、第32 条に掲げる措置を実施するほか、コルレス先におけるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を確認するための態勢を整備し、定期的に監視すること
  4. コルレス先が架空銀行であった場合またはコルレス先がその保有する口座を架空銀行に利用されることを許容していた場合、当該コルレス先との契約の締結・維持をしないこと
  5. 他の金融機関等による海外送金等を受託等している金融機関等においては、当該他の金融機関等による海外送金等に係る取引時確認等をはじめとするマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢等を監視すること
  6. 他の金融機関等に海外送金等を委託等する場合においても、当該海外送金等を自らのマネロン・テロ資金供与対策におけるリスクベース・アプローチの枠組みの下で位置付け、リスクの特定・評価・低減の措置を着実に実行すること

 上記②の「リスクに応じた措置を講ずること」とは、たとえば、送金人や受取人の情報が欠如した海外送金等について、取引実行前に仕向金融機関等に対して、欠如した情報の内容を確認すること等が考えられます。

 コルレス先のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の確認方法(上記③)に関して、たとえば、金融機関等の本店によるコルレス先の評価を援用する方法については、当該評価における評価項目として、在日拠点において考慮すべきコルレス先のリスクが考慮されていない場合には、ただちにこれを援用することはできず、本店とは別に、在日拠点においても、コルレス先のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を確認することが求められます。

 また、他行支店のコルレス先のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の確認については、他行本店または当該グループのウェブサイトを確認することのみではコルレス先のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を適切に評価することができない場合には、追加で確認することが求められます。

 コルレス契約締結先の態勢の確認・監視(上記③)について、定期的に監視する方法としては、Bankers' AlmanacやWolfsberg等の質問票を利用することのほか、コルレス先に対して、定期的に質問票を送付し、コルレス先におけるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を確認することが考えられます。

 コルレス先のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を定期的に監視する頻度(上記③)については、コルレス先のリスク等に応じて、個別具体的に判断されることになります。
 上記⑤、⑥については、委託元金融機関等が、受託金融機関等が他の金融機関等と締結しているコルレス契約を利用して、取引を実行する場合も該当するものであり、たとえば、国際的な業務を行う金融機関等が、国際的な業務が限定的な委託元金融機関等の顧客に係る海外送金等を取り扱っている場合等も想定されます。

 「他の金融機関等による海外送金等を受託等している金融機関等」(上記⑤)も、対象の取引に関して、当然に犯収法に基づく疑わしい取引の届出義務を負います。「他の金融機関等による海外送金等を受託等している金融機関等」(上記⑤)が、疑わしい取引の該当性について検討・判断する為に、委託元金融機関等との間で該当の顧客・取引に関する情報を共有することは、犯収法8条3項(内報の禁止)に抵触しません。

 「監視」(上記⑤)の具体的方法については、定期的に質問票を送付して確認する方法や訪問して確認する方法も含まれ得るものですが、受託金融機関等においては、委託元金融機関等におけるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の不備は自らのマネロン・テロ資金供与リスクに直結するものであることを踏まえ、委託業務の範囲や、委託元金融機関等の管理態勢の整備状況等に応じて、的確に判断する必要があります。  

対応が期待される事項

 AML/CFTガイドラインは、海外送金を行う場合に、以下の事項について「対応が期待される事項」としています。

 様々なコルレス先について、所在する国・地域、顧客属性、業務内容、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢、現地当局の監督等を踏まえた上でリスク格付を行い、リスクの高低に応じて定期的な監視の頻度等に差異を設けること

先進的な取組み事例

 AML/CFTガイドラインは、海外送金を行う場合について、以下の「先進的な取組み事例」を紹介しています。

 コルレス先管理について、コルレス先へ訪問してマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢をヒアリングするほか、場合によっては現地当局を往訪するなどの方法も含め、書面による調査に加えて、実地調査等を通じたより詳細な実態把握を行い、この結果を踏まえ、精緻なコルレス先のリスク格付を実施し、コルレス先管理の実効性の向上を図っている事例。

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