著作権侵害のトラブルにはどう対応するべきか

知的財産権・エンタメ

 当社商品のパッケージで使用したイラストについて、SNS上に「あのゲームのキャラクターとそっくり」「著作権侵害ではないか」という投稿が複数存在することが判明しました。特に有名なゲームではないのですが、確認したところ確かに問題のイラストと似たキャラクターが登場しています。会社としてはどのように対処したら良いでしょうか。

 自社パッケージのイラストと指摘されているキャラクターを比較検討して類似性の程度を確認する一方、自社パッケージの制作者に対して制作過程の確認をしましょう。得られた情報を元に、著作権侵害が成立する可能性を検討し、関係部署と連携の上で対処方法を検討します。SNSなどの「炎上」を防ぐためには、迅速かつ戦略的な対応が不可欠です。

解説

 最近、著作権侵害を巡るトラブルは、このような形で発覚することが多くなっています。トラブルの対処方法に唯一の「正解」というものはなく、個々の事案ごとに様々な事情を考慮しながら対応していくしかありません。

最初に調査すべき項目

 「著作権侵害ではないか」という疑いがある場合は、少なくとも、対応の第一歩として、似ているとされている対象作品を調査する必要があるでしょう。その他にも、対象作品が著作物なのか著作権者は誰かという点は最初に確認するべきです。対象作品が著作物である場合、自社のパッケージが、対象作品の創作性がある部分にどの程度類似しているのか検討することになります。詳しい判断基準については「著作権侵害の判断基準(デザインの「パクリ」を題材に)」を参照してください。

 また、「著作権侵害の判断基準(デザインの「パクリ」を題材に)」でも述べているように、著作権侵害が成立するためには、同一性類似性に加えて、対象作品を参考にしたこと(依拠性)が要求されます(「江差追分事件」最高裁平成13年6月28日判決)。

 したがって、類似性の程度を確認すると同時に、自社パッケージのデザイナーにデザインの制作過程について確認することも必要となります。社内のデザイナーであれば事情聴取は容易だと思いますが、外部のデザイン事務所等に外注していた場合は、事実の確認に手間取る可能性があります。

 一般論として、トラブルの存在が公になってしまった場合、当事者の方から正確な情報を迅速に公表していくことが、問題解決にとって有益な場合が多いと思われます。制作過程に関する情報収集を容易にするため、制作ノートや日々の成果物を記録に残すようにデザイナーに義務付けておくことも、対応策の1つになるでしょう。

著作権侵害が成立する可能性が高い場合

 著作権侵害が成立する可能性が高い場合、権利者から著作権侵害を理由とする使用の差し止めや損害賠償の請求を受ける可能性があります。
 もっとも、いきなり裁判所から訴状が届くケースは多くありません。多くの場合、訴訟になる前に、まずは権利者から連絡があります。第一段階として通常のビジネス文書やメールの形式で連絡があり、その後も事態が解決に向けて進まない場合には、第二段階として会社名または弁護士名で内容証明郵便が来るケースが多いですが、いきなり内容証明郵便が来るパターンもあります。

 権利者から著作権侵害を指摘する連絡があった場合は、上記のような調査をし、迅速に対応する必要があります。弁護士名で内容証明郵便が送られてきていなくても、権利者が弁護士等の専門家と相談した上でアクションを起こしている可能性は十分にあるので注意してください。権利者からの最初のコンタクトに対して不用意な回答をしたために自社が不利な立場に置かれる、という事態を避けるためにも、不安があれば専門家に相談することも検討してください。

相手から連絡が来ていない場合

 対応が悩ましいのは、SNS等で著作権侵害の可能性を指摘され、調査の結果著作権侵害の疑いが高まったものの、権利者からは何も連絡が来ていない段階です。

 この時点で会社がとるべき対応として、権利者から連絡が来るまで待つ、何も言わずにデザインを差し替える等の選択肢の他に、こちらから権利者に連絡をとって和解を試みる方法もあります。もちろんそれによって権利者から請求が来て、いわばヤブヘビになる可能性はありますが、権利者から見た場合の印象は良いでしょう。たとえば、現在使用しているイラストを即時に変更することが困難であり、できれば相手方の了承を得て一定期間使用を継続したいと考えているのであれば、敢えてこちらからアプローチすることも検討すべきです。このように、自社の状況に応じて、長期的・多角的な観点から対応を検討することをお勧めします。

著作権侵害の可能性が低い場合

 第三者の作品の創作的な部分と自社パッケージのイラストが類似するとはいえない場合、著作権侵害という意味ではリスクは低いといえます。ネット上の反応は一過性のものも多いため、沈黙を貫いて事態の鎮静化を待つという選択肢もあるでしょう。
 しかしながら、昨今の「パクリ」をめぐる騒動を見ると分かるように、ネット上で一度炎上してしまうと、著作権侵害の可能性は低いという結論があっても問題が解決するとは限りません。著作権侵害の可能性を的確に分析した上で、ビジネス上の判断としてどのように対応すべきか、戦略的な判断が求められているといえるでしょう。

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