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ストレスチェックの実施義務と実施対象者はどのように判断すればよいか

人事労務
百田 博太郎弁護士
  1. 当社のA店舗には計55名のスタッフが勤務していますが、そのうち契約社員、パートおよびアルバイトが30名で、正社員は25名のみです。A店舗ではストレスチェックを実施する義務があるのでしょうか。
  2. また、A店舗で勤務するのが、正社員25名に加えて派遣従業員30名である場合には、どうでしょうか。
  3. さらに、上記①または②において、A店舗でストレスチェックを実施する義務がある場合、A店舗で勤務するスタッフの全員に対してストレスチェックを実施する義務があるのでしょうか。

 ストレスチェックの実施義務は、まず、事業場を単位として、その人的規模に応じて判断されます。その上で、実施義務がある事業場において、実際、どの社員を対象にストレスチェックを実施する義務があるかは、個々の社員の属性に応じた別の基準により判断されます。
 ①および②の場合、正社員、契約社員、パート、アルバイトまたは派遣従業員等、雇用形態の如何を問わず、A店舗において常態として50人以上のスタッフを使用しているのであれば、A店舗ではストレスチェックの実施義務があります。「常態として使用する」の意義については「解説」で後述します。
 ③については、上記①および②のいずれの場合も、正社員25名についてストレスチェックを実施する義務がありますが、契約社員、パートやアルバイトについては、その雇用の継続性や労働時間に応じた基準に照らして判定されます。また、そもそも派遣従業員については、派遣先の事業場(A店舗)において、ストレスチェックを実施する義務はありません。

ストレスチェックの実施義務

解説

ストレスチェックの実施義務

 常時使用する労働者が50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施が義務ですが(労働安全衛生法66条の10)、50人未満の事業場では当分の間は努力義務にとどめられました(労働安全衛生法附則4条)。

「事業場」とは

 この「事業場」とは、工場、事務所、店舗等のように、一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいい(昭和47年9月18日発基第91号通達)、原則として場所的観念によって決定されるため、各支店や各店舗はそれぞれ1つの事業場とされます。例えば、本社と支店A、支店Bはそれぞれ別の事業場です。
 それぞれの事業場において、ストレスチェックの実施義務があるか否かは、産業医を選任する義務がある事業場であるか否か(労働安全衛生法13条1項)と同じく、当該事業所において「常時使用する労働者」が50人以上か否かで決まります(労働安全衛生法施行令5条)。

ストレスチェックの実施義務を判定する際の「常時使用する労働者」とは

 「常時使用する労働者」とは、その雇用形態にかかわらず、契約社員、パート、アルバイト等を含めて、常態として使用する労働者の数を指します。

 この「常態として50人以上使用する」の意義については、当該事業場において繁忙期のみ50人以上使用し、通常はその事業場に50人未満の労働者しかいない場合であればこれに該当しませんが、使用する労働者が一時的に50人未満となることがあっても通常は50人以上を使用していればこれに該当すると解されています (なお、法文上、このストレスチェックの実施義務がある事業場の範囲を画する際の「常時使用する労働者」と同じ文言が、ストレスチェックの実施対象者の範囲を画するためにも使われていますが(労働安全衛生規則52条の9)、後記2のとおり、その判断方法が異なるので注意が必要です(厚生労働省「ストレスチェック制度Q&A」(以下「SC制度Q&A」といいます)Q0-13)))。

設例の検討

 したがって、設例の①のように、正社員は50人未満で、契約社員、パートやアルバイトを合わせて50人以上になるという事業場であっても、当該事業場(A店舗)において、全ての労働者を合わせて常態として50人以上の労働者がいるのであれば、当該事業場(A店舗)ではストレスチェックを実施する義務があることになります。
 同様に、設例の②についても、派遣従業員を加えて、当該事業場(A店舗)において常態として使用する労働者が50人以上いるのであれば、当該事業場(A店舗)ではストレスチェックの実施義務があります。

ストレスチェックの実施対象者

 ストレスチェックは、「常時使用する労働者」に対し実施しなければならないとされていますが(労働安全衛生規則52条の9)、ここでいう「常時使用する労働者」は、先ほどの、事業場としてストレスチェック実施義務があるか否かを判定する際の「常時使用する労働者」とは異なります。ストレスチェックの実施対象者としての「常時使用する労働者」とは、以下のa)およびb)の両方の要件を満たす者とされています(平成27年5月1日基発0501第3号通達(以下「SC通達」といいます))。
 これは、定期健康診断の実施対象者を画する基準と同じです。

a) 期間の定めのない労働契約により使用される者、または、期間の定めのある労働契約により使用され、次のいずれかを満たす者
契約期間が1年以上である者
契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
1年以上引き続き使用されている者

b) 1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること

(1) アルバイト、パートの場合

 したがって、上記a)およびb)を満たすのであれば、契約社員、アルバイトやパートであっても、ストレスチェックの実施対象者となります。

(2) 派遣労働者の場合

 派遣労働者の場合には、労働契約関係が派遣元との間にあるため、派遣元事業者がストレスチェック等を実施することとされています(厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下「SC指針」といいます))。したがって、設例の③では、派遣先の事業場であるA店舗において、派遣労働者に対しストレスチェックを実施する義務はありません。

 また、努力義務とされる集団ごとの集計・分析(労働安全衛生規則52条の14)については、職場単位で実施することが重要であることから、派遣先事業場においても派遣労働者も含めてストレスチェック結果の集団分析をすることが望ましいとされています(SC指針)。
 そのため、結局のところ、派遣先の事業場(設例でいうA店舗)においても、派遣労働者に対しストレスチェックを実施することが望ましいこととなります。この場合、派遣労働者は、派遣元と派遣先の両方でストレスチェックを受検することになるので、事業者としては、その趣旨を十分に説明することや、必要に応じ、派遣元と派遣先が連携して適切に対応する必要があります。

 とはいえ、派遣先の事業場において実施するストレスチェックは、集団分析のために行うものであるため、通常の個人対応の場合と異なる方法によることができます。すなわち、(ア)無記名で行うことや、(イ)「仕事のストレス判定図」を用いる際に集団分析に必要な「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」についてのみ検査を行うなどの方法で実施することが考えられます(厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)」(以下「SCマニュアル改訂版」といいます))。

(3) その他(海外勤務者、出向者等)

 海外赴任者については、海外の現地法人に雇用されているか、日本企業からの長期出張かによって異なります。すなわち、前者であれば日本法の適用がないため、ストレスチェックの実施義務はありませんが、後者の場合にはストレスチェックの実施対象者となります。
 出向の場合は、派遣とは異なり、出向先との間にも労働契約関係があります。移籍出向の場合には、出向元との労働契約関係が終了しているため、出向先がストレスチェックを実施することになりますが、在籍出向の場合には、出向元との間にも労働契約関係があるため、指揮命令権、賃金の支払い等労働関係の実態を総合的に勘案して判断することになります(SC制度Q&A・Q0-8)。
 また、病気などで休職中の労働者については、ストレスチェックを実施しなくても差し支えないものとされています(SCマニュアル改訂版)。

 なお、これまで述べきたことをまとめたものが、以下の表です。

表 ストレスチェックの実施対象となる者

類型 ストレスチェック実施対象
アルバイト・パート 上記a)およびb)の要件を満たすのであれば、実施対象となる。
派遣労働者 上記a)およびb)の要件を満たす場合、
・派遣元では、実施対象となる。
・派遣先では、実施対象とすることが望ましい(集団分析のため)。
海外勤務者 ・海外の現地法人に雇用されている場合、実施対象とならない。
・日本企業からの長期出張の場合、上記a)およびb)の要件を満たすのであれば、実施対象となる。
出向者 上記a)およびb)の要件を満たす場合、
・移籍出向の場合、出向先では、実施対象となる。
・在籍出向の場合、労働関係の実態を総合的に勘案して、出向元または出向先で実施対象となる。
休職者 実施対象としなくても差支えない。

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