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種類株式はどのような場面で活用できるか

コーポレート・M&A
榎木 智浩弁護士

 種類株式は、どのような場面で活用することができるでしょうか。

 事業承継・相続対策、合弁会社、少数株主の締出し(スクイーズ・アウト)、ベンチャー企業の資金調達、メザニン・ファイナンス、上場会社における資金調達などで活用されます。また、上場会社の役員報酬として現物株式を交付する際にも活用することができます。

解説

事業承継・相続対策

 中小企業など閉鎖型のタイプの株式会社においては、一般に、株主がみずから会社の経営をします。このようなオーナー経営者のうち、相続人が複数いるオーナー経営者が引退等すると、保有していた株式が相続人に分散することによって相続人間で紛争が生じ、ひいては、従業員や取引先に悪影響を及ぼすおそれがあります。
 そこで、事業承継および相続の対策として、種類株式を活用することがあり、例えば、後継者となる相続人に対して議決権のある株式を取得させ、それ以外の相続人に対して無議決権株式を取得させることや、後継者に対して拒否権付株式を取得させることがあります。

事業承継・相続の対策としての種類株式の活用

合弁会社

 合弁会社は、出資者の数、出資比率、出資者の権利、運営方法などに応じて多種多様な形態がありますが、種類株式を活用して出資者のニーズを調整および実現することがあります
 たとえば、出資者が2社の合弁会社においては、出資比率が50%:50%でないかぎり、少数株主が役員の選任をはじめとする株主総会の普通決議で決する事項に関与できません。そこで、多数株主に対して一定の事項についての議決権制限株式を発行する、少数株主に対して一定の事項についての拒否権付株式を発行する、多数株主および少数株主に対してそれぞれ取締役または監査役の選任に関して内容の異なる種類株式を発行することがあります。
 また、合弁当事者の役割や貢献度に応じて、配当の順番や優先劣後関係を定める場合がありますが、このような場合、優先株式を活用することによって、株式保有割合とは異なった割合で剰余金の配当または残余財産の分配を行えます。
 さらに、無議決権株式を活用することによって、出資比率50%:50%を維持しつつも、特定の役職員にインセンティブを付与することができます。

少数株主の締出し(スクイーズ・アウト)

 M&A、MBO、完全子会社化など、様々な場面で、分散した株式を集約するべく少数株主を締め出すことがあり、この手法として、種類株式である全部取得条項付種類株式を活用でき、従前、実務で広く活用されていました
 ただし、全部取得条項付種類株式が用いられたのは、他の方法である合併、株式交換では税制上の非適格組織再編に該当することによる税務面の不利があり、また、株式併合が平成26年会社法改正前において安定性に欠けると解されていたことが理由でした。平成26年会社法改正により、株式併合についても制度が充実して法的安定性が担保されたため、全部取得条項付種類株式に代わって株式併合が広く活用されています

ベンチャー企業の資金調達

 上場を目指す資金調達の需要のある非公開会社が、キャピタルゲインを目指すベンチャーキャピタル・ファンドから資金調達をする際に種類株式を活用することがあります
 種類株式の制度設計および内容は多様ですが、典型的には、配当および残余財産の内容の優先株式、普通株式対価もしくは現金対価またはその双方を対価とする取得請求権付株式、IPOの申請等をトリガーとする取得条項付株式などが活用されます。この他、役員選任に関して内容の異なる株式や、株式の種類ごとに単元株式数を変更することによる複数議決権、拒否権付株式を活用することもあります。

メザニン・ファイナンス

 メザニン・ファイナンスにおいても、種類株式を活用することがあります
 メザニン・ファイナンスで種類株式を活用する場合、エクイティに優先させるために配当および残余財産の優先株式を活用し、これに加えて、投資家の投資元本回収の手段として取得請求権付株式、発行会社の早期リファイナンスの方策を確保するために取得条項付株式を活用することがよくあります。さらに、経営全般に関与する予定がない投資家に対しては無議決権株式を活用することもあります。また、組織再編など、会社の企業価値に重大な影響を及ぼす行為を防止するために拒否権付株式を活用することもあります。

上場会社の資金調達・上場等

 上場会社の資金調達として種類株式を発行する例としては、銀行の自己資本規制対策として、非累積的な優先株式を発行する例や、企業再生を目的として優先株式を発行する例があります。種類株式の制度設計は多様で、配当および残余財産の優先株式のほか、取得請求権付株式や取得条項付株式を活用することもあります。近年でも、平成27年および平成28年にシャープ株式会社が種類株式を発行して企業再生を目的として資金調達をした例があります。

 近時の新たな種類株式を用いた事例としては、株式会社伊藤園が、平成19年に、無議決権配当優先の種類株式を発行して上場させた事例や、CYBERDYNE株式会社が、平成26年に、株式の上場に際して創業者等に対して普通株式とは単元株式数が異なる多議決権株式を発行した事例や、トヨタ自動車株式会社が、中長期の保有を前提とした個人投資家向け種類株式として議決権のある譲渡制限付株式を発行した事例があります。

上場会社の取締役に対する報酬(リストリクテッド・ストック)

 平成28年税制改正により、現物株式を報酬として付与する方法として「特定譲渡制限付株式」が新設され、役員に対する支給を損金算入しつつ、役員報酬として譲渡制限付株式を活用することができるようになりました。
 「特定譲渡制限付種類株式」は、譲渡についての制限がされて、当該譲渡についての制限に係る期間が設けられている必要があります(所得税法施行令84条1項1号、法人税法施行令111条の2第2項1号)。この譲渡制限の方法として、種類株式である譲渡制限付株式を交付する方法、割当契約において譲渡制限を定める方法が考えられ、この関係で、種類株式を活用することが考えられます。
 ただし、種類株式を用いる場合には、定款変更の特別決議が必要なほか、複数回にわたって「特定譲渡制限付種類株式」を交付する場合において内容が異なる場合には別個の種類株式として定款の規定を設ける必要があることなどから、種類株式ではなく、割当契約に譲渡制限をすることが主流となると指摘されています。実際にも、種類株式を用いずに契約で譲渡制限をするのが主流です。

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