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中国における合弁会社コントロールのポイント

国際取引・海外進出
横井 傑弁護士

 当社は中国で中国企業と組んで合弁事業を行う予定ですが、出資比率や董事の指名権の比率を決める際にどのような点に留意すればよいでしょうか。また、董事長のポスト、総経理のポストを当社が握るべきかどうかについては、どのような観点から決めればよいのでしょうか。

 中国企業との合弁会社である中外合弁企業は最高意思決定機関が株主会ではなく董事会(取締役会)であるため、出資比率は会社のコントロールを直接左右せず、董事の指名権の比率等を決めるにあたっての基礎として間接的に作用する点に留意が必要です。

 そのうえで、董事の指名権の比率や董事長・総経理の指名権をどこまで取るかという点は、最高意思決定機関である董事会、法定代表者である董事長、日常管理業務の責任者である総経理の具体的権限に基づき検討していくこととなります。

解説

中外合弁企業の状況

 「中国における合弁事業のメリット・デメリットと失敗対策」で紹介したように、外国企業が中国に進出して現地法人を設立する場合、100%出資の外商独資企業を設立する例が圧倒的に多いのが近年の傾向です(2016年の外商投資企業総設立数のうち約75%)。この背景には、2001年に中国がWTOへ加盟したことによる外資規制の緩和や、合弁会社で進出する場合の紛争リスクの回避などがあります。

 ところが、近年、中国の位置づけが「世界の市場」へシフトしていることや、中国企業が底力を付けてきたことを受け、中国側合弁パートナーの販売網や資力等を当てにして、再び中外合弁企業での進出が検討の選択肢にあがることが増えてきたように思います。

 このような合弁会社の出資比率や董事の指名権の比率を考えるにあたっては、中国側合弁パートナーの貢献度に配慮しながらシビアな交渉になることが予想されますが、本稿ではこれを考えるポイントを探っていきます。

出資比率を考えるうえでのポイント

 中外合弁企業への出資比率を検討する場合、ビジネス面、リーガル面、財務会計面など様々な観点から検討する必要があります。

 リーガルの観点からは、まず外資規制を考える必要があります。外資規制は、以前よりも緩和されたとはいえ、未だ外資企業の参入が禁止されている業種(電力の供給業、映画制作会社、インターネット出版サービスの運営など)や、一定の比率の出資までしか認められない業種もあるため、初期段階で確認しておく必要があります。

 次に検討する点としては、合弁会社のコントロールがあげられます。これは合弁会社の経営の中核に関わる部分ですので、次項で詳しくポイントをみていきます。

出資比率を考えるうえでのポイント

合弁会社のコントロール

 中外合弁企業には、株主会が存在せず、董事会(取締役会)が最高意思決定機関となります。したがって、各合弁当事者の出資比率の大小は、会社のコントロールに直接影響するのではなく、董事の指名権の比率、董事長・総経理等の指名権を決めるにあたって間接的に作用することとなります。

 会社経営の要としては、最高意思決定機関である董事会、法定代表者である董事長(代表取締役)、日常の管理業務を行う総経理(最高執行責任者)などがあげられ、これらの指名権を取れるか否かが会社へのコントロールを左右することとなります。

董事の指名権の比率

 董事会のコントロールを考えるにあたっては、開催のコントロールと決議のコントロールに分けて考える必要があります。

(1)開催のコントロール

 董事会は会議体ですので、決議の前提としてそもそも開催できるか否かも重要となります。開催をコントロールする分水嶺としては、(i) 単独で董事会開催の定足数を満たす2/3ライン(定款でより厳格に変更可)(ii) 董事長に対して董事会の招集請求が可能となる1/3ラインがあります。合弁当事者は、董事会の開催をどの程度コントロールするかによって董事の指名権の比率を検討することとなります。

 なお、董事会を招集して主宰する権限は董事長が有しているため、開催のコントロールを検討する際には、併せて董事長の指名権も検討する必要があります。

董事会の開催のコントロール

(2)決議のコントロール

 次に、董事会決議のコントロールに目を向けると、中国の法令上、法定の全会一致事項を除き、誰が、いかなる項目を、どの程度コントロールするかという点は合弁当事者が任意に設計出来るようになっています。具体的には、董事会における派遣董事の比率を勘案しながら、定款上の決議事項と決議要件(過半数、2/3、全会一致など)を規定していくこととなります。

 一般的に、マジョリティ出資であって総経理等も派遣できる場合には、経営の具体的事項を総経理等に任せて董事会は大枠のみ決議することとし、マイノリティ出資の場合には細かく書き込んで董事会で経営を監視できるようにする方針で交渉することとなります。

 また、決議のコントロールの強度は、①単独で決議可能なライン、②相手方に単独で決議させないライン(拒否権)、③相手方に自由に決議されてしまうラインの3種類に分けられ、どの決議事項についていかなる決議要件を設定するのかを戦略的に定めていくことが必要になります。

董事会決議のコントロール

董事長の指名

 中外合弁企業の董事長は、会社の法定代表者です。董事長は、各合弁当事者の協議または董事会の選挙にて選出することとなり、定款・合弁契約においてあらかじめいずれかの合弁当事者に指名権を規定しておくのが一般的です。

 董事長は、特別な授権なくして契約書や法律書類に署名する権限を有しており、董事長の指名権を持つことにより、会社の法的手続、その他法律行為においてイニシアチブを取ることができます。

 また、上述のとおり、董事長は董事会を招集して主宰する権限を有しているため、董事会の開催のコントロールを考えるうえでもポイントとなります。

 さらに、合弁会社は董事長を補佐する副董事長を置く必要がありますが、その指名権は、法令上、董事長の指名権を持たない合弁当事者が持つこととなります。

総経理の指名

 総経理は、会社の日常の管理業務を行う最高責任者です。総経理の任命権は董事会にありますが、定款・合弁契約であらかじめいずれかの合弁当事者に指名権を規定するのが一般的です。

 董事長が会社の法律行為を実行するのに対し、総経理は会社の日常業務全般について責任を負う職位であるため、総経理の指名権を持つことにより、会社の具体的な経営においてイニシアチブを取ることができます。

 総経理についても補佐役である副総経理を置く必要があり、その指名権は、法令上、総経理の指名権をもたない合弁当事者が持つこととなります。

まとめ

 中外合弁企業のコントロールの検討ポイントはこれまで述べてきたとおりですが、実際の合弁の相手方との交渉にあたっては、全体的なバランス感覚が重要となってきます。何を取って何を諦めるのかを的確に見極めるためにも、各会社機関の特徴や権限の中身を詳細に把握したうえで交渉に臨む必要があります。

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