独占禁止法で禁止されている私的独占とは

競争法・独占禁止法

 独占禁止法で禁止されている私的独占とは、どのようなものですか。

 私的独占とは、事業者が、他の事業者の事業活動を排除し、または支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいいます(独占禁止法2条5項)。

解説

目次

  1. 私的独占とは
    1. 私的独占の要件
    2. 問題となる排除行為
    3. 「一定の取引分野」の意味と「競争の実質的制限」が認められる場合
  2. 私的独占に違反した場合は、排除措置命令および課徴金納付命令の対象となる

私的独占とは

私的独占の要件

 独占禁止法では、以下の要件に該当する「私的独占」(独占禁止法2条5項)を禁止しています。

  1. 事業者が
  2. 他の事業者の事業活動を排除し、または支配することにより
  3. 公共の利益に反して
  4. 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること

 この要件のうち、①の「事業者」は、独占禁止法2条1項で定義されています。
 ③の「公共の利益に反して」の要件に関しては、同様の文言が用いられている不当な取引制限(独占禁止法2条6項)においては若干の議論があるものの、私的独占との関係では、④の要件である競争の実質的制限に関する正当化理由の中で判断されているのが通常であり(たとえば、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」、以下「排除型私的独占ガイドライン」第3-2(2)オ参照)、この要件が個別に議論されることはほとんどありません。

 そして、私的独占については、②の要件に関する行為態様の違いにより、「支配型私的独占」と「排除型私的独占」とに分けられます。

 支配型私的独占とは、他の事業者の事業活動を支配することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいいます。「支配」とは、他の事業活動の意思決定を拘束し、自らの意思に従わせる行為(支配行為)のことをいいます。
 支配型私的独占は、競争回避(停止)型の行為であり、行為者が競争者の事業活動を支配する場合には、行為者と競争者との間の競争が停止し(図1参照)、行為者が取引段階を異にする事業者の事業活動を支配する場合には、支配される事業者に係る競争が停止します(図2参照)。

支配型私的独占

 これに対して、排除型私的独占は、他の事業者の事業活動の継続または新規参入を困難にする行為(排除行為)による私的独占であり、競争者排除型の行為です。これまで支配型私的独占と認定されたケースは少なく、私的独占の中では、排除型私的独占が問題になることが多いため、以下ではこの排除型私的独占について説明します。

問題となる排除行為

 独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進することですから、より良い商品をより好ましい取引条件で提供するという「競争」の結果として他の事業者の事業活動を困難にしたり、市場からの退出を余儀なくさせたりしても、それは違法な行為ではありません。

 そこで、このような「競争」と、排除型私的独占として問題になる排除行為をいかに区別すべきかが問題になりますが、この点に関し、最高裁は、①当該事業者の行為について、自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり(人為性の有無)、②他の事業者の市場への参入を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否か(排除効果の有無)によって判断すると判示しています(NTT東日本FTTHサービス事件(最高裁平成22年12月17日判決・民集64巻8号2067頁)JASRAC事件(最高裁平成27年4月28日判決・民集69巻3号518頁))。

 そして、このような排除行為に該当する行為の典型例として、排除型私的独占ガイドラインでは、①低価格販売、②排他的取引、③抱き合わせ、④供給拒絶・差別的取扱いの4類型があげられています。

「一定の取引分野」の意味と「競争の実質的制限」が認められる場合

 一定の取引分野とは、当該排除行為により競争の実質的制限がもたらされる範囲のことであり、その範囲は、必要に応じ対象商品に係る需要や供給の代替性を考慮しながら、当該排除行為に係る取引およびそれにより影響を受ける範囲を検討し、特定することになります(排除型私的独占ガイドライン第3-1)。

 また、競争の実質的制限については、競争自体が減少して、特定の事業者または事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって市場を支配することができる状態という意味での市場支配的状態が形成・維持・強化されていれば、競争の実質的制限が認められるとしています(排除型私的独占ガイドライン第3-2(1))。

 そして、このような競争の実質的制限の存否は、以下の点等を総合的に考慮して判断することとされています(排除型私的独占ガイドライン第3-2(2))。

  1. 行為者の地位および競争者の状況(行為者の市場シェアおよびその順位、市場における競争の状況、競争者の状況)
  2. 潜在的競争圧力(制度上の参入障壁の程度、実態面での参入障壁の程度、参入者の商品と行為者の商品との代替性の程度)
  3. 需要者の対抗的な交渉力
  4. 効率性
  5. 消費者利益の確保に関する特段の事情

私的独占に違反した場合は、排除措置命令および課徴金納付命令の対象となる

 私的独占は、公正取引委員会による排除措置命令および課徴金納付命令の対象となります(独占禁止法7条、7条の2)。なお、支配型私的独占に対する課徴金の算定率は当該商品の売上額に対して原則10%、排除型私的独占に対する課徴金の算定率は当該商品の売上額に対して原則6%とされています(7条の2第2項、同第4項)。さらに、私的独占に対しては刑事罰も存在しますが(独占禁止法89条1項1号、95条)、これまで私的独占に刑事罰が課されたことはありません。

 なお、排除型私的独占ガイドラインでは、(i)行為開始後において行為者が供給する商品のシェアがおおむね50%を超える事案であって、(ii)市場規模、行為者による事業活動の範囲、商品の特性等を総合的に考慮して、国民生活に与える影響が大きいと考えられるものについて、優先的に審査を行うとされています(同ガイドライン第1)。

 また、私的独占によって権利・利益を侵害された事業者は、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求や独占禁止法25条に基づく損害賠償請求(無過失責任)を行うことができます。なお、私的独占は独占禁止法上の差止請求(独占禁止法24条)の対象ではありませんが、それが不公正な取引方法(独占禁止法2条9項)にも該当する場合(たとえば、不当廉売(独占禁止法2条9項3号)に該当する場合)は、当該私的独占を不公正な取引方法と構成することで差止請求の対象とすることが可能です。

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