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代理人弁護士を就けずに訴訟に対応することの可否

訴訟・争訟

 当社は小売業を営んでおりますが、今般、半ばクレーマーに近い顧客から、請求金額数十万円という少額の訴訟を簡易裁判所に提起されてしまいました。事件の規模が小さいので、顧問弁護士に報酬をお支払いして訴訟代理人に就いてもらうまでもないのでは、という意見が社内にあります。
 当社には法務部があり、法務部員の中には、弁護士資格は有していないものの、法律事務所での事務職員としての勤務経験があって、訴訟についてそれなりの知識を持っている優秀な者がいます。この従業員に当社の訴訟代理人を委任して、訴訟活動を行わせるということは可能なのでしょうか。

 訴訟委任に基づく訴訟代理人については、原則として、弁護士を委任しなければなりませんが、簡易裁判所においては、例外的に、法人が訴訟の当事者である場合の法務担当者などにつき、裁判所の許可を得て訴訟代理人とすることが可能です。

解説

当事者本人による訴訟活動

 訴訟の当事者となった者は、自ら裁判所に赴き、主張・立証等の訴訟活動を行うことができます。当事者の一方または双方が、自身で訴訟活動を行う訴訟のことを、一般に本人訴訟といいます。
 もっとも、法人が当事者である場合、当然のことながら、法人自身が訴訟活動を行うということは観念できません。そこで、代表取締役、理事長といった法人の代表者が、法人のために訴訟活動を行うことができ、その効果は法人に帰属することになります。

訴訟代理人による訴訟活動

訴訟委任に基づく訴訟代理人

 訴訟の当事者が自ら訴訟活動を行うことができるといっても、多くの場合、当事者本人は、専門的な法律知識を持っているわけではありません。また、法人が当事者である場合に、代表者が自ら裁判所に何度も足を運んだり、主張書面を作成したりするということは、個人事業主に近いようなごく小規模の法人を除いては、およそ現実的とはいえないでしょう。

 そのため、訴訟の当事者は、第三者に訴訟活動の遂行を委任し(訴訟委任)、この第三者を通じて訴訟に対応することが通常です。

(1)弁護士代理の原則

 訴訟委任に基づく訴訟代理人については、原則として、弁護士を委任しなければならないとされています(弁護士代理の原則。民事訴訟法54条1項本文)。これは、訴訟活動の専門性や公益性を重視する観点から、もぐりのいわゆる事件屋(明治時代には、三百代言などと呼ばれました。「三百」とは三百文の略で、価値の低い代理人のことを罵って言った言葉です)の介入を排除することを目的としています。

 なお、弁護士法72条本文は、弁護士または弁護士法人でない者が報酬を得る目的で訴訟事件等に関する法律事務を業として取り扱うこと(いわゆる非弁活動)を禁止しており、この規定に違反した者については、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処することとされています(弁護士法77条3号)。

(2)簡易裁判所における例外的な取扱い

 簡易裁判所においては、訴額も僅少で高い専門性は必ずしも要求されないような軽微な事件が比較的多いことから、例外的に、裁判所の許可を得ることによって、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができ(民事訴訟法54条1項ただし書)、かかる許可を得た代理人のことを許可代理人といいます。許可代理人になることができる資格について、これを具体的に定める法令の規定は存在しませんが、前記の弁護士代理の原則の趣旨に鑑み、実務運用上は、裁判所は許可を与える対象をある程度限定しています。たとえば、訴訟の当事者が個人(自然人)であれば、当事者本人が病気などの事情で裁判所に出頭できない場合に、同居の親族を許可代理人とすることが認められています。また、当事者が法人の場合は、その法人の従業員で、たとえば法務担当者や、貸金業者における貸金業務担当者など、訴訟の対象となっている紛争に詳しく、一定の専門知識も持っている者が許可代理人とされることが多いといえます。訴訟代理人の許可を得ようとする者は、原則として期日前に、代理人許可申請書を裁判所に提出することとされており、裁判所ウェブサイトには、申請書の定型書式も掲載されています。

 なお、簡易裁判所においては、弁護士や上記の許可代理人の他に、所定の研修を受けて法務大臣による能力認定を受けた司法書士(認定司法書士。司法書士法3条2項)も、訴訟の目的の価額が140万円を超えない範囲では、訴訟代理人となることができます(司法書士法3条1項6号イ)。

法令上の訴訟代理人

 訴訟の当事者から特に訴訟活動について具体的に委任されずとも、当事者と一定の関係を有することに基づき、「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」(法令上の訴訟代理人。民事訴訟法54条1項本文)もいます。たとえば、会社等の支配人がそれで、会社等の事業・営業に関する「一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」とされています(会社法11条1項、商法21条1項)。会社が支配人を選任したときは、その登記もなされます(会社法918条)。

 もっとも、支配人は、上記のとおり、訴訟活動に限らずきわめて広範な代理権を与えられるのが本来であるところ、そのような包括的な代理権を授与されていない従業員を支配人登記して訴訟活動にあたらせるという、いわば弁護士代理の原則の潜脱のようなことが行われることがあります。かかる脱法行為にあたる場合は、たとえ支配人に選任されその旨の登記がなされた者であっても訴訟代理人としては認められず、その行った訴訟行為は無効と解されることに注意が必要です。

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