ベトナムにおける広告規制と制裁の概要

国際取引・海外進出

 当社は、ベトナムで販売している商品の売上げをあげるために、広告を出したいと考えています。広告戦略を立てる際に、何か注意すべき点はありますか。

 ベトナムでは、広告物の内容のうち虚偽広告や比較広告等について、広告法、商法、競争法により一定の制限が設けられています。また、広告法では、広告方法に応じて、個別にルールが定められています。
 虚偽広告等を行った場合、行政罰や競争法上の制裁、刑事的制裁として、罰金等が課される可能性があります。
 実際に広告戦略を立てるにあたっては、最新の法令や運用を確認するようにすることが重要です。

解説

目次

  1. ベトナムにおける広告戦略の重要性
  2. 広告内容に関する規制
    1. 広告法による規制
    2. 商法による規制
    3. 競争法による規制
    4. 最近の動向
  3. 広告方法に関する規制
  4. 虚偽広告等に対する制裁
  5. まとめ

ベトナムにおける広告戦略の重要性

 EC(電子商取引)市場が急速に拡大しているベトナムでは、携帯電話端末の普及率の高さを背景に、Facebook等のSNSを利用した広告や売買も盛んになってきています。消費者は衣類、履物、化粧品、電子機器などをECで購入しており、最近では、日本製品に特化したサイトも登場するなど、日系企業の参入も広がりつつあります。

 実際に、ベトナム市場に新規に参入する企業においては、現地需要の取り込みが重要となります。その中で、SNSなどの広告戦略をどうするかがビジネスの成否を分ける場合も、多く見られるようになってきました。
 一方で、ベトナムでも、日本と同じように広告についての法規制があり、これらの規制をよく知った上で、効果的な広告戦略を立てることが必要となっています。

 そこで、今回は、ベトナムにおける広告規制の概要について、説明したいと思います。

広告内容に関する規制

広告法による規制

 広告物については、広告法(第16/2012/QH13号)で、内容に関する規制がなされており、虚偽広告や比較広告等について、一定の制限が設けられています。

 すなわち、広告法では、物品やサービスを取扱う事業者の提供能力、物品やサービスの数量、品質、価格、用法、デザイン、原産地、種類、包装、利用方法、保証期間等に関し、消費者に虚偽の情報を与え、または消費者を誤認させる広告(虚偽広告)が禁止されています(広告法8条9項)

 また、自己の物品またはサービスと、他の事業者の同種の物品またはサービスの価格、品質、効能等を直接的に比較する広告(比較広告)が禁止されています(広告法8条10項)
 日本の景品表示法では、事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると消費者に誤認させる行為が禁止されているのに対し、ベトナムでは比較することそれ自体が禁止されているのが特徴です。

 さらに、文化スポーツ観光省の定める規制に従った法的根拠文書がなければ、「唯一」「最高」「ナンバーワン」等の最上級表現を使った広告を行ってはいけないとされています(広告法8条11項)。

商法による規制

 虚偽広告は、商法でも規制されています。
 すなわち、商業広告に適用される商法(第36/2005/QH11号)109条7項では、物品またはサービスの数量、品質、価格、用法、デザイン、原産地、種類、包装、利用方法、保証期間等に関して、虚偽の情報を含んだ広告が禁止されています。

競争法による規制

 競争法においても、虚偽広告や比較広告が規制されています。
 すなわち、競争法(第27/2004/QH11号)45条3項では、価格、数量、品質、用途、意匠、種類、包装、製造年月日、使用期間、原産地、製造者、製造地、加工業者、加工地、使用方法、サービスの形態、保証期間等に関して、消費者に虚偽の情報を与え、または消費者を誤認させる行為が、不公正な競争を目的とする広告活動とされ、規制対象になっています。
 また、自己の物品またはサービスと他の事業者の同種の物品またはサービスの価格、品質、効能を直接的に比較する行為が、不公正な競争を目的とする広告活動とされ、規制対象になっています(競争法45条1項)。

最近の動向

 上記のとおり、ベトナムでは、広告法、商法、競争法という3つの法律が広告について同種の規制をしており、規制が交錯するため、行政当局の管轄権の所在を含め、トラブルが生じています。そのため、2018年春の第5会期に採択される予定の競争法の改正草案では、広告法および競争法と重複する広告規制に関する条文が削除されており、徐々に整備されている状況です(Dự thảo online「Luật Cạnh Tranh」)。

 ただし、その詳細や運用は未定であり、今後も、立法や法律の運用の動向について注意が必要です。

広告方法に関する規制

 次に、広告内容だけでなく、広告の方法などについても、別途規制がなされています。

 広告法では、印刷物、映像、画像、看板、ビルボード、交通機関等の広告方法に応じて、個別に広告方法に関するルールが定められています(広告法2条11項、21条以下)。
 たとえば、e-mailやSNSを利用して広告をする場合は、事前に受領者の承諾を得なければならないとされているほか、電子情報サービス業者や電子通信業者が広告を送付できるのは自己のサービスに関する広告のみであり、送付時間は午前7時から午後10時までの間でなければならず、さらに、受領者との間で特段の合意がない限り、24時間以内に送信できる回数は3回と決められています(広告法24条)。

 したがって、SNSやe-mailを使った広告を行う際は、広告業者任せにせず、これらの規制に違反しないよう注意が必要です。

虚偽広告等に対する制裁

 上記のような制限がある広告ですが、虚偽広告等を行った場合、どのような制裁が課されるのでしょうか。

 まず、行政罰として、1,000万VND(ベトナムドン)~7,000万VNDの罰金が課される可能性があります。その他、当該違反広告の削除をしなければならないほか、場合によっては謝罪広告や訂正広告を要求される場合もあります(文化スポーツ観光・広告分野における行政違反に対する制裁を定める政令(第158/2013/ND-CP号)51条5項)。

 次に、競争法上の制裁として、8,000万VND~1億4,000万VNDの罰金が課される可能性があります。その他、謝罪広告が求められたり、違反広告に関する物品が押収されたりする場合もあります(競争分野における違反行為取扱について競争法の詳細規制を定める政令、(第71/2014/ND-CP号)33条2項)。

 また、刑事的制裁として、虚偽広告により重大な被害をもたらした者や、違反行為について既に行政処分を受けまたは違反行為について既に有罪判決を受けて前科が抹消されていないにもかかわらず、違反行為を繰り返した者に対しては、虚偽広告罪として、1,000万VND~1億VNDの罰金、3年以下の非拘束矯正刑という刑事罰が課されます(2017年改正刑法(第100/2015/QH13号を改正・補足する第12/2017/QH14号)197条1項)。

 さらに、虚偽広告により重大な被害を被った被害者は、民法(第91/2015/QH13)上の不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます。

法的措置 罰金 他の制裁措置 法的根拠
行政上の措置 1,000万VND~7,000万VND(日本円で約5万~35万円)の罰金 当該違反広告の削除、公開の謝罪、訂正 文化スポーツ観光・広告分野における行政違反に対する制裁を定める政令(第158/2013/ND-CP号)51条5項
競争法上の措置 8,000万VND~1億4,000万VND(日本円で約40万~70万円)の罰金 公開の謝罪、違反行為に関わる物品の押収 競争分野における違反行為取扱について競争法の詳細規制を定める政令(第71/2014/ND-CP号)33条2項
刑事的措置 1,000万VND~1億VND(日本円で約5万~50万円)の罰金 3年以下の非拘束矯正刑 2017年改正刑法(第100/2015/QH13号を改正・補足する第12/2017/QH14号)197条1項

 最近罰金が課された例としては、2017年10月に、ベトナム食品安全局が、An Minh Southern有限会社に5,000万VNDの罰金を課した事例があります。同社は、Smartoという商品を販売していたところ、同商品はあくまでサプリメントであり、胃の病気を治す効能はないにもかかわらず、あたかも胃の病気にも効果があるかのような広告をし、当該広告が虚偽広告に該当すると判断されて罰金が課されたものです。

まとめ

 このような制裁を課されないように、事業者は、自らの広告が、虚偽広告や比較広告になっていないか、違法な方法で広告を行っていないか等を注意深く検討する必要があります。
 また、ベトナムでは、法令の改廃や運用の変更などが頻繁に、かつ十分な予告なく行われることが多いため、実際に広告戦略を立てるにあたっては、最新の法令や運用を確認するようにすることが重要と言えるでしょう。

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