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ベトナム企業を対象とするM&Aのスキームと留意点

国際取引・海外進出
渡邉 純子弁護士

 日本企業によるベトナム企業へのM&Aにおいて、用いられるスキームと留意点について教えてください。

 スキームとしては株式取得が用いられることが大半ですが、資産譲渡と株式譲渡を組み合わせた取引が検討されることもあります。また、対象会社との間に中間持株会社を介在させる間接投資スキームが用いられることもあります。

解説

はじめに

 ベトナム企業にとって、日本企業は、その技術や経営ノウハウに対する期待も高く、投資家としての出資を期待されていることから、日本企業によるベトナム企業へのM&Aの件数も堅調に推移しています。

M&A取引において用いられるスキーム

 M&A取引で実務上採られるスキームとしては、①株式取得(既存株式の譲渡および第三者割当増資)と②資産譲渡、の2つがありますが、実務上は、ほぼすべてのケースで①が用いられます。②は日本における事業譲渡と類似しており、譲渡対象となる資産および負債を選別することができる(そのため偶発債務の遮断も可能となる)というメリットがある一方で、個々の資産の種類に応じた権利関係の移転手続を踏む必要があるため、手続が煩雑になり得るというデメリットがあります(特に、譲渡対象資産に土地使用権が含まれている場合、手続が煩雑になり得ます)。

 また、買収対象会社グループの資本構成が複雑である、対象会社のデューデリジェンスに多大な時間と労力がかかることが想定されるなど、そのまま①株式取得の方法による出資を行うことに問題がありそうなケースでは、売主・対象会社に、新会社を設立させたうえで、当該新会社に、②資産譲渡を利用して必要な事業を承継させ、偶発債務を遮断し、当該新会社の株式を取得するという、①と②を組み合わせたスキームが検討されることもあります。

ベトナム企業を対象とするM&A取引において用いられるスキーム

中間持株会社の利用について

 日本から直接ベトナム企業の株式・持分を取得するのではなく、別の法人(中間持株会社)が株式・持分の主体となる間接投資ストラクチャーが検討されることもあります。このような中間持株会社は、下記表に示したような税制面のメリットがあることからシンガポールに設立されるケースが多く見られます。以下シンガポールにおいて中間持株会社が設立された場合を例にとって、直接投資ストラクチャーと間接出資ストラクチャーを比較すると次のとおりです。

シンガポールにおける直接投資ストラクチャーと間接出資ストラクチャーの比較

①直接買収 ②中間持株会社をシンガポールに設立する場合
対象会社の利益の配当を通した回収 日本における法人税負担あり(※)
  • シンガポール法人がベトナム法人から配当の形で受けた支払は基本的に非課税
  • ベトナム国外への配当に、ベトナムにおける源泉税はない

→たとえば、配当を中間持株会社から他の東南アジアへの投資に回すことが特段の税負担なく可能になる

エグジット(対象会社の株式売却)
  • キャピタルゲインにつき日本の法人税の負担あり
  • クロージングの際に手続的負担あり(ベトナム当局との折衝)
  • シンガポールにおいては基本的にキャピタルゲイン課税制度が存在しない
  • →キャピタルゲインについて課税負担なく対象会社の株式売却が可能

  • 中間持株会社の株式を売却する場合には、クロージング時に①と比較して手続的負担少ない

※なお、外国子会社配当益金不算入制度により、外国法人の発行済株式総数の25%以上を、配当等の支払義務が確定する日以前6か月以上引き続き保有している場合は、配当額の95%は益金不算入(法人税法23条の2)

 このような中間持株会社をベトナムに設立するスキームも検討されることがあります。ベトナムにおいては、「子会社株式の保有・管理」のみをその事業目的とする、持株会社として機能する外資法人の設立は、基本的に認められていないものの、「コンサルテーション」を事業目的として実質的な中間持株会社を設立した実例は存在しています。しかしながら、このような形態でベトナムに中間持株会社を設立する場合には、当局への説明に若干の工夫が必要となります。

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