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売買契約の「所有権留保」特約に基づいて破産した取引先から商品を返却してもらうには

事業再生・倒産
山内 邦昭弁護士

 私が担当している取引先が突然破産しました。当社が販売した商品の代金は支払われていないのですが、商品自体は取引先の事務所に残っているようです。慌てて上司に相談したところ、「売買契約に『所有権留保』の特約が設けられていたはずだ、それで商品を取り返せないか」と言われました。商品を取り返すことはできるのでしょうか。そもそも所有権留保とはどのようなものですか。

 所有権留保は担保物権の一種で、別除権として、破産手続による制約を受けず、担保権者が自由に行使できます。実行方法としては、売買契約の解除通知を送って目的物を引き揚げるのが通常です。

 ただし、登記・登録を必要とする物(普通自動車等)については、登記・登録を備えて対抗要件を具備しないかぎりは、別除権を破産管財人に対抗できませんので注意が必要です。

解説

所有権留保とは

 所有権留保とは、売買代金全額の支払前に売買目的物を買主に引き渡す場合に、代金支払の担保のため、完済まで売主が目的物の所有権を自己に留保することをいいます。売主は、買主が代金の支払を遅滞した場合には、留保している所有権に基づき目的物を引き揚げて、第三者に売却処分したうえで換価代金を未収代金の支払に充てるなどして、代金を回収することになります。民法には規定がないため、その取扱いについては、学説・判例の蓄積が重要な役割を果たしています。

 対象物は不動産、動産のいずれもあり得ますが、不動産の場合抵当権等が用いられることが多いため、動産を対象としている例がほとんどです。以下では、動産を前提に解説します。     

破産時における所有権留保付売買の取扱い

別除権

 破産手続における所有権留保の性質をどう理解すべきでしょうか。具体的には、取戻権(破産法62条)なのか、別除権(破産法65条)なのかという形で問題になります。

 取戻権とは、「破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利」です。破産者に属していない他人の財産が破産者の債権者への弁済原資になることはあってはならず、財産の所有者は取戻しを求めることができます。

 これに対し、別除権とは、破産手続の制約を受けず(=別に除けられて)行使できる権利であり、担保権は別除権とされています。破産手続においては、担保権を持たない破産債権者は個別的な権利行使が禁じられるのに対し、担保権者は自由に担保権を実行することが可能です。

 所有権留保は、その名称からは、売主に所有権が帰属しているものとして取戻権となるようにも思われますが、実務上は、担保としての実質を重視して、別除権と取り扱われています(後述する最高裁平成22年6月4日判決・民集64巻4号1107頁もそれを前提にしています)。

対抗問題

 所有権留保が別除権として扱われるといっても、担保物権ですから、対抗要件を備えていなければ行使できません。

 民法178条では、動産に関する物権変動は、引渡しを受けなければ「第三者」に対抗できないと定められています。したがって、所有権留保の対抗要件を備えるには、買主から売主に対する目的物の引渡しが必要となります。この点、売ってしまった商品について買主から引渡しなど受けられないのではないかと思われるかもしれません。しかし、所有権留保特約を結んでいる買主と売主との間では、通常は、「占有改定」(民法183条)により買主から売主への引渡しがなされていると解されます。「占有改定」とは、民法が定める特殊な引渡し方法であり、現実の所持は買主のまま、目的物の買主と売主の合意のみによって、売主が占有を取得するというものです(軽自動車のクレジット販売契約上の占有改定による引渡しが認められた名古屋地裁平成27年2月17日判決・金法2028号89頁参照。左記事例では契約書に担保権者への占有改定が規定されていなかったため、占有改定の合意の有無が争点とされました。この点、契約書で占有改定条項を設ける例もあり、その方が紛争を回避するために有益でしょう)。

 一般的にはかかる占有改定により対抗要件を具備していますので、売主は所有権留保に基づいて目的物を引き揚げることが可能となります。

担保権の実行方法

 では、売主は、どのように所有権留保を行使すればよいでしょうか。

 担保の実行・目的物の引揚げのためには、目的物についての買主の利用権ないし占有権を奪う必要があるところ、そのために売買契約の解除を要するかが議論されています。この点、多数説は契約の解除を必要と解しており、実務上も、売買契約を解除するとともに売買目的物の返還を求めることが一般的です。

 なお、売主は、目的物の返還を受けた後、目的物を改めて換価処分することになり、換価処分によっても回収できない売買代金についてのみ、破産債権の行使ができることになります。この点、売主が目的物の返還を受けて換価することに代え、売主と破産管財人の合意のうえ、破産管財人が目的物を換価して、換価代金から一定額を破産財団に組入れし、残額を売主に返還する場合もあります。そうすることが売主と破産財団の双方の利益に資する場合もありますので、事案に応じて破産管財人と協議をすることもご検討ください。

自動車の所有権留保について(応用)

 以上、一般論として所有権留保付の動産売買について述べました。

 これに対して、普通自動車(以下「自動車」といいます)には登録制度があり、登録が物権移転の対抗要件となるため、所有権留保を破産管財人に対抗するためには登録を備える必要があります(軽自動車の場合は引渡しが対抗要件となり、普通自動車とは異なります)

 単純な二者間の所有権留保であればシンプルですが、ローンで自動車を購入する場合、自動車販売会社と購入者に加えて、代金を立替払するファイナンス会社も登場します。

 ファイナンス会社が販売会社に自動車代金の立替払をすることで、購入者は代金を分割で支払うことができ、ファイナンス会社は購入者から分割払手数料(利息)を収受することができ、販売会社は購入者の信用リスクを心配することなく自動車を販売できるという三者三様のメリットがあり、実務ではよく見かけられます。

 このような立替払取引では、ファイナンス会社に留保所有権を設定する一方で、名義変更に要する登録免許税等のコストを削減するために、登録名義は販売会社に残したままにしておいて、代金を完済したときに登録名義を買主に移転するケースがあります。そのため、自動車の登録名義と留保所有権者が異なるとして、破産手続等に至った場合にファイナンス会社が所有権留保権を対抗できるのかが問題となります。

自動車の所有権留保について

 この点、前掲最高裁平成22年6月4日判決は、小規模個人再生手続に関する事案ですが、上記のような立替払方式の契約において、ファイナンス会社が販売会社に立替払することにより、弁済による代位が生ずる結果、販売会社が代金債権を担保するために留保していた所有権が代金債権とともにファイナンス会社に移転するのであり、販売会社において対抗要件を具備している(販売会社名で登録されていた)以上、ファイナンス会社による所有権留保の行使が認められるとした原審の判断に対して、ファイナンス会社は、弁済による代位によって販売会社が有していた所有権留保を取得するものではなく、自らの立替金等債権(代金債権のほか諸経費を含む)を担保するために、販売会社から所有権の移転を受け、これを留保したものであるとしたうえで、ファイナンス会社が登録名義を有していない以上は、同会社は留保所有権を行使することはできないと判断しました。

 なお、立替払方式以外にも、販売会社が購入者に対して自動車販売を行うに際し、ファイナンス会社が購入者からの分割払金の集金業務を受託し、かつ購入者の代金債務について保証を行う方式など、自動車の所有権留保を巡っては多様な取引形態が見られます。これらの各形態についての裁判例もでており、実務は錯綜しているところです。いかなるケースで破産管財人への所有権留保の行使が認められるのかについては、個別事案ごとに契約書等を詳細に分析し、契約当事者間の法的関係を正確に把握するなどして、慎重に検討する必要があります。

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