訴訟期日を変更してもらいたい場合の対応

訴訟・争訟

 当社はごく小規模な部品メーカーであり、大手機械メーカーのA社との取引が売上のほとんどを占めていました。当社は昨年、A社から新型の設備投資を要求され、これに多額の資金を投入したにもかかわらず、今年に入って、突如として取引を打ち切られてしまいました。そこで当社は、社長が古くから懇意にしている弁護士に依頼して、A社に対する損害賠償請求訴訟を提起しました。この訴訟は当社の存亡を賭けたものであり、社長も、期日はすべて傍聴したいと希望しておりましたが、指定された期日の直前に身内に不幸があり、どうしても期日に裁判所に出頭することができなくなってしまいました。

 このような場合に、裁判所にお願いして、期日を変更してもらうことはできるのでしょうか。

 期日の変更は、原則として、これを認めるべき「顕著な事由」がなければ許可されませんが、いかなる場合に「顕著な事由」ありといえるかについては、裁判所の判断に委ねられるところも大きいため、何はともあれ、裁判所に事情を説明し、期日の変更につき打診してみるべきです。なお、相手方当事者の同意が得られれば、期日の変更が許可される可能性は高まるものと思われます。

解説

目次

  1. 期日変更の要件
    1. 期日変更の原則
    2. 期日変更の例外
  2. 実務的な対応

期日変更の要件

 期日の変更とは、いったん指定された期日(旧期日)が取り消され、他の期日(新期日)が指定されることをいいます。

 期日の変更は、当事者が申し出れば無条件に許されるというものではなく、以下に記載する民事訴訟法および民事訴訟規則所定の要件を充足する場合に、裁判所の決定によって行われるものです。

期日変更の原則

 口頭弁論期日および弁論準備手続期日の変更は、「顕著な事由がある場合に限り許す」とされています(民事訴訟法93条3項本文)。

 ここで、「顕著な事由」は、当事者または訴訟代理人について、病気により期日に出頭することができなくなったり、縁者に不幸があったりした場合に認められるものと解されています。これら以外でいかなる場合に「顕著な事由」があるといえるかについては、裁判所の判断に委ねられるところが大きく、文献の中には、実務では訴訟を遅延させようとする意図がない限り比較的柔軟に期日の変更を認めている、といった記載がなされているものもあります。もっとも、筆者の個人的経験からは、たとえば東京地方裁判所などは、期日の変更に対してかなり厳格な態度をとっている印象もあり、いずれにせよ、安易な期日変更の申立ては認められないことには注意が必要です

 なお、訴訟代理人が複数人就いていて、その一部に期日変更の必要が生じたにすぎない場合は、「やむを得ない事由」(「顕著な事由」よりもさらに厳しい要件)がない限り、期日の変更は許されません(民事訴訟規則37条1号)。また、期日指定後に、同一日時が別の事件の期日にも指定されたという場合も、「やむを得ない事由」がない限り、期日の変更は許されません(民事訴訟規則37条2号)。

期日変更の例外

 上記の原則に対し、最初の期日の変更は、「顕著な事由」がある場合のみならず、当事者の合意がある場合にも許されるとされています(民事訴訟法93条3項ただし書)。これは、第1回口頭弁論期日などは当事者の都合を聞かずに決定されていることが多く、期日の変更を許可する必要性が比較的高いためです。

 他方、弁論準備手続を経た事件の口頭弁論期日については、すでに争点整理を終えた後であり、引き続いて証人ないし当事者本人の尋問が集中的に行われることも多いため(民事訴訟法182条参照)、期日の変更は通常の場合よりも制限され、「やむを得ない事由」がない限り許されません(民事訴訟法93条4項)。ここで、「事実及び証拠についての調査が十分に行われていないこと」を、期日の変更の理由とすることはできません(民事訴訟規則64条)。そのような調査は弁論準備手続の中で完了しておくべきことですので、当然といえるでしょう。

実務的な対応

 設例において、裁判所が「顕著な事由」の存否を厳格に判断するのであれば、期日の変更が許可されない可能性は残ります。社長の身内に不幸があったといっても、訴訟の当事者は社長個人ではなく会社であり、訴訟代理人も就いていてその期日への出頭が可能なのであれば、期日を開くことに特段の支障は生じないためです。

 しかしながら、実務上は、裁判所にもよりますが、比較的柔軟に期日の変更を許可してもらえる場合もあります。したがって、少なくとも何もせずに諦める必要はなく、裁判所に事情を説明し、期日の変更につき打診してみる価値はあるといえるでしょう。

 なお、最初の期日を除いては、期日の変更につき相手方当事者の同意があったとしても、そのことのみで期日の変更が許可されるというわけではありません(「顕著な事由」が必要です)が、そうはいっても、裁判所としても、訴訟当事者の双方が期日の変更を求めているような場合にまでこれを許さないとすることはあまりないように思われます。そのため、設例においても、まずは代理人弁護士を通じて期日の変更に対する相手方当事者の同意を取り付け、変更後の新期日も両当事者の都合が付く日時をいくつか確保しておいてから、裁判所に対して期日の変更の申立てを行うことが効果的であり、このような場合、裁判所が期日の変更を許可する可能性は高いように思われます。

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