抽選でAmazonギフト券が当たる! 2018年の企業法務を振り返るアンケート実施中

休職者を復職させるにあたり、どのような職場に配置させるべきか

人事労務
大川 信太郎弁護士

 このたび、メンタルヘルスで休職していた社員が復職することになりました。復職させるにあたり、どのような職場に配置すべきでしょうか。また、復職に際して、原職から職務を軽減した場合、賃金を引き下げることができるでしょうか。

 復職させる場合、原職に復帰させるのが原則ですが、使用者は配転命令権を有するため、権利濫用にならない限度で、従業員の配置を決定することができます。また、使用者は従業員に対して、安全配慮義務を負っているところ、労働者の健康状態によっては原職に復帰させることが安全配慮義務に違反することがあるため、原職以外の職場に復帰させることを検討すべき場合もあります。また、会社が、職務給制度を採用している場合は職務の軽減に伴い、賃金を減額することも可能です。

解説

配転命令権の根拠と限界

配転命令権の根拠

 実務上、多くの会社が就業規則において業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の配置転換命令権(配転命令権)を定めています。会社は、この規定を根拠として、労働者に対して、配転を命じることができます。

【就業規則における配転命令権の規定例】

(人事異動)
第8条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。
3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

(出典:厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」(2018年1月))

配転命令権の限界

 配転命令権の行使も、一定の限界がある点に注意が必要です。判例上も「業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」は、権利濫用として無効になるとされています(東亜ペイント事件・最高裁昭和61年7月14日判決・労判477号6頁)。

 この点、労働者本人の疾患も権利濫用の成否の判断材料となり得ます。たとえば、メニエール病に罹患した労働者に対する配転命令につき、通勤時間が長くなることを考慮要素の一つとして、権利濫用であり無効とした裁判例もあります(ミロク情報サービス事件(第一審)・京都地裁平成12年4月18日判決・労判790号39頁)。

 労働者が復職時点において完治していない場合は、労働者の健康状態も加味した上で、配転命令権の行為を権利濫用ととらえられないよう注意する必要があります。

配転を検討すべきケース

安全配慮義務とその内容

 労働契約法5条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めており、このような配慮義務は、一般的に安全配慮義務と呼ばれています。

復職時の配転と安全配慮義務

 復職においては原職への復帰が原則ですが、労働者の健康状態を踏まえ、原職の業務内容、業務量、勤務場所等から労働者の健康状態への負荷が高く、生命、身体等の安全を確保できないと考えられる場合は、労働者本人、職場および産業医の意見等を十分に聴取し、原職以外への復帰を検討する必要があります
 また、いったん原職に復職させた後であっても、業務にうまく適応できていない等の状況があり、労働者への健康状態の負荷が高いと判断される場合は、復職後においても労働者本人、職場および産業医の意見等を十分に聴取し、配転を検討する必要があります

 裁判例(日本メール・オーダー事件(第一審)・東京地裁平成16年7月29日判決・労判882号75頁)では、下記の事由から、使用者の安全配慮義務違反を認めた例などがあります。

  • 頸肩腕症候群を発病し長期休養していた労働者に対して、労働者から症状の聴き取りをすることや、医師の意見を確認することをせず、復職後に、手や上肢等に過重な負担になる業務(長時間電話で応対しながら筆記をする貸付確認業務)に配置したこと
  • 同業務への配置後も、労働者の頸肩腕に変調がないか等に十分配慮し、変調があった場合には、ただちに頸肩腕に負担の少ない業務に配転する等の措置を講じなかったこと

職務の軽減と賃金引き下げ

職務給制度が採用されている場合

 職種・職務によって賃金が決定される制度(職務給制度)がとられている場合には、配転により職種や職務が軽減されれば、それに応じて賃金を減額することも可能です

 この点、制度上、職務給制度が採用されている場合でも、制度が適切に運用されていない場合には、賃金の減額が認められない場合がある点に注意が必要です。裁判例上も、職種の変更に伴い、賃金制度上の等級号棒が下がったとして賃金が減額されたケースについて「使用者は、原則として職種・職務と等級号棒を関連づけて基本給を決定しようとしてきたことは窺える」が「等級号棒制を弾力的に運用してきた(ため)職務の変更に伴い当然に変更された等級号棒を適用しているということはでき(ない)」とし、職種変更による賃金の減額を無効としたものがあります(東京アメリカンクラブ事件(第一審)・東京地裁平成11年11月26日判決・労判778号40頁)。

職務給制度が採用されていない場合

 職務給制度が採用されていない場合、就業規則上にそれを許容する規定が存在しているか、労働者の同意があるなどの特段の事情がないかぎり、使用者から一方的に賃金の減額はできません

 実務上の対策としては、リハビリ勤務制度(主にメンタルヘルスで休職していた労働者が復職するにあたり、復職者に配慮した業務内容、勤務時間等の下、職場復帰の判断等を目的として、試験的に一定期間継続して出勤する制度)を就業規則に定めておき、リハビリ勤務中の賃金に関し、「リハビリ勤務中の賃金については、本規定を適用せず、別途定めるリハビリ勤務制度規定の定めるところによる」としておくことも考えられます。

関連する実務Q&A

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

90秒で登録完了

無料で会員登録する