中国における外資企業の設立・変更手続の簡易化の動向
国際取引・海外進出最近中国で外資企業の管理制度に動きがあると聞きました。中国で会社を設立したいと考えているのですが、その手続にも影響があるのでしょうか。
中国では、2016年10月から、外資企業の設立および変更について、従来の事前認可制度から、届出を原則とする制度に変更されています。現行の制度では、原則として、設立・変更の発生後30日以内に商務部門に対して届出を行えば足り、提出書類や所要期間等を含め、手続の負担が大幅に軽減されています。2018年6月末にも関連規則の改正があり、手続がさらに簡便化されました。
解説
目次
- 外資管理の手続の簡便化
- 事前審査認可制度
- 事後届出制
- 2018年6月届出規則の改正による手続のさらなる簡素化
- 事後届出制の例外
外資管理の手続の簡便化
中国では、外資独資企業や中外合弁経営企業等の外商投資企業の管理制度が、2016年10月1日から、事前審査認可制から届出制に変更されました1。具体的には、外商投資企業の設立および変更について、従来は一律に要求されていた商務部門による事前の審査認可が原則として不要とされ、事後の届出のみで足りることになりました。
事前審査認可制度
従来の事前審査認可制の下では、外商投資企業について、その設立や、持分譲渡、増減資、法定代表者の変更、その他定款・合弁契約の規定内容の変更等の重要事項の変更については、一律に商務部門の事前の審査認可が要求されていました。これらの事項は当該審査認可を得ないかぎり、効力発生が認められず、市場監督管理部門(旧工商部門)での設立・変更登記も行うことができませんでした。
事後届出制
従来の事前審査認可制に対し、届出制の下では、外商投資企業の設立および重要事項の変更について、原則として、設立・変更の発生後30日以内に商務部門に対して届出を行えば足りることとされました。
新たな届出制においては、その必要資料についても、従来の事前審査認可制の下で要求されていた定款や合弁契約(中外合弁企業の場合)等の多くの書類の提出が不要となり、オンラインでの提出が原則とされる等、手続が大幅に簡素化されています。さらに、手続期間も、書類の提出から3営業日以内とされ、提出書類の準備や不備の補正等に一定の余裕を見る必要があるものの、従来の審査認可制度に比べて大幅に短縮されました2。
2018年6月届出規則の改正による手続のさらなる簡素化
前記に加え、2018年6月30日に、当該商務部門への届出に関する「外商投資企業の設立及び変更の届出管理暫定規則」の改正が施行されました。届出制への移行後も、外商投資企業を設立する場合、従来は市場監督管理部門における設立登記申請と商務部門への設立届出は別々に申請を行う必要がありました。改正後は、市場監督管理部門における設立登記申請と合わせて、同じ窓口で同時に商務部門への設立届出を行うことが可能とされており、設立手続がさらに簡便化されています(なお、重要事項の変更は当該改正の対象として規定されていません)。
事後届出制の例外
ただし、届出制の下でも、中国政府が外資の参入を制限している産業分野等、「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」における制限の対象となる場合については、例外的に、従来と同様の事前の審査認可が必要とされています。
当該「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」の具体的な内容については、「中国における外資参入規制緩和の動向」で紹介します。

森・濱田松本法律事務所 東京オフィス
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