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中小企業経営者の高齢化に大企業はどう備えるか

コーポレート・M&A

 当社は上場している自動車メーカーですが、下請の部品メーカーには経営者が高齢化している取引先が多く、部品供給を続けてもらえるか不安があります。最近はマスコミなどで中小企業の事業承継対策がよく取り上げられていますが、大企業はどのように備えておけばよいでしょうか。

 言うまでもなく、ビジネスにおいては、仕入れ、生産、組み立て、輸送、販売など様々な場面で大企業は中小企業に依存しています。サプライチェーンを点検し、途絶させないように対策をとりましょう。

解説

日本の中小企業の状況の概要

 中小企業の経営者年齢の分布(年代別)(下図参照)を見ると、1995年の時点では経営者年齢の山は47歳程度であったものが、2015年では66歳に移動しており、この20年間で約20歳も高齢化が進んでいます。円滑な事業承継が進まず、この傾向がこのまま続くとすれば2015年~2020年の5年間に新たに70歳に達する事業者は約30.6万人。同様に75歳に達する事業者は約6.3万人と推計され、2020年頃に団塊世代の経営者の大量引退時期が到来することが予測されています。

 なお、中小企業者経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定していると言われ、廃業予定企業のうち約3割の企業が、後継者難が理由と回答しています(日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2016年2月))。
 こうしたことから、日本ではその時期までにどれだけの中小企業で実効的な事業承継対策を講ずることができるかが、ポストオリンピックを切り抜けるうえでの大きな課題となっています。

中小企業の経営者年ん例の分布

出典:中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」(平成29年7月)より抜粋

中小企業の事業承継対策が大企業との取引に及ぼす影響

 以上の中小企業の事業承継対策の問題は、中小企業自身だけの問題ではありません。言うまでもなくビジネスにおいて大企業は中小企業に下請けや仕入れの多くを依存しています。昨日まで取引をしていた中小企業が突然無(亡)くなる、活動を停止するといったこともあるでしょう。

 厚生労働省の調査などによると、日本人男性は60歳を超えると急速に生存率が低下します(参考:平成29年簡易生命表)。

平成29年簡易生命表(男性)

(厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」P.8〜9を活用して作成)

 中小企業の経営者が死亡しない場合でも、突然の脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気になることも十分ありえます。その場合に大企業にはどのような影響があるでしょうか。以下のような事態が生じるおそれや心配はないでしょうか。

  • 下請企業に注文していた加工ができずに製品を完成できない。
  • サプライチェーンが途絶し、部品などの仕入れができずに生産ラインがストップする。
  • 大量に生産していた商品がエンドユーザーまで行きわたらない。
  • 販路としていた中小企業が相次いで廃業し、販売先を喪失した。

 前述のような状況で中小企業が廃業したら、貴社のビジネスは成り立つでしょうか。

東日本大震災で得た事業継続計画という教訓

 以上に述べたようなサプライチェーンの途絶が、2011年の東日本大震災でも起きたことは記憶に新しいでしょう。東日本大震災の発生時点では、大震災は東日本の沿岸部の地域の問題であり、震災の被害が直接なかった地域の企業にとっては、まさか自社のビジネスに影響があるとは思わなかった人も多いのではないでしょうか。しかし、その影響はすぐに震災で直接的な被害がなかった地域にも及びました。たとえば自動車をはじめとする製造業などがサプライチェーンの途絶により日本全体の生産活動に影響を与えたことは記憶に新しいです。

 大震災の問題は「事業の自然災害による地域的なリスク」が日本全体に及んだ例ですが、中小企業の事業承継の問題は「事業経営者の年齢による広域的なリスク」が日本全体に及ぶ例です。大震災後には、部品供給などのサプライチェーンを一極集中させることなく多様化させたりするといった対応を含む事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し対策が取られることなどがあったかもしれませんが、中小企業の事業承継問題に対しても、このような対策を講ずることが重要です。中小企業の事業承継問題はマクロの視点からは、ある程度の予測はつきますが、全体としてはジワジワと、個社ベースで見れば「いつか突然、必ず発生する事象」なのです。

おわりに

 このように、大企業も中小企業の事業承継問題は、これを一種のBCPの問題として捉え、サプライチェーンを点検し、その対策を実施すべきものです。
 ただ、事業承継は、事前の調査や支援を通じて回避・影響を最小化できる問題でもあります。具体的な対策は「大企業が取り組むべき取引先・協力先中小企業の事業承継対策の出発点」を参照ください。

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