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特許法における訂正とその手続

知的財産権・エンタメ

 特許法における訂正について教えてください。

 特許法における訂正とは、特許登録後に、特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面を訂正することをいい、具体的な手続としては、訂正審判と、特許無効審判における訂正の請求があります。訂正は、多くの場合、第三者から特許無効の主張を受け、または受けることが予期される場合に行われます。

解説

特許法における訂正とは

 特許法における訂正とは、特許登録後に、特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「明細書等」といいます)を訂正することをいいます。特許登録前の段階では、明細書等の内容を変更する手続として、補正と呼ばれる手続がありますが、特許登録後は補正をすることは許されなくなり、より厳格な要件のもと、訂正のみが許されるようになります。

特許の訂正が行われる局面

 特許登録前に行われる補正は、明細書等の不足を補い、または瑕疵を正すことにより、特許査定を受けられるようにすることを主な目的として利用されます。しかし、特許登録後は、もはや特許査定を受けるための手続は必要なくなります。

 では、訂正がどのような目的で利用されるかというと、典型的には、第三者から特許無効の主張を受け、または受けることが予期されるときに、そのような主張を排斥しようとする場合です。具体的な状況としては、①自ら保有する特許権を侵害する者に対して警告状を送付したところ、その侵害者から特許無効の反論を受けた場合や、②これから侵害者に対して何らかの措置を取ろうとする段階で、将来予期される無効主張を回避するため、あらかじめ訂正をしておく場合などが考えられます。

訂正の手続

 訂正の手続としては、①訂正審判(特許法126条)、②特許異議申立手続の中で行われる訂正の請求(特許法120条の5第2項)、③特許無効審判の手続の中で行われる訂正の請求(特許法134条の2)の3つがあります。通常は前者の訂正審判が利用されますが、訂正審判は、特許異議申立てまたは特許無効審判の係属中は請求することができません(特許法126条2項)。
 そこで、これら手続の係属中に訂正をする手続として用意されたのが、訂正の請求です。この訂正の請求は、特許異議申立てないし特許無効審判と訂正審判の手続を一体化し、審理を迅速化することを目的として導入されました。

 訂正審判は、審判請求人(特許権者)と特許庁との間で進められる査定系の手続ですが、訂正の請求は、特許異議申立てのほか、当事者対立構造で審理がなされる特許無効審判の中でも行われる手続です。そのため、訂正審判は、第三者の介入なく進められるのに対し、特許無効審判における訂正の請求に際しては、審判請求人が訂正の是非について意見を申し立てることができます。このような介入を避け、迅速に訂正を進めたいときは、紛争が顕在化する前に訂正審判を請求することが合理的な選択肢となります。

 訂正審判の詳細については、「訂正審判とは」をご覧ください。

訂正審判(特許法126条) 特許登録後に、特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面を訂正することを目的とする審判。特許異議申立てまたは特許無効審判の係属中は請求することができない。
特許異議申立手続の中で行われる訂正の請求(特許法120条の5第2項) 取消理由が通知されたとき、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の訂正を請求すること。
特許無効審判の手続の中で行われる訂正の請求(特許法134条の2) 無効審判の手続中に願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の訂正を請求すること。

訂正の目的要件

 訂正審判ないし訂正の請求は、請求項ごとにできますが(特許法126条3項、134条の2第2項)、以下のいずれかを目的とする場合に限って認められます(特許法126条1項ただし書、120条の5第2項、134条の2第1項ただし書)。

  1. 特許請求の範囲の減縮
  2. 誤記または誤訳の訂正
  3. 明瞭でない記載の釈明
  4. 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること

特許請求の範囲の減縮

 紛争段階においてしばしば主張される無効理由は新規性や進歩性の欠如ですが、これらの主張に対する対抗手段としては、しばしば「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正が利用されます。新規性や進歩性が欠如した状態として典型的なのは、特許発明の範囲が広すぎて、その中に既存の発明の全部(新規性欠如の場合)または大部分(進歩性欠如の場合)が含まれてしまっているような場合です。そこで、訂正で特許発明の範囲を減縮することによって既存の発明を切り取り、特許の有効性を維持するのです。

 比喩的にいうならば、減縮の訂正は、リンゴの痛んだ部分を切り取るのに似ています。リンゴ(特許権)の痛んだ部分を切り取ると、リンゴの大きさ(権利範囲)は失われ、元のサイズより小さくなりますが、傷んだリンゴ(無効な権利)ではなくなるのです。

特許請求の範囲の減縮

新規事項の追加の禁止

 訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内で行う必要があり、訂正の段階で新たな技術事項を加えることはできません(特許法126条5項、120条の5第9項、134条の2第9項)。

権利の拡張ないし変更の禁止

 訂正によって、権利範囲を拡張することはできません(特許法126条6項、120条の5第9項、134条の2第9項)。

独立特許要件

 特許請求の範囲の減縮または誤記もしくは誤訳の訂正を目的とする訂正は、訂正後の発明が、特許出願時点を基準として、独立して特許を受けることができるものであることが必要です(特許法126条7項、120条の5第9項、134条の2第9項)。少々分かりにくい要件ですが、この要件は、「独立特許要件」と呼ばれ、要するに、訂正後の状態で特許を受けることができるかを、出願時の技術常識をもとに、一から見直さなければならない、という要件です。この意味において、訂正とは、再度の特許審査であるということができます。

 なお、訂正の請求の場合、この要件は、特許異議申立てないし特許無効審判の対象となっている請求項には適用されません(120条の5第9項第2文、134条の2第9項第2文)。これらの手続の対象となっている請求項が特許要件を充足するか否かは、これらの手続の審理の中で判断されるからです。

訂正の再抗弁

 裁判所における特許権侵害訴訟では、特許無効の抗弁が提出されたときに、対抗手段として、訂正の再抗弁が主張されることがあります。要するに、被告が特許は無効であると主張するのに対し、原告が、訂正によって無効理由を回避することができる、という反論をするわけです。

 訂正の再抗弁は裁判所における攻撃防御方法である点で、特許庁における手続である訂正審判や訂正の請求と異なりますが、現在の判例は、訂正の再抗弁が認められるためには、原則として、訂正審判の請求または訂正の請求が行われていることが必要であると解しているため(知財高裁平成26年9月17日判決・判時2247号103頁、最高裁平成29年7月10日判決・民集71巻6号861頁)、特許庁における手続が必要であることには変わりありません。

 特許無効の抗弁の詳細については「特許無効の抗弁とは」を、訂正の再抗弁の詳細については「訂正の再抗弁とは」を参照ください。

訂正の効力

 訂正が認容された場合は、遡及効を有し、訂正後の明細書等の状態で出願がなされ、特許査定がなされたものとみなされます(特許法128条、120条の5第9項、134条の2第9項)。

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