少人数私募債の発行方法

コーポレート・M&A

 当社は株式会社ですが、資金調達の方法として、社債の発行を考えています。この点、少人数の者を対象として発行する「少人数私募債」というものがあると聞きましたが、少人数私募債を発行する際の留意点や手続について教えてください。

 「少人数私募債」に該当するためには、原則として、社債の取得勧誘の相手方が49名以下であることが必要な他、社債が多数の者に譲渡されないための一定の制限を設けたり、一定の事項を告知することが必要となります。また、一定の場合には、社債管理者を設置しなければなりません。
 手続としては、募集する社債の総額、各社債の金額、利率、償還の方法および期限、利息支払の方法および期限、払込金額といった事項を決定のうえ、社債を引き受けようとする者に対する通知および割当先の決定等を行うか、社債引受けに関する契約を締結する必要があります。

解説

少人数私募債に係る金融商品取引法および会社法上の規制

金融商品取引法上の少人数私募の要件

(1)少人数私募とプロ私募

 社債は金融商品取引法上の「有価証券」に該当しますが(金融商品取引法2条1項5号、2項)、社債を不特定多数の者に対して発行する場合、「有価証券の募集」となり(金融商品取引法2条3項)、有価証券届出書の提出(金融商品取引法4条、5条)や有価証券報告書による継続開示といった開示規制が課せられる可能性があり、この場合、社債発行にかかるコストが大きくなります。

 一方で、「有価証券の私募」に該当すれば(金融商品取引法2条3項)、上記のような開示規制は課されず、社債発行のコストを抑えることができます。
 「有価証券の私募」は、①取得勧誘を行う相手方が少人数である場合(少人数私募)と、②取得勧誘を行う相手方がプロの投資家である場合(プロ私募 1に区分されます。このうち、前者の形態により発行される社債を少人数私募債といいます。

  少人数私募債に該当するための主な要件は、以下のとおりです(金融商品取引法2条3項2号ハ、金融商品取引法施行令1条の6、1条の7、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令13条3項)。

  • 社債の取得勧誘の相手方が49名以下であること
  • 転売制限が付されている旨が有価証券等に記載されていること

(2)社債の取得勧誘の相手方が49名以下

 実際に社債を取得した者が49名以下というだけではなく、社債の取得についての勧誘の相手方を49名以下とする必要があります。また、社債を数回に分割して開示規制を潜脱することを防止する観点から、6か月以内に同一種類の社債 2 をすでに発行している場合には、当該既発行の社債の勧誘の相手方の人数と通算して49名以下でなければなりません(金融商品取引法施行令1条の6)。

(3) 転売制限

 いったん社債が49名以下の者に引き受けられたとしても、その後、多数の者に譲渡することが可能となると、49名以下の人数制限が潜脱されるおそれがあります。そこで、①一括譲渡以外の社債の譲渡が禁止されること、または②社債の口数が50未満であり、かつ、分割できない旨の制限が付されていることのいずれかの要件(当該①または②の要件を「転売制限」といいます)を満たし、かつ、これらが社債券に記載されまたは取得者に対して交付される書面に記載されていることが必要となります(金融商品取引法施行令1条の7第2号ハ、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令13条3項1号)。

金融商品取引法上の告知義務

 少人数私募債の発行時においては、社債の発行額が1億円未満である場合等一定の場合を除き、社債の取得勧誘の相手方に対して一定の事項を告知する必要があります(金融商品取引法23条の13第4項、5項、企業内容等の開示に関する内閣府令14条の15)。
 具体的には、①当該社債の取得勧誘について金融商品取引法4条1項の規定による届出(有価証券届出書の提出)が行われていないこと、および②転売制限の内容について、書面により告知しなければなりません。

社債管理者

 会社が社債を発行する場合、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならないものとされています(会社法702条)。そして、社債管理者に就任できる者は、銀行、信託会社、信用金庫、保険会社等一定の者に限られます(会社法703条、会社法施行規則170条)。

 もっとも、①各社債の金額が1億円以上である場合、または②ある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50を下回る場合には、社債管理者の設置は不要です(会社法702条ただし書、会社法施行規則169条)。

 具体的には、総額3億円の社債を発行する事例において、1億円の社債を3口発行する場合は①の要件を満たしますが、5000万円の社債を6口発行する場合は①の要件を満たしません。同様に総額3億円の社債を発行する事例において、5000万円の社債を6口発行する場合は②の要件を満たしますが、300万円の社債を100口発行する場合(各社債の金額の最低額が300万円となる場合)は②の要件を満たしません。
 この点、少人数私募債の場合は、できるだけ低コストで社債を発行したいとのニーズも強いことから、各社債の金額を1億円以上とするか、発行口数について49口以下とすることがほとんどです。

少人数私募債の内容

 会社が、社債を発行する場合に決定すべき主な事項は以下のとおりです(会社法676条)。

  1. 社債の総額
  2. 各社債の金額
  3. 社債の利率
  4. 社債の償還の方法および期限
  5. 利息支払の方法および期限
  6. 社債券を発行するときは、その旨
  7. 各社債の払込金額
  8. 払込金額の払込みの期日

 ①および②については、たとえば、1口500万円の社債を30口発行する場合、①社債の総額は1億5000万円、②各社債の金額は500万円となります。なお、前記1-3のとおり、発行する社債が50口以上となる場合は、社債管理者の設置が必要となりますので、少人数私募債の場合は、発行口数は49口以下とすることがほとんどです。

 ③の社債の利率については、年利◯%というように固定金利とする場合もありますし、全銀協TIBORレート等の指標を基準金利とする変動金利も可能です。

 ④の社債の償還の方法および期限について、社債の償還期日とは、いわゆる社債の元本全額が返済される日をいいます。⑤の利息支払の方法および期限について、利息は償還期日に一括して支払うこともあれば、償還期日とは別途利息支払日を設定し、利息を支払うことも可能です。

 ⑥の社債券について、会社は社債券を発行するか否かを選択することができます。社債券を発行する場合、社債の譲渡は当該社債券を交付しなければ、譲渡は効力を生じません(会社法687条)。

 ⑦の各社債の払込金額および⑧の払込期日について、たとえば1口500万円の社債の場合、払込金額も500万円とすることが多いですが、490万円といったように、あらかじめ償還金額から割り引いた金額を払込金額とすることも少なからず見受けられます。このように、払込金額を償還金額よりも低く設定し、その差額分について事実上利息に代えているような社債を割引債といいます。

 また、上記以外に、金融商品取引法上の少人数私募に該当するために、転売制限に関する定めも規定する必要があります。

少人数私募債の発行の手続

取締役会の決議と2つの手続

 取締役会設置会社の場合、社債発行は、取締役会の決議が必要です(会社法362条4項5号)。
 また、少人数私募債の発行手続としては、以下の2つの方法があります。

  • 会社から募集対象の社債の内容を通知し、申込みを受け、割当てを行う方法(会社法677条、678条)
  • 総額引受契約を締結する方法(会社法679条)

会社から募集対象の社債の内容を通知し、申込みを受け、割当てを行う方法

 社債の発行会社(取締役会設置会社については社債発行の取締役会決議後)は、①社債を取得しようとする者に対して当該社債の内容や会社の商号等を通知し、②社債の引受けの申込者から発行会社に対して引き受けようとする社債の金額等を記載した書面を交付することで申込みをし、③発行会社が申込者の中から社債の割当てを受ける者を定め、申込者に通知をすることで、社債を発行することになります。

総額引受契約を締結する方法

 発行会社が社債を取得しようとする者との間で、社債を割り当てる(当該契約の相手方が社債を引き受ける)旨の総額引受契約を締結するとの方式で、この場合は、3-2の社債内容の通知、申込み、割当てといった手続を省略することができます。なお、「総額引受」というのは、必ずしも社債を引き受ける者が 1人である必要はなく、引き受ける者が複数存在しても差し支えありません。


  1. プロ私募は、狭義のプロ投資家である適格機関投資家のみを相手方とする場合と、適格機関投資家よりも広い範囲のプロ投資家(特定投資家)のみを相手方とする場合に区分され、正確には、前者を「プロ私募」、後者を「特定投資家私募」と呼ぶことが多いです。 ↩︎

  2. 償還期限、利率および金額を表示する通貨の種類が同一であるか否かが同一種類か否かの判断要素となります(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令10条の2)。 ↩︎

関連する実務Q&A

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

90秒で登録完了

無料で会員登録する