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国のサプライチェーン維持のための事業承継対策

コーポレート・M&A

 サプライチェーンを構成する個別の中小企業の事業承継対策がサプライチェーン全体にとって重要なことは「大企業が取り組むべき取引先・協力先中小企業の事業承継対策の出発点」によってわかりましたが、そのように重要なことならば、国も何かサプライチェーン維持のための中小企業の事業承継対策に関して検討しているのでしょうか。また、それに対して各業界としてはどのように対応しているのでしょうか。

 中小企業庁の示した事業承継5ヶ年計画のうちの1つに「事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備」というものがあり、その内容として「サプライチェーンや地域における事業承継、事業再編・統合等を促進し、中小企業の経営力強化を後押し」するとしています。各業界団体も自主行動計画というものを作っているところがあります。

解説

中小企業庁5ヶ年計画(平成29年7月)

 中小企業庁においては、事業承継5ヶ年計画を平成29年7月に策定し、日本の中小企業の事業承継の現状に鑑み、平成29年から5年程度を中小企業の事業承継支援に関する集中実施期間とし、支援体制、支援施策を抜本的に強化する方向性を示しました。

出典:中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」(平成29年7月)より抜粋

 このサプライチェーンの問題に関連するものは「事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備」であり、その内容はサプライチェーン・地域における事業統合等の支援です。具体的には下請中小企業振興法(以下「下請振興法」という)の自主行動計画に事業承継に関する取組みを明記し、自主行動計画のフォローアップを行い、業界への浸透を図るものであり、中小企業の事業再編・統合・共同化を促進する制度的枠組みを検討するとしています。
 また、事業承継自体についても「後継者が継ぎたくなるような環境の整備」として、事業承継税制の更なる活用を図ることが計画されましたが、実際に平成30年4月から、今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象とした以下のような特例措置が加わり、活用されやすいものとなりましたので、サプライチェーンを構成する中小企業の事業承継もやりやすくなりました。

平成30年度事業承継税制の改正の概要

出典:中小企業庁「平成30年度事業承継税制の改正の概要」(平成30年4月2日)より抜粋

下請振興法と下請振興基準

 下請振興法3条(振興基準)1項においては「経済産業大臣は、下請中小企業の振興を図るため下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準(以下「振興基準」という。)を定めなければならない。」とされ、同条項に基づき改正された下請振興基準(平成28年12月14日)において、事業承継に関し以下の内容が定められました。

【下請振興基準】

第3 下請事業者の施設又は設備の導入、技術の向上及び事業の共同化に関する事項
(略)

6) 事業継続に向けた取組
(1)下請事業者は、事業承継計画の策定や事業引継ぎ支援センターの活用その他の方法により、事業継続に向けた計画的な取組を行うものとする。
(2)親事業者は、下請事業者の事業承継の状況の把握に努め、サプライチェーン全体の機能維持のために、必要に応じて計画的な事業承継の準備を促すなど事業継続に向けた適切な対応を行うものとする。

(出典:中小企業庁財務課「中小企業の事業承継の現状について」(平成29年2月)より抜粋)

自主行動計画

 業界団体等は、サプライチェーン全体の取引適正化を図るため、自主的な行動計画を策定することとなり、平成30年4月時点で、①自動車、②素形材(9団体連名で策定)、③建設機械、産業機械、工作機械、④繊維(2団体連名で策定)、⑤電機・情報通信機器、⑥情報サービス・ソフトウエア、⑦流通業(スーパー、コンビニ、ドラッグストア等小売業)、⑧トラック運送業、⑨建設業、⑩警備業、⑪放送コンテンツ業の11業種30団体が自主行動計画を策定し、公表しています。
 一般社団法人日本自動車工業会の自主行動計画(平成30年3月30日改訂)更新)には「サプライチェーン全体の機能維持のために、必要に応じて、取引先の事業承継が円滑に遂行されるよう、支援する。」と事業承継に関する記載がされています(Ⅲ.取引先支援活動の推進(実施事項))。

おわりに

 中小企業の事業承継の問題は、サプライチェーン維持のために国や業界団体も意識している問題です。すでに、業界団体等で自主行動計画に関与している企業担当者もいるかもしれませんが、これからはさらに様々な場面で、自社や自社の属する業界について、中小企業の事業承継の問題が話題にのぼるかもしれません。
 「ウチは大企業だから、事業承継の問題は関係ないな」などと思わず、自社、業界、日本の将来のために、取引先・協力先中小企業の問題を議論し、社内に事業承継の検討・対策のチームを組成したり、事業承継の研修を受けたりしてみてはいかがでしょうか。

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