英文契約書における権利義務の定め方

取引・契約・債権回収
幅野 直人弁護士

 英文契約書において当事者の権利義務を定める場合、どのように規定すればよいでしょうか。

 英文契約書で権利義務を定める場合、義務を規定する場合には「shall」、権利を規定する場合には「may」を用いることが一般的です。

解説

目次

  1. 英文契約書における権利義務の定め方
  2. 義務を定める場合(shall)
  3. willについて
  4. 権利を定める場合(may)

英文契約書における権利義務の定め方

 契約書は、当事者の権利義務を規定するものですから、権利義務の定め方は契約書作成における最も基本的な事項といえます。
 英文契約書における権利義務の定め方には、一般的に、助動詞として、「must」や「can」ではなく、「shall」や「may」を用いるという特徴があります。

義務を定める場合(shall)

 英文契約書において、義務を定める場合には一般的に「shall」が用いられます。英文契約書を日本語に訳す場面では、「shall」を「~しなければならない」と訳すのが一般的です。

Buyer shall pay to Seller the price for the Products in accordance with the following provisions.
(売主は、買主に対し、本製品の代金を以下の条項に従って支払わなければならない。)

 なお、「shall」は、契約に関連する決めごとなどを規定する場合にも用いることがあります。英文契約書を日本語に訳す場面では、当事者の義務と直接関わらない文で「shall」が使われている場合には、「shall」を「~するものとする」と訳すとわかりやすいと思います。

The following terms shall have the following meanings.
(以下の用語は、以下の意味を有するものとする。)

 また、英文契約書において、義務を定めるものとして「must」が用いられている場合もありますが、「shall」に比べて圧倒的に使用頻度は少ないです。「must」は、義務であることを強調する目的で使われることがありますが、日常の会話において法的な義務でない一般的な義務を表す表現でも使われることから、法的な義務であることを明確にしたい場合には、基本的に「shall」を用いるべきであると考えます。また、日常の英語では、義務を表す表現として「have to」もよく使われますが、英文契約書での使用は極めて限定的といえるでしょう。

willについて

 英文契約書においては、「shall」と同様、「will」を用いて当事者の実施する行為を規定する場合があります。「will」は、「shall」よりも曖昧な表現であり、「will」が使われていると「shall」に比べて弱い義務を定めているようにも受け取れることから、たとえば、契約交渉上優位に立つ当事者が自らの実施する行為を定める場合に用いられることがあります。
 また、1つの契約書において、異なる用語が用いられている場合には、それらの用語は異なる意味を持つと解釈される可能性が考えられます。したがって、このような疑義が生じることを防ぐため、英文契約書の契約交渉においては、特段の事情がないかぎり、義務を定める用語として「shall」と「will」を混在させることなく、「shall」に統一するように交渉することが望ましいと考えます。

権利を定める場合(may)

 一方で、英文契約書において、権利を定める場合には、「may」を用いることが多いといえます。

If the other party falls under any of Items below, either Buyer or Seller may terminate this Agreement.
(相手方が以下の各号にいずれかに該当する場合、売主または買主は本契約を解除する権利を有する。)

 そのほか、英文契約書において権利を表す表現として、「be entitled to…」を用いることがあります。英文契約書を日本語に訳す場面では、「may」や「be entitled to…」は、いずれも、「~する権利がある(権利を有する)」や権利を表す意味で「~することができる」と訳すことができます。基本的には、契約上の権利を表現する意味で、両者の間に特に強弱はないと考えてよいでしょう。

 このほか、「may」は、可能性・許可の意味で用いることもあります。

Seller may deliver the Products before the prescribed delivery date.
(売主は、指定納入日前に本製品を納入することができる。)

 日本語でも、一言に「~できる」と表現する場合であっても、上に述べた権利や可能性・許可の意味のほか、文脈によって「裁量」、「資格」、「権能」、「承認」など様々なニュアンスを持つことがあります。これと同様に「may」は様々な用途で英文契約書に登場することがありますが、単純化すれば、「~できる」=「may」と考えるのが、理解の整理に役立つと思います。

 また、英文契約書においては、権利・許可がないことを示す趣旨で、「may not(~することができない)」として用いられることも多いです。これに対して、禁止の趣旨で「~することができない」、「~してはならない」という場合には、「shall not」という表現のほうが適切でしょう。

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